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その後 ~母親となったトランクバーク~

 現役を引退し、繁殖牝馬になったトランクバークはその後、5頭の競争馬の母親になった。



 最初に生まれた仔(牡馬)は、2017年に星厩舎からデビューをした。

 気性は母親に似てか荒く、1着か惨敗かを繰り返していた。

 そんな中、この馬はオープンクラスになった後、4歳(2019年)の3月に中山記念(GⅡ)に出走した。

 レースのゴール前は次のようになった。


「残り150を切った!まだファントムグレースが先頭で頑張っている!」

「しかし、ここでトランククラフトが交わした!」

「ファントムグレースも粘る!」

「残り100を切った!ファントムグレースは後退していく!先頭はトランククラフト!」

「しかし後ろからは1番人気のストリームキニーネが追い込んできた!」

「トランククラフトが逃げる!ストリームキニーネが追い込む!」

「トランククラフトか!?ストリームキニーネか!?2頭並んでゴールイーーン!!」

「わずかにトランククラフトが粘り切ったか!?」


 結果は、トランクバークの仔であるトランククラフトが、ストリームキニーネの追い込みをクビ差押さえ、見事に優勝した。

(ファントムグレースは5着。)

 この瞬間、母が果たせなかった重賞制覇の夢は、息子によってついに現実のものとなった。

「やったーーーっ!ついに重賞に手が届いたーーーっ!!」

「トランクバーク、お前との約束を果たしたぞ!!」

 木野牧場で初めて重賞を勝った求次と、5年前に「いつか君の仔で一緒に重賞を取ろう。」と約束をしていた星君は、感極まりながら喜びを分かち合った。

 表彰式では、涙をこらえながら記念撮影を受ける彼らと久矢騎手の姿があった。

 その後は故障に悩まされるようになり、満足にレースを使えない状態が続いたが、最終的に5歳秋まで走り続け、16戦5勝(重賞1勝)の成績をおさめることができた。



 2番目に生まれた仔(牡馬)は、2018年にやはり星厩舎からデビューをした。

 そして兄の快挙から1年後、4歳の3月に中京記念(GⅢ)を制した。

 さらに翌年にはエプソムカップ(GⅢ)を制した。

 GⅠには手が届かなかったものの、最高で3着(マイルチャンピオンシップ、4歳時)に入り、ファンからの知名度は高かった。

 この馬は大きな故障をすることもなく6歳末まで走り続け、29戦6勝(重賞2勝)の成績をおさめることができた。

 最終的な獲得賞金は2億3千万円を超え、5頭の中では最も多くの賞金を稼いだ。

 この2頭のおかげで、木野牧場の経営はすっかり安定し、豊かな牧場になった。



 3番目に生まれた仔(牝馬)は、2020年に兄と同じ厩舎からデビューをした。

 この馬は元々脚部不安を抱えていたため、常に脚元と相談しながら調教をしなければならなかった。

 また、レースも満足に使うことができず、1回出走する度に放牧というケースが多かった。

 それでもオープンクラスにまで駆け上がることができた。

 最終的には5歳の1月まで走り続け、11戦5勝の成績で引退して繁殖入りした。

(繁殖にあがった後は5頭の競走馬の母親となり、そのうちの1頭がGⅠ高松宮記念を制した。)



 4番目に生まれた仔(牡馬)は1600万クラス止まりで、1回格上挑戦した以外、オープンクラスのレースを走ることはなかった。

 実績は兄、姉と比べて地味だったが、それでも8歳秋までタフに走り続け、40戦5勝の成績を収めた。




 一番下の仔(牡馬)は34戦3勝と1000万クラス止まりで、それまでの産駒の実績からすると、寂しい結果に終わってしまった。

(この馬をモデルにした競走馬を、作中でムラサキツユクサ(こちらは牝馬)として登場させました。)




 5頭の産駒のうち、オープンクラスに駆け上がれたのは3頭(うち、重賞勝ち馬は2頭)だったが、元々700万円の格安で買ってきた馬が競走馬として、そして繁殖牝馬としてこれだけの成績をおさめたことは、すばらしいことであった。

 トランクバークはまさしく牧場を救った競走馬であった。

 木野牧場の入り口には、トランクバークの銅像が立てられ、木野家にとっては顕彰馬として語り継がれる存在になった。

 ありがとう、トランクバーク。この馬に出会えたことを、木野家の人達、そして久矢騎手を含む星野厩舎の人達は、決して忘れないでしょう。


(おわり)


 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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