混沌世界の誕生
「なんだ、またこの夢か」
品川頼朝は、視界を埋め尽くす極彩色の幾何学模様を眺めながら、他人事のように呟いた。足元には、かつて織田剣持と共に駆け抜けた戦場の泥ではなく、底の見えない虚空が広がっている。
「混ぜるな危険、でも大丈夫だ、問題ない」
そんな、誰の言葉かも分からぬ奇妙な格言が頭をよぎった瞬間、世界が裏返った。重力が反転し、頼朝の体は「星の方舟」と呼ばれる巨大な構造体へと吸い込まれていく。そこは精霊たちの息吹が物理的な風となって吹き荒れ、リザードマンの戦士たちがエルフの魔術師に跪く、理の崩壊した場所だった。
「主様、目覚めの時間です」
傍らに立つのは、天津甕星の加護を受けた巫女。彼女の背後には、天照大御神、月読尊、そして素盞嗚尊の三神を模したとされる巨大な魔導兵器「ライオットマグナス」が鎮座している。それはこの異世界における「最大」の武力であり、同時に、この地の平和を支える「礎」でもあった。
「今川義満や徳川家乗たちはどうした?」
「彼らは既にコボルトの群れを率いて、クルガンシードの防衛線へ向かいました」
頼朝は自身の右手に宿る、異質な質量を感じ取った。それは「素質」などという生易しいものではない。かつての敵であった悪魔の心臓と、守護竜の血を掛け合わせて生まれた、禁忌の力だ。
「傍観している暇はなさそうだな。最低の展開だが……悪くない」
彼は愛刀を抜き放つ。その刃には、この世界の生命そのものを象徴するような、青白い光が宿っていた。現代の武士と、神話の神々、そして異世界の怪異が混ざり合う、混沌の幕が上がる。




