戦況報告
「報告します。勇者が逃げ出したオークの残党を狩り尽くしたようです!」
宮廷騎士がネルキソスに嬉しそうに報告した。
「ご苦労様です。勇者様には私が勇者様の期待通りの働きにひどく感銘を受けたと伝えておいて下さい」
「はっ!」
宮廷騎士はそう返事を返して部屋を出て行った。
「クソ!忌々しいエセ勇者が!オークを殺したりしたら魔王軍との関係が悪くなってしまうではないか!」
もはや名ばかりになっている弓の名家の御曹司がそう吐き捨てた。
「全くです。本当に困ったものですね」
ネルキソスはうさんくさい笑みを全く崩さずに答えた。
「貴様はなぜそう落ち着いていられるのだ!我々は今危機的な状況にあるんだぞ!」
「そういう時こそ軍師である私が落ち着いていないといけないからです。そうしないと軍に不安が広がるではありませんか。だから私はピンチの時ほどふてぶてしく笑うのですよ」
ネルキソスはうさんくさい笑みを弓の名家に向けて言った。
「ええい!いつも通りのにやけ面を向けられても説得力がないわ!貴様まさか初めから仕組んでたんじゃないだろうな!そうでもなければそこまで落ち着いていられるわけがないではないか!」
弓の名家は顔を赤くしてネルキソスに向かって怒鳴った。
「ほう?疑うからにはそれなりの根拠があるのでしょうねえ?もし何の根拠もなく私に裏切り者の汚名を着せるつもりならいかに弓の名家と言っても容赦する気はありませんよ」
ネルキソスはうさんくさい笑みを全く崩さずに返した。
「ふ、フン。まあいい。とりあえず今はどうやって魔王軍をごまかすかを考えろ!」
弓の名家が偉そうに言ったと同時にドアが大きく開け放たれた。
「き、緊急事態です!ほ、本陣がオークの襲撃を受けました!」
ボロボロになった宮廷騎士が慌てた様子で報告した。
「どうやら言い訳を考える必要がなくなったみたいですね。先に裏切ったのは魔王軍の方みたいですし」
ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべながら肩をすくめた。
「言ってる場合か!それで被害の状況は?!派閥長閣下はご無事なのだろうな?!」
弓の名家は宮廷騎士に向かって吠えた。
「はっ!派閥長のご令嬢であるヴィレッタ様が華麗で緻密な指揮で突如変心した下劣な野ブタ共を冷静に完膚なきまでに叩き潰しました!」
宮廷騎士は熱が込もった口調で捲し立てた。
「それは良かったです。もうあなたの敬愛するヴィレッタ嬢の所に帰って結構です」
「はっ!」
宮廷騎士は大急ぎで部屋を出ていった。
「今すぐオークの砦に攻撃を仕掛けろ!我々誇り高き貴族派を裏切るとどうなるか思い知らせてやる!」
弓の名家は顔を赤くしてネルキソスに怒鳴った。
「それは無理というものです」
「何?!無理とはどういうことだ!」
弓の名家はネルキソスに食ってかかった。
「なぜなら「オークの砦が落とされました!」から」
ネルキソスは笑顔を浮かべながら答えた。
今回はここで切っておきます。




