迎撃準備
「課長。作戦に必要な転移マーカーの配布が終わりました」
おれが作業を終えて戻るとルーシーが報告してきた。
「ご苦労。こっちも先程片付いた所だ」
「お疲れ様です。これで私たちの仕事は一段落しましたね」
ルーシーはそう言って疲れたように笑った。
「ああ。後は軍がうまくやってくれるだろうさ」
おれはルーシーにそう返してイスにもたれかかった。
「それにしてもここまで都合よく物事が進んでますよね。順調過ぎて逆に怖くなってきます」
ルーシーは苦笑いを浮かべながら軽口を叩いた。
「心配しなくても大丈夫だ。あいつが敵にいる時点で負けるはずがない」
おれはルーシーの目を見て自信を持って言い切った。
「…課長がそう言うなら信じますよ」
ルーシーは期待と不安が混ざった表情を浮かべながら言った。
「問題は魔王軍がちゃんと動いてくるかだな。砦に陣取ってるのはオークキングだったか?」
「ええ。アムネシアを侵攻している獣王の幹部ので、強欲で残虐だとかいう話を聞いたことがあります」
ルーシーはそう言ってメガネを直した。
「らしいな。ついでに言うと出世欲も強いそうだ。オークキングだけなら間違いなく攻めてくるだろうが…」
「対勇者がどう出るかですね。オークキングに何か入れ知恵しないとも限りませんし」
ルーシーは少し不安そうな声で言った。
「確かに対勇者に報告が行けばどうなるかわからないな。とりあえず功を焦って独断で襲撃してくるのを祈るか」
おれが軽口を言うとルーシーは苦笑を浮かべた。
「さすがにそこまでバカじゃないでしょう」
――
「先程貴族派がクーデターを起こすという密書をよこしてきた。わしらもその機に乗じて王都を攻めるぞ!」
灰色の封筒に入っていた手紙を見たオークキングは鼻息荒く宣言した。
「で、ですが隊長。獣王様や対勇者に報告した方が…」
「あのような青二才や新入りの人間風情に報告することなどない!手柄を横取りされてはたまったものではないわ!」
部下のオークの進言をオークキングは一蹴した。
「しかし」
「くどい!これ以上逆らうなら死刑にするぞ!」
オークキングが凄むとオークは黙り込んだ。
「ブヒャヒャヒャ。待っておれ人間ども。わしの出世の糧になるがよい!」
オークキングは腹を揺らしながらいつまでも高笑いを上げていた。
次はクーデターに入る予定です。




