想定していた想定外
「報告します!て、敵の第一陣が貴族派派閥長の屋敷の前方に布陣しています。前衛には剣の名家と宮廷騎士団長、後衛には弓の名家がいる模様!」
伝令の報告に思わず耳を疑った。
「ご苦労。引き続き敵の動きを警戒しろ」
「はっ!」
伝令は勢いよく答えると陣幕から出て行った。
「意外だな。てっきり籠城すると思っていたのだが…。一体何を考えているのだ?」
大総統はそう言って眉をひそめた。
「そんなこと考えてる場合ではありませんぞ。敵の主力を潰す機会を逃す手はありません!」
元帥は鼻息を荒くしながら言った。
「それはわかってるんですが…。ここまで都合がいいと罠だとしか思えないんですよね」
…だろうな。事態が都合よく進むことに慣れきってるおれでさえいくらなんでも出来すぎだと思ってるくらいだ。タネがわかってないとうまくいきすぎていて怖いと思うのも無理はない。
「…迷っていてもしかたないであります。罠があるなら力で押し切ればいいだけでありましょう?」
エリザは毅然とした顔で言った。少しは状況についていけるようになったようだ。
「エリザの言う通りだ。どんな罠だろうと我らなら絶対突破できる」
ロベリアは自信を持って言い切った。さすがに慣れてるだけあって動揺が少ないな。
「…そうですな。参謀は考え得る罠と対処法を考えておいてくれ」
大総統は神妙な顔で言った。
「了解しました。あんな軍師気取りの策など楽に覆して見せましょう」
参謀は不敵な笑みを浮かべて言い放った。
「…どうやってもあいつの掌の上にいるとしか思えないんだけど」
そう呟いたサヤの声は興奮した軍勢の声の中に消えていった。
――
「…あなた何を考えてるの?ここは普通籠城一択でしょう」
ヴィレッタは冷たい目でネルキソスを見ながら言った。
「別にいいじゃないですか。あなたの戦力には何の影響もないんですから」
ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべながら言った。
「確かに番犬も猟犬も使わずに害獣を駆除できるのはいいことだわ。けど」
「彼らは先の戦闘で何も戦果を上げていません。それに貴族派にはスパイが入り込んでいます。自分の部下や取り巻き以外に影響力のある者は使い捨てた方が賢明かと」
ネルキソスはヴィレッタの言葉を遮ってうさんくさい笑顔で説明した。
「……。まあいいわ。とりあえずあなたの方で援護くらいはしてやりなさい」
ヴィレッタはそう言って扇をパチンと閉じた。
「仰せのままに」
ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべてお辞儀をした。
筆が進んだので早くできました。次も早くできたらいいです。




