クルガンシードの地平線
その静寂を切り裂いたのは、鼓膜を震わせる爆鳴だった。
クルガンシードの地平から立ち昇る紅蓮の炎。その中心で、一振りの巨大な太刀が空を裂き、群れなす悪魔たちを文字通り「質量」で押し潰している。重力など無視したかのような苛烈な剣閃。
「……やはり、生きていたか。織田剣持」
頼朝がそう呟くと同時に、戦場から一気に距離を詰めてきた影が、ライオットマグナスの足元に着地した。衝撃で地面が陥没し、砂塵が舞う。そこには、和装の上からエルフ特有の魔導防具を纏った男が立っていた。
「頼朝。お主もこの『最低』な異界に馴染んだようだな」
剣持は不敵に笑う。その瞳には、星の方舟の動力源である「天津甕星」の輝きが宿っていた。彼は今川義満や徳川家乗といったかつての同胞を率い、この世界の「生命」の循環を歪める存在――偽りの神々と戦い続けてきたのだ。
「混ぜてはいけない力同士を、無理やり混ぜ合わせるのが俺たちの流儀だったな。剣持、その背後の竜は何だ?」
「これか? 途中で拾ったコボルトの王と、墜ちた精霊を掛け合わせたものだ。見た目は悪いが、息吹一つで城門を吹き飛ばす」
二人の前で、空間が歪み始める。かつて「巫女」が予言した、世界の終焉。素盞嗚尊の荒ぶる魂を模した魔導回路が暴走し、空に巨大な穴が開き始めていた。そこから這い出そうとするのは、この世界の「礎」を喰らう最古の悪魔だ。
「最大」の脅威を前にして、頼朝は「素質」の全てを右腕に集中させる。
「剣持、策はあるのか」
「あるはずがなかろう。だが、案ずるな。俺たちがここにいる時点で、結末は『大丈夫だ、問題ない』に決まっている」
織田剣持が太刀を構え、品川頼朝が異形の手を突き出す。かつての宿敵が、今、神話の彼方へと踏み出した。




