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銀白の魔術師  作者: 波留
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04話 「第二校舎」




 メリチェルがいる学園――エスセナーリオ魔法学園は、『中央魔導機関』と『魔術協会』の2つ組織が運営する魔術師養成機関である。

 この学園の敷地面積は、他の魔術師養成校よりもその大きさの規模が違う。大まかに五つのエリアに分かれており、その中央にある学園本部を中心に階級別に分けられた校舎が設立されている。本部を除いた四つの各エリア、S階級生徒が学ぶ第一校舎、A~B階級生徒が学ぶ第二校舎、C~E階級生徒が第三校舎、F~K階級が第四・第五校舎とそれぞれ区分されて校舎が建てられており、学生寮もそのエリアごとの敷地内にある。また、その四つのエリア以外にも、離れに研究用の施設や訓練施設など学園が所有する建物が存在している。

 メリチェルが学ぶ校舎は南東に位置しており、また生徒数が多いこともあって、人の出入りは激しい。目の前を通り過ぎていく学生たちを見ながら、メリチェルはふと思ったことを口に出した。


「あの、先輩。私たちはどこに向かっているのですか……?」


 今現在、三人は第四校舎の中庭までやってきた。しかし、彼らが進んでいるのは第二校舎が建つ方向だった。第四・第五校舎の生徒が足を運ぶような場所ではない。メリチェルは何だが不安になってきた。


「わたくしたちのサークルの部室は、第二校舎の離れにあるの。ウルバーノ先生から聞いていなかったかしら?」


 イレーナの言葉にメリチェルは頷く。昨日の今日で、教授とはほとんど会話を交わしていないのである。古代魔術考古学研究サークルがどんな活動方針を掲げ、どんな活動や研究をしているのかまったく知らない。だから、これから見学に行くわけであるが、先輩たちの話の節々を聞いているとメリチェルは新入部員として数えられているようだ。現に、サークル内でのパートナーの話まで出ている。メリチェルは、まだ入るか検討していることを言い出せずにいた。


「今年は男女でパートナーを組ませましょう。ええ、それがいいわ。ちょうど、メリチェルが入ったとなると、人数も会いますでしょう? ラウルも異存はありませんわよね」

「俺は別にかまわないが、お前の独断ですべてを決めるべきじゃない。一応部員たちには話を通せ」

「わかっているわよ。ほんと、頭でっかちな男だわ。ねえ、メリチェルもそう思わなくて?」

「え……あ、はい」


 急に話を振られてメリチェルは着いていけないでいる。


「じゃあ決まりね」


 第二校舎は、第三校舎や第四・第五校舎とは明らかに違っていた。まず、校舎の門を潜るときに嫌な気配がメリチェルを覆い尽くす。これが、魔法制御システムの効果である。第四・第五校舎にも一応覆われているのだが、第二校舎よりもかなり薄いものである。

 メリチェルは背筋がざわめくのがわかった。あまりにも居心地が悪い。

 慣れてしまえば違和感は多少なりとも薄れるだろうが、今まで第四・第五校舎にいたメリチェルにとって重い枷だった。

 魔法制御システムとは、生徒の魔術の暴走を防ぐために中央魔導機関が推進した装置である。その装置に関する詳しい情報は厳重に管理され、公開されていない。悪用されないようにするためである。


「そういえば、自己紹介がまだだったわね。わたくしの名前はイレーナ。学年4年。古代魔術考古学研究サークルの部長をしておりますわ」


 イレーナはラウルの方に自己紹介を促した。あからさまに嫌な顔をした彼であったが、しぶしぶ口を開く。


「俺はラウル。3学年で、副部長兼部長の子守り役を任されている」

「ちょっとその言い方はわたくしに失礼ではなくて??」

「さしずめ間違っていないだろう」


 仲がいいのか悪いのかわからない二人だなと、内心思いながら彼らの会話を聞いていた。そして相手が自己紹介した以上は自分もしなければいけないと口を開く。


「えーと、私の名前はメリチェルといいます。今年2学年になりました。その、ひとつ言っておきたいのですが……先輩方、私はまだサークルに入ると言ってないですよ……?」


 すると言い争いをしていた二人が、メリチェルの方を同時に見た。ラウルがメリチェルに対して、哀れみの目をした。


「残念だ、メリチェル。おそらく、君の入部は強制だ」

「え……どういう、」

「「――ラウルせんぱーい! こっち向いてー」」


 何故かメリチェルの言葉は黄色い声によって掻き消された。食堂のテラスから、数人の女子がラウルに向かって手を振っている。彼がそっちに視線を向けた瞬間、さらに黄色い悲鳴が上がった。


「あいかわらずの人気ね。こんな常にぶすっとした顔した陰険男のどこがいいのかしらね?」

「お前のような世間知らずの捻くれ者よりましだと思うが、な。だから、あいつに見向きもされない。少しは女子力皆無を自覚して、花嫁修業でもいったらどうだ。多少は、色気でも身に着くだろう」

「うるさいわね! わたくしは別にあの方のことなんて気にしておりませんわっ。ほら、先を急ぎますわよ!!」


 いつになったら古代魔術考古学研究サークルに着くのだろうかと、メリチェルは思わずにはいられなかった。

今後の展開に不都合が生じたため、修正いたしました。

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