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従者指名

貴族派と魔王軍のつながりがはっきりした次の日、あたしたちは玉座の間に呼び出された。

「…もしかして貴族派を糾弾する気でしょうか?」

光が不安そうな顔で耳打ちしてきた。

「多分それはないわ。貴族派と魔王軍がつながってる疑いが出てきたのは昨日よ。証拠固めも準備も済んでないのにおおっぴらに動くなんてことはないはずよ」

あたしも光に耳打ちを返した。

「だったら何で呼び出したんでしょう?」

「さあね。まああの王のことだから絶対何かあるのは確かね」

そんなことを話しながらあたしたちは玉座の間についた。


「これより勇者の従者を指名する!」

あたしたちと金田が揃うと王がそう高らかに宣言した。

「従者?そんなもの自分で決める!」

金田は鼻息を荒くして言った。

「もちろん後で増やす分には構わない。だが城から出す従者はこちらで選んだ方が確実だ。魔王軍が攻めてきている今余分な人材を割く余裕はないし、実力がない者に入られるとそちらも困るだろう?」

王は貴族派をチラリと見た。

「な、なるほど」

金田はよくわかってないくせに頷いた。どうやら貴族派が苦々しげな顔をしてるのにも気付いてないみたいね。


「あの、沙夜ちゃん。何で貴族派の人たちはあんなに歯を食い縛ってるんでしょうか?」

光が小声で聞いてきた。

「貴族派はスパイ活動とか暗殺とかするために誰かを勇者パーティーに送り込みたかったのよ。そのために金田をたぶらかして誰かを選ばせるつもりだった。でもそんな間もなく王が従者を選定して、しかもこれ以上人材は出さないと宣言したわ。だから誰も送り込めなくてイラついてるわけよ」

あたしは口元を隠しながら答えた。

「…それも向こうの対勇者の策でしょうか?」

「さあね。どちらにしても誰かねじ込もうとはしてきたはずよ。勇者パーティーに加わって魔王を倒せばかなりの名誉だわ。もし貴族派があたしたちにも取り入ってたら魔王軍の関与なんて疑うこともないでしょうね。転移マーカーだけじゃ王を排除しようとしたことくらいしかわからないわよ」

そこらへん向こうの対勇者は詰めが甘いわね。作戦自体はなかなかだけどこうもバレバレじゃ意味ないわ。ま、貴族派がバカだからなのかもしれないけどね。


「それでは指名するぞ。まず第一従者は…『魔槍姫』ロベリア・スーピア・サミュノエル第二王女!」

呼ばれたのはあの時の青い髪で槍を持った姫だった。

「ま、当然だろうな。あの方が選ばれないわけがない」

「ああ。槍さばきも魔力量もこの国一だからな」

ふーん。やっぱりあの姫すごいのね。勇者(笑)の金田に対抗できるわけだわ。

「第二王女のロベリアだ。そこの男以外よろしく」

金田の方を全く見てないわね。やっぱり扱いがひどいわ。

「あ、はい。よろしくお願いします姫様」

「ロベリアでいい。もちろんそこの男以外はな」

ロベリアはあたしと光に微笑んだ。

「ふざけるな!勇者に向かって何て口の聞き方だ!」

「フン。勇者として認められたいなら行動で示してみろ。まあどうせ無理だとは思うがな」

ロベリアは一瞥も向けずに言い放った。


「次に第二従者は…『桜花』チェリル・ブロッサレム巫女!」

王が高らかにチェリルの名前を宣言した。

「これも妥当だな。木属性の使い勝手の良さは捨てがたい」

「術者としての力も高いからな。しかし姫様に巫女様と来るとひょっとすると次は…」

みんな納得はしてるみたいだけど、中には微妙な顔をしてる人もいる。一体どうしたのかしら。

「ヒカリさんとサヤさんと共に戦えるなんて光栄ですわ。一名よけいな者もいますが目をつぶっておいてさしあげますわ」

チェリルはあたしと向かって微笑んだ。

「言われてるわよロベリア」

「…わかってるとは思うがそこの勇者もどきのことを言ってるに決まってるだろう」

ロベリアは呆れたような顔で返してきた。

「失礼な!ぼくは勇者だ。だからここにいるんだろう!」

金田が怒鳴るとチェリルは顔をしかめた。

「認めたくないけどそうですわね。光属性を持っているからと言って何であなたのような方が選ばれたのか理解できませんわ。勝手に召喚しておいて何ですがあなたを召喚したのは本当に魔力の無駄遣いでしたわ。一体どの神がなぜ送り込んだのか今でも疑問ですわ」

チェリルはさらりと毒を吐いた。

「悪戯の神あたりが絶望に叩き落とすために呼んだんじゃない?何にせよ本気で神が認めたわけないと思うわ」

「え、えーと…。認められるように頑張って下さいね」

あたしが追撃すると光がすかさず追い討ちをかけた。光って無意識で相手の急所をえぐるような発言をすることが多いのよね。


「ふ「では次に進むぞ。第三従者は…『武器の申し子』エリザ・ウェポニア騎士団長!」

今度はあの時の赤毛の騎士が呼ばれた。

「まあ当然だろうな。しかしこれは…」

「やはりそうか。確かに順当だが…」

玉座の間にいるほとんどの人たちが納得と困惑が入り混じった表情をしている。…そういえばこの面子って何か思い当たることがあるような気がするわね。

「従者として選ばれたのは非常に名誉なことであります!このエリザお二方の命ならばそこの金髪に従うという屈辱にも耐えてみせましょう」

エリザと名乗った騎士団長は敬礼しながらとんでもないことを言った。

「どういう意味だ!ぼくは勇者だぞ」

金田はエリザに激しく噛みついた。

「当然でありましょう?勇者と言ってもう」

何か続けようとしたエリザの口をロベリアとチェリルがふさいだ。

「あなたバカですの?!今勇者から貴族派の計画が露見していることが伝わってしまっては大変なことになりますわよ。潰すならもっと時を待つべきですわ」

チェリルが小声でエリザをしかった。

「う?一体何が言いたいんだ!」

「ウジ虫が脳に湧いてる無様な臆病者とでも言いたいんじゃない?あながち間違ってないわね」

あたしはエリザの言葉をうまくごまかした。


「な「それでは最後の従者を発表する!」

金田の言葉を遮って高らかに宣言した。

「第四従者は…『構陣師』イドル・マギスニカ魔法陣課課長!」

王の言葉に貴族派以外から大きな歓声が上がった。

「やっぱりそうか!これは最強の布陣だな」

「ああ。個々の力もあるし、互いの力を知り尽くしているから連携もしやすい。それになんと言ってもあれがあるからな」

どうやらみんなイドルのことを認めてるみたいね。城に勤めて日が浅いはずなのにここまで認められるなんて一体何をしたのかしら?


「以上で従者の発表を終わりとする!」

王は高らかに宣言したその時

「ちょっと待て!」

―――耳障りな騒音が玉座の間に響き渡った。

今回はここで切ります。次もイドル視点にはしない予定です。

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