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属性魔法陣

「今日は魔法陣を書く。二人とも魔筆を扱えるようになったか?」

「は、はい。なんとか」

ヒカリは少し自信がなさそうに言った。

「ええ」

それに対してサヤは全く動じた様子がない。前の段階でもかなり出来てたから当然かもしれない。


「まずこの世界の魔法について説明する」

おれはまず黒板に図を書いた。

「基本は火、水、風、土の四属性だ。さらに特殊属性、上位属性の光と闇、無属性がある」

「なぜ光と闇は上位属性と呼ばれてるんですか?」

ヒカリが手を挙げて聞いてきた。

「まず単純にすごいからだ。光属性は『闇のコア』を唯一消滅させられる上に、魔物に対して絶大な効果を発揮する。それに加えて回復や防御などの効果を飛躍的に高める特性がある。闇属性は破壊力が凄まじい。それだけじゃなくて状態異常や呪いなど嫌らしい効果がつく呪文が多い。次に限られた者しか使えないからだ。光は異世界人だけで、闇は異世界人、魔族、高位の魔物にしか使えないようになっている」

「なるほど。よくわかりました」

光は納得したように頷いた。


「じゃあ特殊属性は?」

今度はサヤが聞いてきた。

「四属性に入らない属性だ。チェリルの木属性も特殊属性の1つだ。使える者が限られてるが、多様な種類があり使い手自体は意外と多い」

「でも無属性って言うのも四属性には入らないんでしょ?一体どうやって見分けるのよ?」

なかなか鋭い質問だ。やっぱりサヤは洞察力があるな。

「無属性は誰にでも使える。どうやって分けるのかは水晶玉に色が出るか出ないかだ。特殊属性は出るが、無属性は出ない。でも実戦ではわかりにくいのもある。おれは魔法陣を見れば分かるが、普通は敵が自慢げに自分の属性を話さない限りわからない」

「…多様な種類がある特殊属性を魔法陣を見ただけで判別できる物なの?」

サヤは腑に落ちないという顔をしている。


「それを説明するには魔法陣について知る必要がある」

おれは黒板に2つの魔法陣を書いた。

「左が光属性の基礎魔法陣で、右が闇属性の基礎魔法陣だ。基礎魔法陣は魔法を発動させるための魔法陣で、属性によって違ってくるんだ」

「その基礎魔法陣って誰が決めたのよ?」

サヤが不思議そうな顔で聞いてきた。

「…確かなことはよくわかっていない。一番有力なのは神が決めたという説だ。現に新しい特殊属性を持つ者が生まれると神殿に神託が下り、新たな属性の名前と基礎魔法陣が告げれるらしい。四属性や上位属性も同じように決まったと考えた方が自然だろう」

「でもそれだと神は単に分かった物を伝えてるだけとも考えられるわ」

サヤが鋭い指摘をした。

「確かにそういう考えもできる。神が生み出したという根拠はどこにもないしな。もしかして神の力が及ばないことかもしれないし、この世界の神以上の存在が関わっているのかもしれない。もともと神はたくさんいるものだからこの世界の最高神より強い神がどこかにいても不思議じゃないしな」

「…まあゼウスとオーディンとどっちがすごいのかとかなんてわからないしね。唯一神教だったら自分の信仰する神が一番だと言うだろうけど」

サヤが微妙な顔をしながら言った。


「まあそういうことは歴史家とかに任せればいい。今は基礎魔法陣について説明するのが先決だ。基礎魔法陣は初級攻撃魔法の魔法陣でもある。いや、基礎魔法陣を敵に向かって放つのが初級攻撃魔法と言った方が正しいかもな」

おれは黒板に文字を書いた。

「基礎魔法陣は魔法を起動させるのに必要なものだ。どんなに優れた術式を書けたとしても基礎魔法陣をきちんと書けないと発動すらしないんだ」

「つまり基礎魔法陣は動力源みたいな物ってわけね」

サヤが落ち着き払って言った。

「そんな所だ。魔力は燃料で、起動できる基礎魔法陣は人によって違う。属性を持つと言うより、ある属性の基礎魔法陣を起動する特質がある魔力を持つと言った方が正しいかもしれないな」

「つまり私は光属性と無属性、沙夜ちゃんは闇属性と無属性以外の呪文は使えないというわけですね」

ヒカリが確認するように言った。

「そういうことだ」

「使える属性って増えたりしないの?」

サヤは不思議そうな顔で聞いてきた。

「属性は生まれた時から一生変わらない。まあ水晶玉でわからない未知の属性が存在しないとは言い切れないが、それは判明してなかったわけで増えたわけじゃない。扱える属性や属性の数だけは絶対に越えられない壁なわけだ」

おれがそう言うとヒカリは納得したように頷き、サヤはどこか気遣うような目で見てきた。自覚はないが心のどこかに変な感情があったのかもな。


「それじゃ基礎魔法陣を書いてもらう。おれが見本を見せるからなぞって書いてみてくれ」

「書くのってどうやるの?あたしたち操作しかしてないんだけど」

サヤが訝しげに聞いてきた。

「魔力を先端に集中させれば書ける。動かした通りに出るから慎重にな」

ヒカリとサヤが頷いたからおれはヒカリの前に光属性の魔法陣、サヤの前に闇属性の魔法陣をゆっくりと書き始めた。

「えーと、こうですか?」

ヒカリは戸惑いつつおれが書くのをなぞっている。

「なるほど。次は…」

サヤはうまくついて行っている。やっぱり器用だな。


「…よし。二人とも書けたな。ひとまず魔力を魔法陣に放出してみろ。問題がなければ魔法が発動するはずだ」

「は、はい。えい」

ヒカリが魔力を込めると、魔法陣は一瞬白く光ったが発動する前に霧散した。

「え、ええ?!何で消えたんですか?!」

ヒカリは驚いて悲鳴を上げた。

「円を書いて次に進む時に魔法陣が途切れたからだ。基礎魔法陣は非常にデリケートな物だ。どこかで途切れるだけじゃなく、基礎魔法陣の線の上に少しでも魔筆で書いた物が重なると発動しない。基礎魔法陣を疎かにしたせいで肝心な所で魔法が不発に終わって命を落とした魔法使いも少なくない。基礎魔法陣を書く時は常に注意する必要がある」

「…課長が言うと説得力があるのかないのかよくわかりませんね」

ルーシーが苦笑しながら呟いた。

「次はあたしね」

サヤが魔法陣に力を込めると魔法陣から黒い光線が出てきた。

「よくやった。サヤは見本を見ながら繰り返し書いてくれ。慣れてきたら何も見ないで書く練習をしてみろ」

「了解」

サヤはそう答えて闇属性の基礎魔法陣をまた書き始めた。


「ヒカリはおれがつきっきりで教えてやる。ダメな所があれば指摘するからな」

「はい!」

…なぜかサヤの方向から殺気を感じる。

「…今度埋め合わせするから」

おれがそう言うとサヤはピクリと反応した。

「こ、今度とかそんな曖昧な言葉なんかじゃごまかされないわよ」

サヤは顔を少し赤くしながら言った。

「じゃあ休みが取れたらどこか行くか?2人きりでな」

「それならいいわ。デ、デートとかじゃないから勘違いしないでよね」

…わかりやすいツンデレだな。こういうギャップがなんかかわいいような気もする。

「あの、仲がいいのはいいんですけどそろそろ再開しませんか?」

ヒカリが少し拗ねたように言った。仲間外れにされたと感じたのかもな。

「…そうだな」

「…そうね」

おれとサヤは気を取り直して魔法の特訓を再開した。


「よし。今日はこれくらいでいいだろう」

あれから何度か繰り返してサヤは基礎魔法陣をかなりの速さで書けるようになった。ヒカリは何度かやったらコツをつかんだのかうまく書けるようになってきた。どうやらヒカリは体で覚えるタイプみたいだな。

「次は術式をやる。それまでに基礎魔法陣を復習しておくように。魔法を使う時には常に必要になってくる物だからな」

「はい」

ヒカリは力強く頷いた。どうやら自信がついてきたようだな。

「わかったわ」

サヤは冷静に言った。

「それじゃ解散だ」

「はい。失礼します」

ヒカリは一礼して出ていった。


「…ねえ、ちょっと聞いていいかしら?」

サヤはそう言って探るような目で見てきた。

「何だ?」

「何でイドルは光属性と闇属性の基礎魔法陣が普通に書けるのよ。あんたどっちも使えなわよね」

サヤは不思議そうに聞いてきた。

「…君たちが来るのを予想していたからだと言ったら信じるか?」

「ないわね。ヒカリはともかくあたしまでここに来ることがわかるはずかまないわ」

ヒカリは自信を持って言い切った。

「そう言える根拠はどこにある」

「チェリルから勇者召喚陣の修正を依頼されたのは召喚の3日前だって聞いたわ。仮にその段階で対勇者が来るとわかっていたとしても前魔法を習うまで5日間しかないじゃない。それなのにあそこまで手慣れた感じで書けるのは不自然よ。前から書けるように練習していたと考えるのは当然よ」

サヤのロジックはかなり優れている。反論できる気が全くしない。

「一体どこに闇属性の魔法陣を書く必要性があったのかしらねえ?」

サヤは含み笑いを浮かべながら言った。少し遊んでるだけなんだろう。

「すぐに見れるさ。…何かあったらな」

おれの言葉にサヤの笑いがわずかにひきつった。

「そう。なら何も起こらない方がいいわね。それじゃ失礼するわ」

サヤはそう言って部屋を出ていった。

「もしかしてサヤさんは何か感付いているんでしょうか?」

ルーシーはメガネを直しながら言った。

「かもな。まあどちらにしろやることは変わらない」

「ふふっ。そうですね。何かあればやつらを討ち滅ぼせばいいだけですから」

ルーシーはメガネを光らせながらニッコリと笑った。


今回は主に属性について書いてみました。設定について意見があれば遠慮なく書いてください。

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