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蒼の英雄譚。  作者:
3/3

蒼之育親。


うとうと…うとうと…

あと五秒で夢の世界へ旅立て「旅立つなアホンダラァァァ!!!!!!」

……いきなり、俺が寝る寸前で妨害してくる無粋な声が一つ。


「……朝っぱらからウルセェんだよクソジジィィィィ!!!!」


何度も何度も聞き慣れた声。優しくも厳しい、俺の育ての親。

グラン・ガルディオス。この村最年長にして、村の長を務める男。

俺が物心つく前から俺の世話をしてくれ、ここまで育ててくれた男。

俺がこの世で最も感謝している男。


「くっ、クソジジイとはなんじゃ、そんな子に育てた覚えはないぞい!?」


「そんな子に育てられたから、こんな風に成長してんだよクソジジイ」


「また言った!?……ワシ、泣いて良い?」


「泣くなら俺の目の届かない所で。目に猛毒だから。俺の目が死ぬから。」


「あんまりじゃあ!?」


こんな風に軽口を叩けるのも、このジジイを信用してるから。……なんだろうな、やっぱり。

俺は、森に捨てられてたらしい。それをジジイが拾って、育ててくれた。

このジジイにはいくら感謝しても足らない。絶対口には出さないけど。


「…で、なんか用なのかよ?」


「お主のぉ……昨日の内に、朝ワシの所に来るようにと言っておったじゃろうが……」


「あー……忘れてた☆」


「忘れんなぁぁぁぁ!!!!」


「おいおい、そんな怒鳴ってばっかだと……禿げるぞ?」


「大きなお世話じゃあぁぁ!!」


「…あ、ゴメン、もう手遅れだったか。」


「やかましいわぁぁ!」


「はいはい、で、何の用?」


「話振り出しに戻ったような……。まぁ良いわい、お主を呼んだのは、お主の学園入学のことについてじゃ」


「あぁ……そういえばもうそんな年だったっけ。大きくなったねぇ……俺。」


「それはワシが言うべきセリフなんじゃがのぅ……

ともかく、お主は国の制度により、サンクワールの首都の学園に入学しなければならぬ。」


「国のお偉いさんも面倒な制度を作るよなぁ……まぁ良いけど。」


「……ホ?」


「んぁ?どうしたんだよ、そんな鳩がマシンガン喰らったみたいな顔して。」


「鳩がマシンガン喰らったら死ぬからのぅ!?鳩はそんなに強くないぞい!?

いや、お主はもっと行くのを渋ると思っておったんじゃが……」


「確かに面倒だけど、俺の夢を叶えるのには一番近道だからな。」


「お主の夢、か……まぁ確かにあそこは国立図書館や優秀な魔導師や刻紋師が居る。

力をつけるにはもってこいじゃのう。」



俺の夢……少しでも多くの人を救うこと。

理想だってことは分かってる。傲慢な考えだってことも。


でも、だからどうした?


理想だからこそ、叶えたいと人は願う。

叶うまでの道は遠い、でも叶わない訳じゃない。

例えその道の終着点が那由他の彼方に有ろうと‐‐必ず辿り着く。


傲慢だと言われても良い。後ろ指を指されても構わない。

身の程に相当しない夢だというのなら‐‐相当する力をつけてやる。


救われる人の考えなど、知らない。

俺のために、俺が俺であるために‐‐この夢を叶えるよ。



「ジジイ……俺は、強くなるよ。」


「(良い目をするようになった……。あれほど小さかった子供がこんな立派な男に……。

のうリオン、フィーナ……シンジはお主らの血を立派に引き継いでおるぞ……)」


「……ジジイ?」


「っと、すまぬ。考え事をしておっての。あい分かった!

シンジよ、準備を整え首都へ向かいなさい。出発は三日後!村の者達にも伝えておくんじゃぞ?」


「分かった、準備はしておくよ。」


「うむ、それではワシは家に帰るとする。邪魔をしたな。」


「二度と来んな。」


「別れ際にそれは酷くない!?」


ジジイはぶつくさ言いながら、自らの家へ帰って行った。

しかし、学園、か……。どうなることやら。

まぁ、難しいことは寝てから考えよう。

今度こそ俺はベッドに飛び込み、意識を手放した‐‐‐‐








少年には親は側に居らず、ルナシアという村の村長に育てられていました。

少年には夢がありました。

色んな人をこの手で救うという夢が。

それが理想であり、傲慢であるということを少年は知っていました。

しかし、決して諦めることはありませんでした。

いつか辿り着くという決意を胸に秘めていたから。

かくして少年は夢を叶える力を得るため、その国の首都に向かいます。

その背に、壮大な夢と大変な運命を背負って。







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