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異世界人の能力

カネダに一方的に決闘をふっかけられた後、おれは玉座の間を出て部屋に戻った。

「まさかあの者が課長のことをつかんでいるとは思ってませんでした」

ルーシーがメガネを直しながら言った。どうやらもう勇者と呼ぶ気すらないらしい。

「大方貴族派が何か吹き込んだんだろう。おれが負ける姿を見せてあいつらを幻滅させるためにな」

「派閥間の結束が課長への恋愛感情によって成り立ってるようなものですからね。もしかしたらあの書類は単に王都に攻め入るだけでなく、課長の失脚を狙っていたのかもしれません」

ルーシーは神妙な顔をしながら言った。

「そうかもな。あの書類を承認したらおれは確実に責任をとらされただろう。あんな失態をして何もなければけじめがつかないしな」

この分だと魔法陣課にも貴族派につながってるやつがいるんだろう。どこに潜んでるのかわからないのが貴族派の厄介な所だ。


「…で、何でいるんだ?同じ異世界人と敵対することになってもいいのか?」

おれはなぜかついてきたヒカリとサヤに聞いた。

「確かに金田さんは同じ異世界人です。でも民を傷付ける貴族派につくと言うなら止めなければいけません」

ヒカリは悲痛な顔を浮かべて言った。

「まあそういうことよ。どちらにしてもあたしがあいつの味方につくことはないけどね」

サヤは冷めた口調で言い放った。

「そうか。何にせよ君たちがいてくれるのは心強い」

「そ、そうですか?えへへ」

おれの言葉にヒカリははにかんだような笑みを返した。

「ふ、フン。別にあんたのためじゃないんだからね」

サヤは頬を赤く染めながら言った。


「それで勝算はあるんですか?金田さんも勇者だから私たちと同じようにチートがありますよね?」

ヒカリは不安そうに言った。

「まあ腐っても勇者だから力はおれより遥かに上だろうな。まともに戦ったらまず勝てないだろう」

「…そうですか」

おれが返すとヒカリは沈んだ顔をした。

「で、あんたあいつとまともに戦う気あるの?」

サヤは冷静に核心をついてきた。

「決まってるだろう。まともに戦う気は少しもない!」

おれは力強く言い切った。

「ほっ。そうですか。少し安心しました」

ヒカリはそう言ってにっこりと笑った。

「…それって全く威張れることじゃないでしょ」

サヤは苦笑いを浮かべながら返した。


「冗談はさておき、実際の所1ヶ月後ならほぼ確実に勝てる。今は戦ったら不確定要素が多いからどうなるかわからなかっただろうな」

「えっ、どうしてですか?」

ヒカリはわからないのか首を傾げた。

「貴族派は何でも型にはめるのが得意だ。おそらくやつらはカネダを1ヶ月かけて火属性の魔法使いに対抗できるように鍛え上げてくるだろう」

「つまりそれだけ相手の戦法も読みやすいってわけね」

サヤは納得したように頷いた。

「でも攻め方がわかってても対抗できなきゃダメですよね?」

ヒカリはまだ不安そうな顔をしている。

「それも大丈夫だ。相手の対策は一般的な魔法使いに合わせた物だ。おれは一般的な魔法使いの範疇からかなり外れてるからあまり意味がない」

「そうですね。課長をただの魔法使いだと思ってるなら間違いなく勝てないでしょう」

ルーシーはメガネを直しながらニヤリと笑った。


「ただ不確定要素が1つだけある」

「不確定要素、ですか?」

ヒカリは首を傾げた。

「…あいつの実力だ。覚醒でどれだけ力が上がってるのか全くわからないからイメージがつかみにくい」

おれはいったん言葉を切った。

「だから異世界人のデータを取りたいんだが協力してくれるか?」

おれは2人の目をまっすぐ見ながら聞いた。

「もちろんです。私の力が役に立つならうれしいです」

ヒカリは快く頷いた。

「愚問ね。あいつを潰すのに必要ならいくらでも協力するわ」

サヤは冷めた口調で肯定した。

「ありがとう。それじゃ測定室に行くぞ」

おれはヒカリとサヤを連れて測定室に向かった。


――

「…驚いた。まさかここまで差が出るとはな。覚醒って一体何なんだ?」

おれはヒカリとサヤの結果を見て呟いた。予想通り能力は全体的に高かった。だが2人の結果の差があまりにも大き過ぎる。

「えーとスピードはヒカリさんが遥かに上で、力はサヤさんの方がかなり高いですね。バランス能力はサヤさんが圧勝ですが、持久力はヒカリさんの勝ちです。興味深いのはサヤさんの方がかなり視力が上なのに、動体視力はヒカリさんが圧倒的にすごい所ですね」

ルーシーも結果を見て驚いているようだ。


「もしかして勇者召喚陣と対勇者召喚陣って強化の仕方が違うのか?」

「…そうとも限らないわよ。もしかして元々の能力ややってきたことが関係あるのかもしれないわ」

サヤはあごに手を当てながら呟いた。

「どういうことですか沙夜ちゃん?」

「あたしは弓道をやってるけど光は剣術でしょ?弓道と剣術だと普段使う筋肉が違ってくるから能力に差が出るってわけ」

なるほど。元々の身体能力が関係してくるってことか。

「でも私と沙夜ちゃんの視力ってそこまで違いましたっけ?」

「それは多分使う武器や戦い方の違いだと思うわ。視力が上がったのは弓で遠くを狙いやすくするためで、力は矢を遠くまで飛ばすために上がったのよ。光のスピードや動体視力や反射神経はあんたの流派を使いやすくするためじゃない?もし力押しの剣なら力がはね上がってたはずよ」

つまり元々の能力を強化した上に、武器や戦い方に合わせてさらに上乗せされるのか。覚醒っていうのは奥が深いんだな。


「…カネダはどんな風に強化されてると思う?」

「正直よくわからないわ。あいつ何もやってなかったみたいだけど、色んな部活で助っ人やってたみたいだし全体的に高いんじゃない?」

サヤはそう言って肩をすくめた。

「つまり特化している能力は君たちより低いってことか」

「それはまだわかりませんけど私の方が速いと思います。大剣にあんな重そうな鎧を装備してたらスピードは低下するはずです」

ヒカリは真剣な顔をして言った。

「それならヒカリの動きに目を慣らしておくか。そうしておけばあいつの速さに戸惑うこともないだろう」

「それはどうかしら?相手が加速魔法とか使ってこないとも限らないでしょ」

サヤは極めて常識的な意見を出した。

「心配には及びません。イドル様の前で魔法を使うなどあの者には到底不可能ですから」

ルーシーはメガネを光らせながら言い切った。

「ふーん。ま、今は聞かないことにするわ。決闘での楽しみがなくなるからね」

サヤは冷めた口調で言った。


「今日は協力してくれてありがとう。これから作戦を考えるから後は自由にしてくれていい」

「わかりました。それでは失礼します」

ヒカリはお辞儀しておれに背を向けた。

「…」

サヤはなぜか探るような目でおれを見てきた。

「何だ?」

「…あんたって火属性なんか使えたのね」

サヤはボソリと呟いた。

「それだけだから。じゃ、またね」

サヤは手を軽く上げてヒカリの後を追った。





今回は覚醒について説明してみました。うまく説明できてるのか不安です。


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