蒼之夢願。
‐‐夢を見ていた。
笑い合う仲睦まじい夫婦。優しげな女性の手の中に抱えられた赤ん坊。
絵に描いた様な幸せな家族。
何の変哲もない、普通の家族の日常風景。
俺がどんなに願おうとも、手に入らないもの。
何度、この夢を見ただろう。
何度も何度も夢に見るということは、
それだけ俺がそんな当たり前の日常を深く欲しているということだろうか。
無償の愛を注がれているあの赤ん坊を羨ましく思ってしまうのは‐‐
出来るならばあの赤ん坊に成り代わりたいと願ってしまうのは‐‐
俺が孤独だからなんだろうか。
何度夢を見ても、俺に出来ることなど何一つなくて。
俺が出来るのは、
どこの誰とも知らぬ、この幸せな当たり前の日常が‐‐
この親子の幸せに満ち溢れた笑顔が‐‐
壊されてしまわわぬようにと、ただ願うことだけ。
誰かを救いたいと思っても、俺の手は余りにも短すぎて。
この世界に生きる全ての人には、きっと届かない。
どんなに頑張っても、俺の掌じゃあ全ての人は包み込めなくて。
誰かを救えても、この世のどこかに、そのせいで死んでしまった人が居る。
ただ、願う。
人々が笑顔であるようにと。
泣いても、怒っても、最後には皆で笑ってられるようにと。
願う。
誰もが自ら望んで、今日を生きれるようにと。
どこかの次元のどこかの世界。
そんなどこかの場所で、ある少年が生きていました。
少年は雲のようでした。
自由に漂う雲の如く、誰に縛られることなく己の道を歩き続けました。
少年は空のようでした。
どこまでも広がる空の如く、広く、大きな心と器を持ち、誰に対しても分け隔てなく接しました。
少年は太陽のようでした。
闇を照らす太陽の如く、人を惹きつけ、人々の心を明るく照らしました。
そんな、少年の描く、何の変哲もない、おはなし。




