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出会い

「ふーん。なかなかいい街じゃない」

初めて城の外に出たけどなかなか賑わってるわね。ちなみに城の外に出たと言ってもデートじゃないわよ。間違ってもツンデレとかじゃないから。

「そうですね。いつも道に迷わないか不安であまり見る余裕がなかったです」

現にあたしと一緒にいるのは光しかいない。後護衛兼監視がついて来てるけどどうでもいい。勇者に万が一のことがあっちゃいけないことくらいわかってるし、何かの陰謀に巻き込まれないとは言いきれないしね。

「でしょうね。あんたって方向音痴だし」

「そ、そんなことないですよ。ただ迷いやすいだけです」

…それを方向音痴って言うと思うのはあたしだけかしら?


「はいはい。で、あれがあんたが言ってる商館なわけ?」

光はあたしが指差した先を見た。

「あ、はい。そこで合ってます」

へー。話には聞いてたけどすごいわね。かなり儲かってるって感じがするわ。

「何か裏で何かやってそうね」

「そ、そんなことないと思いますよ。…用心棒の皆さんはちょっと怖いですけど」

光は少し自信なさそうに言った。

「ま、正直どうでもいいわ。とりあえず行きましょ」

「はい」

あたしは光と一緒に商館に向かった。


商館に入ると黒髪の女があたしたちを出迎えた。

「あんたがサヤはんか。ホンマに目付き悪いんやな。うちのもんらとええ勝負やで」

うちのもんらってことは、やっぱりこの人が商館の主のチカゲってわけね。

「そう言うチカゲさんも本当に関西弁なのね。翻訳魔法って一体どうなっているのかしら」

「それはウチにもわからへんわ。魔法は全くの専門外やさかい。後ウチのことはチカゲでええよ」

チカゲはあごに手をあてながら言った。

「ふーん。まあチカゲには合ってるかもね」

「さよか。ほな話はこれくらいにしてミオリのとこに行こか」

チカゲはそう言って歩き出した。あたしは何か変な予感を感じながらチカゲの後に続いた。


「あらこの子がサヤちゃん?聞いてた通りきれいねー」

そのセリフを聞いて、あたしはあの時の邪悪な気配の正体はこの女だと確信した。

「そう。先に言っとくけどあたし別にここで仕立ててもらう気ないから」

あたしがそう言っても仕立て屋は笑いを崩さなかった。

「残念ね。対勇者の服を手掛けた人間なんか今までいないから宣伝になると思ったのに。そうすれば私の生活も楽になるのになあ」

…そんなニヤニヤ笑いながら言ってもあたしには通用しないわよ。

「ミオリさんかわいそうです…。沙夜ちゃん、お願いですから助けてあげて下さい」

あたしには、ね。光って純粋だからすぐ嘘に引っ掛かっちゃうのよね。

「沙夜ちゃん…」

…はあ。わかりましたよ。あたしが折れればいいんでしょ。折れれば。

「…変なことしたら殴るから」

「はーい」

仕立て屋は全く信用できない笑顔で言った。


「はー。ひどい目にあったわ」

結局採寸が終わるまでに13回も仕立て屋のミオリを殴ることになった。あれは明らかに慣れてる手付きね。

「だってー。触った方がイメージつかみやすいんだもん」

ミオリは全くこたえてないみたい。本当に人間なのかしら

「嘘おっしゃい。それといい大人がもんとか言うな」

「ひっどーい。私まだまだ若いわよー」

「あっそ。じゃ、採寸終わったからもう戻るわね」

あたしは完全にミオリをスルーした。

「ぶー。ま、いっか。出来上がり楽しみにしててねー」

ミオリの言葉に手を上げて返して、あたしはミオリの部屋から出ていった。


ミオリの部屋を出て商館のロビーに戻ると、見覚えがある4人組を見かけた。

「あんたたち弓の練習を見てたわよね?」

4人は振り向いてあたしがいるのに気づくと驚いたような顔をした。

「あ、お姉様じゃないッスか。あんなに大勢いたのによく覚えてるッスね」

白衣を着た女がニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。

「だってみんな騒いでる中で冷静に見てるやつがいれば逆に目立つもの。覚えるなって言う方が無理よ」

「なるほど。それは盲点だったよ」

なんかうさんくさい片眼鏡の女が感心したように言った。

「……ぎ、逆に目立ってましたか。……は、恥ずかしいです」

大人しい感じの女が恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「ほんまよう見てはりますなあ。うちやったらよう気づきまへんわ」

十二単を着た女の言葉を聞いたあたしは思わず耳を疑った。


「さ、沙夜ちゃん。今のって…」

光があたしの袖を引っ張った。

「どないしはりましたんや。うちなんか変なこと言いましたかいな?」

…うん。どうやらおかしいのは耳じゃなくて翻訳魔法の方みたいね。

「やっぱり。この人も関西弁を話してますよね」

やっぱり光にもそう聞こえてるみたいね。

「正確には京言葉ね。あんたの家族ってヤマトの都あたりと何か関係ない?」

あたしは十二単の女を見ながら言った。

「確かにうちの先祖はヤマトの都出身やけど…。なんでわからはりましたのん?」

十二単の女はわけがわからないという顔をした。

「あんたのしゃべり方があたしたちの世界の京都って所の人の喋り方にそっくりに聞こえるからよ。確かなことはわからないけどね」

あたしがそう言うと大人しそうな女がハッとしたような顔をした。

「どうしたの?」

あたしはできるだけ怖がらせないように優しく聞いた。

「は、はい……。……多分地域ごとのなまりをわかりやすいように自動変換してるんだと思います。……本に国ごとに言い回しやイントネーションが違うって書いてありましたから」

「なるほどね。日本語にも方言はあるし、外国語を話す時になまることはあるわ。同じ言葉を使ってても地域差が出て当然ってことか」

それにしてもそういう変換ができるってことは、元の世界とこの世界の地理とか歴史とか文化とかって似てる所が多いのかしら?

「その話が本当なら翻訳魔法の歴史が変わるかもしれないッスね。ま、私は専門外ッスけどね」

白衣を着た女はダルそうに言った。専門分野にしか興味がないみたいね。


「で、あんたたちは何しにここに来たの?」

「少し貿易関係のことを相談しに来たんどす。関税やどこと貿易するかは商人の目から見た方がわかりやすいんですわ」

十二単は

「私はその付き添いッスよ」

「……わ、私もそうです」

ふーん。この子たち仲いいわね。見た所派閥は違うみたいだけどね。派閥を越えた友情なのか、それとも派閥同士の仲がいいのかどっちなのかしら。


「私は用事のついでに寄ることにしたんだ。ちょうど近くにあるしな」

片眼鏡が少し物憂げに言った。

「用事って何ですか?」

光。素直なのはいいけどもう少し考えなさいよ。触れられたくない話題かもしれないじゃない。

「…そうだな。君たちも知っておいた方がいいかもしれないな。……この国の闇をな」

片眼鏡は皮肉げな笑みを浮かべながら言った。






…正直京言葉はあまりよくわかりません。間違いがあれば指摘して下さい。次で少しは話が進むればいいです。

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