序章
以前、こちらのサイトで掲載させて頂き、その後、某賞に応募し落選して
再び掲載したものです。
例えば。
仮に今、俺がこの瞬間、この世から消え失せたとして、一体、どのような変化が、この世界に生じるというのだろう。
世界にはすでに、俺個人の知覚では推し量れないほど沢山のヒトが、モノが存在している。そんな中、たとえば俺一人の命が失われたところで、一体誰が、不便な思いをする羽目になると言うのだろう。
―――いや、誰もいまい。なぜなら、今この瞬間に俺の存在が消えてなくなったとして、世界に溢れかえるそうした沢山のヒトやモノが、すぐさま俺の存在を埋め合わせし、そもそも最初から俺などいなかったかのように取り繕ってくれるだろうからだ。
俺の命は、死は綿毛よりも軽い。例えば、飛び込み自殺でも図らない限り、俺の死は、バスや電車の運行を止める事すらできはしない。俺が死んだ後も、人や街は立ち止まる事なく動き続け、コンビニは通常通り営業を続け、工場は動き続け、学校は―――とりあえず朝一の集会で軽く喪に服せば、二時限目からは普段どおりの授業が始まる。
風は絶え間なく吹き、季節は巡る。鳥は飛び雲は流れ続ける。翌朝になれば再び日は昇り、そして今、俺の目の前を行き交う人々も、数時間後には、さも当然のように新しい一日を迎える。地球はあいもかわらず、一周二十四時間で回転を続ける―――。
つまり、今、俺が死んでも、誰も、何も変わりはしない――――
―――などという、俺の中途半端なタナトスと過剰なまでの自己陶酔は、アイツとの出会いによって、木っ端みじんにブッ飛ばされる事となった。
「なに勝手に死のうとしてんのよボケェ! いい? あんたを殺すのはアタシなんだからねっ! そこんとこ、よーっく覚えときなさいよ!」
その“アイツ”とは、神様でも仏様でも、まして怪しげな新興宗教のグルなどでもなく、一人の、チビの、貧乳の、死神だった。
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