貴族との衝突
今日は着物が完成したということで沙夜ちゃんと一緒に商館にやってきました。
「ようこそおいで下さいましたヒカリ様、サヤ様」
受付さんが私たちの顔を見てお辞儀しました。
「頼まれた物はちゃんと出来上がってます」
受付さんは他の人と交代してカウンターから出てきました。
「それではご案内しますのでついてきて下さい」
受付さんがそう言って歩き出しました。
受付さんについて行くと服を売っている所にたどり着きました。
「いらっしゃいませ勇者様、対勇者様」
カウンターにいた店員さんがあいさつしてきました。
「ご注文の品はこちらにご用意しています。どうぞ着てみて下さい」
そう言って私たちに紙の包みを差し出しました。
「どうもありがとうございます。試着室はどちらですか?」
「あちらになります」
店員さんが手で示した所にはカーテンがいくつかかかってました。
「ありがとう。じゃ、後でね」
沙夜ちゃんは包みを持ってカーテンの向こうに消えていきました。
「ふーん。似合ってるじゃない」
沙夜ちゃんは私の着物を見て言いました。私の着物は白地に赤い椿が描かれています。下には動きやすいように青い袴をはいてます。
「ありがとうございます。沙夜ちゃんもきれいですよ」
沙夜ちゃんは黒装束に右手に黒い弓掛けという黒づくめです。やっぱり沙夜ちゃんには黒が似合いますね。
「ありがとう。あんたたちも服をタダで譲ってくれてありがとね。いい宣伝になるようにがんばるわ」
「ふふふ。期待しています」
店員さんはそう言ってにっこりと笑いました。
―――
「貴様!どこを見て歩いている!」
城に帰る途中そんな怒号が聞こえてきました。見ると貴族の人が男の子を怒鳴りつけてました。
「お、お許し下さい貴族様。悪気はなかったんです」
お母さんらしき人が貴族の人に懇願しました。
「ええい黙れ!」
貴族の人はそう言って腰に手を
「…それくらいにしてくれます?」
気がつくと貴族の人の首筋に刀をつきつけてました。刀を抜き放つ前にとっさに止めてなければ間違いなく首が飛んでたでしょう。
「な、貴様。私が誰だか」
「知らないしどうでもいいわ。どうせあたしたちのことを知らない時点で大したことないでしょうしね」
沙夜ちゃんは虫でも見るような冷たい目で答えました。
「し、知るか!いいからその妙な剣を首から離せ!」
「それが人に物を頼む態度?手を離したらあんたがどうなるか保証できないけど」
沙夜ちゃんはあたしの手を握りながら言いました。あの、首に刀を押しつけさせるの止めてもらいますか?本当に斬ってしまわないか不安なんですが。
「どんな理由があっても子供に剣を向けるのはいけないことです。今すぐ剣を納めてこの人たちに謝って下さい」
私は貴族の人の目を見ながら言いました。
「誰がそんな平民に謝るか!貴様こそこんなことをして父上や勇者様が黙ってると思ってるのか?」
…それを勇者の私に言ってどうするんでしょうか?
そんなことを考えてると沙夜ちゃんが急に刀を鞘に押し込みました。
「はっ怖じ気づ「そこで何をしている!」
聞き覚えがある声がしたから見てみると金田さんが向かってくるのが見えました。
「別に?ただそいつが子供に切りかかろうとしたから説教しただけだけど」
「何?それは本当なのか?」
金田さんは貴族の人を見ながら聞きました。
「で、デタラメです。私がそんなことするわけないでしょう勇者様」
貴族の人は声を震わせながら言いました。
「ウソつけ!自分からぶつかっておいて剣を抜こうとしたくせに何言ってるんだ!」
「あの女の子があの子は殺されてたぞ!」
「勇者様が貴族の横暴を見過ごしていいのか!」
周りに集まっていた人たちが騒ぎ立てました。
「うるさい!お前たちが言うことなんか信じられるか!」
金田さんは集まった人々を怒鳴りつけました。
「…それはそいつが貴族だから?」
沙夜ちゃんは冷たい目で金田さんを見ながら言いました。
「そうだ。当たり前だろう!」
金田さんは大声で叫びました。
「「……」」
それを聞いた人々は無言で金田さんをにらみつけました。
「ふーん。つまりあんたは身分で人を差別するクソってわけね。光は同じ勇者としてそういうのどう思う?」
沙夜ちゃんは急に私に話を降ってきました。
「え、えーと。そういうのはよくないことだと思います」
私がそう答えると金田さんへの非難の視線がきつくなりました。
「ち、違う!ぼくはそんなつもりじゃ」
金田さんが弁解しようとしたらどこかから石が金田さんに向かって飛んできました。
「帰れー!」
「お前みたいな勇者は必要ない!」
「その子がいれば十分だ!」
それを見てみんなが石をぶつけ出しました。
「くっ。い「守るべき民を斬るつもり?そんなことしたらそれこそ勇者失格よ?」
沙夜ちゃんがそう言うと金田さんは顔を真っ赤にして去っていきました。
「で、他に何か言いたいことはある?」
沙夜ちゃんは貴族の人に凄味がある笑顔を向けて言いました。
「クソッ。覚えてろよ!」
貴族の人は小物っぽい捨てゼリフを残して消えていきました。
「あの、沙夜ちゃん。金田さんは恩義がある貴族の言うことだから信じたんじゃないでしょうか?」
私は小声で沙夜ちゃんに聞きました。
「そうかもね。でも誤解を招くような言い方をしたのはあいつの自業自得よ。それに貴族派と関わってる以上あいつの評判が下がるのは避けられないことよ」
沙夜ちゃんはそこまで言って集まっている人たちの方を見ました。
「だからせめてあたしたちはこの人たちの希望になってあげないとね」
私が視線を向けると人々は歓声を上げました。
「はい!」
私は多くの人々の思いを背負っている。そのことを改めて実感しました。
テンプレ的な展開を入れてみました。ここで勇者(笑)の評判を落とすのは無理があったかもしれません。




