宣戦布告
王様の言葉を遮ったのは金田さんでした。
「どうした?……勇者よ」
王様は金田さんのことを勇者と呼ぶ時にものすごく嫌そうな顔をしました。勇者ということを認めたくないんでしょうか?
「何でそんなやつが選ばれてるんだ!勇者パーティーに上層部をたぶらかして出世できただけの、ステータスが低いやつなんか必要ない!」
…そう言えば金田さんは貴族派にたぶらかされてたんでしたっけ。でもステータスが低いってどういうことなんでしょう?私はそんなの見たことないんですが。
「あんたも従者を選定するのに納得したじゃない。結果が出てから文句言うとかよくそれで勇者を名乗れるわね」
沙夜ちゃんが右手で皆さんを制しながら言いました。
「う、うるさい!ぼくは貴族派が全く選ばれないとわかってたら同意しなかった!」
…どうやら金田さんは完全に貴族派に騙されてるみたいですね。そうじゃなきゃ民を虐げる貴族派に協力するはず…ありませんよね?
「そこで自信が持てない気持ちがわからなくないです。あの方の正義の判断基準はまともな神経の持ち主にはとうてい理解できなくなくないですから」
いつの間にかそばにいたメイドさんが言いました。あいかわらず言ってることがややこしいです。
「へー。じゃあ貴族派に今選ばれた従者に勝てるやつがいるって言うの?だったら今すぐ見せてほしいものだわ」
沙夜ちゃんが視線をやると貴族派の人たちは震え出しました。
「どうやら戦う勇気もないみたいね。足手まといの臆病者なんていくらいても邪魔なだけよ」
沙夜ちゃんは冷めた目で金田さんを見ながら言いました。
「な、ならぼくがそいつと決闘する!勝てばぼくが選んだ人をパーティーに入れさせてもらう!」
金田さんは意気込んで言った。
「すぐに暴力で解決するとか相変わらずゲスね。しかも無理矢理巻き込もうとするなんて最低としか言いようがないわ」
沙夜ちゃんはどこまでも冷静に言い放ちました。
「う、うるさい!とにかく受けてもらう。勇者の命令だから当然拒否権はない!」
金田さんはイドルさんを指差しながら言いました。
「…いいのか?公衆の面前で恥を晒すだけだと思うが」
イドルさんは心底面倒臭そうな顔で勝利宣言しました。
「何だと?!いいだろう。そこまで言うなら今すぐぶ」
「お待ち下さい勇者様」
金髪のうさんくさい笑みを浮かべた人が金田さんを止めました。
「いかに勇者様とは言っても今『構陣師』と戦うのは無謀です。決闘は1ヶ月後にしましょう。ハンデは…火属性以外禁止というのはどうでしょう?」
金髪の人はイドルさんの目を見ながら言いました。
「…勇者の評判をこれ以上下げてどうする。そんなハンデがあったら負けた時の言い訳の言い訳もできないだろう」
イドルさんがそう言うと私と沙夜ちゃんと貴族派の人たち以外がいっせいに頷きました。
「その勇者が下げた分はもう1人の勇者と対勇者の活躍で補ってもらうから大丈夫だ。どの道そうする予定だったからな」
王様の話の矛先が突然私たちに向きました。
「は、はい。頑張ります!」
「しかたないからやってあげるわ。そいつの悪評がこっちにまで影響されちゃ困るもの」
沙夜ちゃんは辛辣な言葉を返しました。
「それなら受けよう。おれが勝ったらそいつの勇者特権を剥奪させてもらう。そんなやつのせいで危険な目にあいたくないからな」
イドルさんは金髪の人の目をまっすぐ見ながら言いました。
「いいでしょう。どの道負けませんから飲んであげます。何なら勇者様の首をかけてもいいですよ」
金髪の人はうさんくさい笑みをさらに深くしました。
「か」
「まさか負けるのが怖いのかしら?なら今すぐ勇者の称号を返上して臆病者を名乗りなさい」
沙夜ちゃんはどこまでも冷たい口調で言い放ちました。
「く。いいだろう!1ヶ月後を楽しみにしていろ!」
金田さんはそんな捨てゼリフを残して玉座の間を去っていきました。
少し展開に無理があるかもしれません。まあ勇者(笑)の思考を理解しようとすること自体無理でしょうけど。
次回は決闘の対策などをする予定です。




