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蒼の英雄譚。  作者:
2/3

蒼之目覚。


ゆっくりと目を開く。

目に飛び込んできたのは見慣れた天井‐‐ではなく、雲一つない青空だった。

今日も良い天気だ……!?


「何でいきなり空っ!!!???」


慌てて起き上がり辺りを見回すと、そこは自分の家の玄関先。……何故に?

玄関は開けっ放しになっていた。

若干寝惚けた頭で家の中に入ると、当然の如く毎日見慣れた我が家の風景。

太陽の昇り具合を見る限り、朝の五時ぐらいか?



んむむ……どうやら、深夜に寝相で玄関先まで移動したみたいだ。

寝台から玄関までは大した距離はないけど、それでも一本道って訳でもない。

しかも当然、玄関に鍵もかけてる。

それでも外に出る俺って……ある意味凄くないか?


「俺の寝相に拍手……」


まさか俺にこんな特技があったとは……後で皆に自慢しよう。



そんなことを考えていると、胃が空腹感を訴えてきた。

……とりあえず腹ごしらえだな。


台所に向かい、今日の朝飯を考える。

こう見えて、案外料理は得意だ。何せ、ガキの頃からほぼ毎日続けてきた習慣の1つだからな。

頭の中で構想が固まり、調理に移る。

流し台の所に刻まれた《水流》の文字に触れ、水が流れる姿を想像し、念じる。

するとあら不思議、文字から水が流れ出るようになった。


水で手を洗い、隣のコンロに移動する。

そこにも、《火昇》と文字が刻まれている。

先程と同じように念じると、俺が想像した勢いのままで、文字から火が吹き出た。



これらの文字は『魔法紋』といわれるもので、

東方の国で昔使われていた文字を元に編み出されたらしい。

これがあれば、魔法の心得がないものでも魔法を使うことが出来、人々の日常にかなり役立っている。

もっとも、誰もが刻めるものでもなく、

刻めるのは希有な魔力を有し、『魔法紋』の概念を正しく理解した『刻紋師』だけだ。

俺は何故か魔法紋について書かれた本を読むだけで大体は理解でき、

簡単なものならば刻めるが、難しいものになるときちんと学ばなければ出来ない。


「…っと。」


考え事をしていると、料理が焦げてしまいそうだった。

急いで皿に盛って、食卓へ運ぶ。


「んじゃ、いただきます」


椅子に座り、料理を口に運ぶ。

味は上々だな。



さて、今日は何かあったっけか?

んー……なんかジジイが呼んでたような気がするけど……無視で良いか☆




俺はこの村の村長でありながら、

俺の育ての親でもあるジジイのことを完全に記憶から消し去ると、

有り余る自らの睡眠欲の赴くまま、ベッドに飛び込み意識を手放した‐‐





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