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拾った相棒はスライムでした ~新人テイマー、旅に出ます~  作者: mii


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第1話 旅立ちなのです!


皆さん、こんにちは。


私の名前は ミルティナ・アルセリア と申します。


村の皆さんは、親しみを込めて「ミル」と呼んでくれます。


この村は小さく、決して裕福ではありません。

けれど、誰かが困っていれば自然と手を差し伸べ、

喜びも悲しみも、皆で分かち合って生きてきました。


私は――この村が大好きです。


そんな大切な場所を、私は明日、旅立たなければなりません。


生まれ育った場所を離れるのは、とても寂しいです。

皆さんに別れを告げてからの一か月は、


一日一日が、これまで以上に大切な時間になりました。


今日は村総出で、私のためにお別れ会を開いてくれるそうです。


「ミル……本当に、明日行くのかい?

成人まであと一年あるだろう? それまで待ってからじゃ、だめなのかい?」


そう声をかけてくれたのは、隣に住んでいるおば様でした。


去年、母が流行病で亡くなってから、

ずっと寄り添い、私の面倒を見てくださった方です。


「おば様……。

でも、もう待てないのです」


毎日のように、同じ質問をされている気がします。

それだけ、心配してくれているのだと分かっているから、

胸が少し痛くなりました。


私には、生まれつき 特殊な体質 があります。

それは完全な遺伝で、母から受け継いだもの。

――そして、この村の皆さんには秘密にしていること。


「おば様。

母も、有名なテイマーだったと聞いています。

母がテイムしていたモンスターたちは……今、どうしているのでしょうか」


「さあ……わからないわ。

ソフィアがあなたを身ごもって、この村を訪ねてきた時には、もう誰も連れていなかったもの」


そう話していると、おば様の旦那さんであるおじ様が、

食べ物を運んできてくださいました。


「ソフィアは、お前に何も教えてなかったんか?」


「昔の話を教えてくれたのは、

母の具合が悪くなってからなのです。

だから……詳しいことは、聞けなくて……」


「ちょっと、あなた!口を挟まないで!

ソフィアは、教えたかったに決まってるでしょう!」

そう言って、おば様はおじ様の頭をぴしゃりと叩きました。


この、いつもの光景も、今日で見納めなのですね。

そう思った瞬間、

胸の奥から寂しさが込み上げてきて、

泣かないと決めていた決心が、揺らいでしまいそうでした。


「きっと、いろいろ事情があったんだよ。

父親のことだって…。」

「おば様……。私は、大丈夫ですから」


私は、深呼吸してから言いました。


「母が言っていました。

私にも、テイマーの素質があるみたいだって。

聞いた時は、とても不安でした。

でも今は……目指したいと思っています」


「……あぁ、そうさ。

この村の皆が、あんたの夢を応援してるよ。

もし迷ったり、心が苦しくなったら……

いつでも帰っておいで」


その言葉に、

こらえていた涙が、とうとう溢れてしまいました。



その夜、私はなかなか寝つけませんでした。

不安、期待、恐怖、そして未知。

さまざまな感情が、胸の中をぐるぐると巡ります。


お昼前には出発する予定なので、

朝になったら、早く荷物の確認をしなければなりません。


本当は……もう少しだけ、


この大好きな村で、ゆっくり過ごしたかった。



でも、それは叶いません。

私の体質は、年齢とともに変化していくからです。


母の話では、

十六歳を過ぎる頃から、

私の魔力は外へと溢れやすくなり、

その魔力に引き寄せられるように、モンスターが集まってきてしまう


――そんな性質が、強くなるのだそうです。


今はまだ、近づきさえしなければ気づかれません。


けれど、このまま何も知らずに成長すれば、


いずれ、取り返しのつかないことになるかもしれない。


だから私は、制御を学ばなければならないのです。



翌朝。

「ミル、起きてるかい?」

「おば様! おはようございます!」

「ほら、お昼用にサンドイッチをたくさん作ったよ。

森の中で食べなさい」

「うわぁ……ありがとうございます。とても美味しそうです」

「あの森は広いけど、豊かでね。

小型のモンスターはいても、奥へ行かなければ危険は少ない。ミルなら、大丈夫さ」


「はい。立派になって、帰ってきます。

だから……いつまでも、お元気でいてください」


結局、また泣いてしまいました。


昨夜、あれだけ盛大なお別れ会をしたのに、

村の出口には、また皆さんが集まってくださっていて。

一度は止まったはずの涙が、

次から次へと溢れてきます。

「では!

皆さん!

行って参ります!!!」





森に入ってから、どれくらい時間が経ったのでしょうか。


慎重になりすぎて、

あまり進めていない気がします。


モンスターのテイム方法について、

私はまだ、詳しく知りません。


母が言っていたのは、

一般的な方法とは、かなり違う――ということだけ。


それも、母と私の体質が原因だそうです。


それにしても、

この森は本当に美しい。


母と何度か通り抜けたことがありますが、

様々な木々や花々が、豊かに実っています。


モンスターよりも、小動物の方が多く、

少し歩くだけで、その生態系を見ることができました。


そういえば、朝ごはんを食べていません。

お腹が、ぐーっと鳴ってしまって、

誰かに聞かれたわけでもないのに、

少し恥ずかしくなりました。


もう少し進めば、小さな湖があります。

そこで、お昼ご飯にしましょう。


湖のほとりで、私は周囲を入念に確認しました。


うさぎや鹿が、水を飲みに来ています。

他に、危険な気配はありません。


普通なら、人間が近づけば逃げるはずなのに、

なぜか、私のそばへ寄ってきます。


――これも、母と同じ。

遺伝のひとつなのでしょう。


うさぎの頭を撫でながら、

私はお昼ご飯の準備をしました。


風が吹き抜け、

木々や草花が揺れて、

まるで歌っているようです。

サンドイッチを頬張りながら、

鳥のさえずりに耳を澄ませます。


なんて、のんびりとした時間なのでしょう。

うさぎは、いつの間にか

私の膝の上で眠っていました。


緊張と疲れが、

少しずつ、和らいでいくのを感じます。


そろそろ出発しようと、片付けを始めた時。


木の根元が、


淡く光っているのが目に入りました。



「……?」



動物たちが警戒している様子はありません。


危険なものではなさそうです。


少し怖いけれど、

どうしても気になって、

私は近づいてみました。



「これは……スライム……?」


図鑑で見たものとは、少し違います。

キラキラと光る核を持ち、

とても弱っている様子でした。


どうしましょう。


――でも。


なぜだか、助けなければならない気がしたのです。


「スライムさん……

怪我をしているんですか?

それとも、お腹が減っているんですか?」


返事をするように、

スライムはぷるぷると震えました。


よく見ると、

中心にあるのは、魔核のようです。


「……もしかして、魔力が欲しいのですか?」


その瞬間。


私の胸の奥で、


魔力が、そっと応えるように脈打ちました。


――それが、新人テイマー・ミルティナと、

小さな相棒との出会いだったのです。

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