メイドは王子と結婚するぞぉ
「マリーシア結婚しよう」
メイドのマリーシアは困惑した。この国の第三王子のエデンが求婚してきたのだ。
エデンは妾の子であるが長男と次男が王に相応しくないと言う理由で次期国王筆頭の男だ。
となればマリーシアはいずれ王妃になるがコネで王宮のメイドになった平民の村娘である彼女には荷が重い話であった。
「はーいお薬出しておきますね」
「余は本気だぞ」
マリーシアはまだまだ残っている仕事があるため馬鹿王子の戯れ言に付き合っている暇は無い。王宮のメイドはマリーシア以外は全員貴族令嬢である。ただでさえ身分マウントを取られるのに業務の面での嫌味まで言われては堪らない。
「エイプリルフールはまだ先ですよ」
「冗談でこんな事を言う男に見えるのか?余は」
見えなくは無いんだよなぁ····と思いつつも付き合いきれないため部屋を出ようとしたがエデンに後ろから抱き締められる。
「殿下····お止めください····!」
「余の中の眠れるライオンを目覚めさせたのが悪い····覚悟しろよマリーシア」
二人は熱い夜を過ごし翌朝部屋に入ってきた護衛騎士に見つかるのであった。
こうなってしまったら後はあっという間だ、エデンは父である国王に大目玉を食らったが現状の後継者が彼しかおらず種をメイドに宿してしまったのであればメイドを次の国母とするしか国王には選択肢がなかった。
マリーシアをイビっていた貴族令嬢の元同僚達は全員クビになった。正確には平民なんかに仕えたくないと言う理由で全員辞表を出したがマリーシアは今までの恨みを晴らすため給仕長に頼み(圧力をかけ)解雇扱いにした。王宮をクビになった彼女達の貰い手はいないだろう。
「良い気味」
長年の恨みを晴らせたマリーシアはとても喜んだが残念ながら悪い報せが入る。妃としての教育を受けるべくエデンの通っている王立学園大学付属高校への編入が決まった。
実際は皆分かっている、間に合わないのだ。令嬢達の幼い頃からの淑女教育がまずベースにあるため付け焼き刃すら名刀になるレベルで村娘のマリーシアは令嬢としては無なのだ。
「平民風情が何で神聖なる学園に····」
「ラーナイン様お可哀想····平民なんかに殿下を奪われるなんて····」
当然ながら陰湿な令嬢達による陰口大会のオンパレードだ。彼女達の大ボスのラーナインは第二の王家である公爵家の令嬢だ。普通に考えればエデンと結婚するのは家格的に彼女だと思われていたがそうはならなかった。
ラーナインはマリーシアの事など一切目にもくれない、視界に入れないと言うより無····存在を認知していないかのようだ。手下の令嬢達の陰口にもそのような者は学園におりませんわよの一点張りだ。
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何月かが経過し外遊から帰ったエデンにこれまでの事を報告した。
「王家の権力でアイツら全員不敬罪で処刑にしてよ!」
「マリーシアよ、余は全裸か?違うな服を着ている。人前で裸になってはいけないと言う理性が働いているのだ、アイツがムカつくから殺すでは野獣と同じだ。」
変なウンチクを垂れるエデンにマリーシアは顔をしかめる。
「そう言うの良いから····なんとかなさいな」
「膿は早い内に出さねばな、明日の学期末パーティーを楽しみにしておけ」
そう言う放ちマリーシアの叩けば折れてしまいそうな華奢な身体を抱き締め布団に入ったのであった。
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「王太子殿下ご入来!」
オーケストラのサウンドを背景にドレスに身を包んだマリーシアをエスコートしたエデンが入場する。髪をオールバックにしてはいるがあどけない顔が隠しきれてない。
「平民風情がぁ····!」
「馬子にも衣装かしら?まぁ?ドレスに着られてましてよ?」
ハンカチを噛みちぎりそうな顔で令嬢達がマリーシアを睨み付ける。
ラーナインに関しては顔を極東の般若のように歪めている。
「ちょっと!早くクソ女共断罪してよ!」
「しーっ、まずは君の美しさを皆に知らしめるのが先だ」
何故に薬指?と思いつつもエデンと共にパーティーに参加している生徒達に挨拶廻りをしていくマリーシア。
まず男子生徒のみが在籍する騎士科の令息達に、次に平民も在籍する経営科の生徒達に挨拶を挨拶に行った。概ね反応は良好で特に平民の生徒達は自分の事のように喜んでくれた。
「フンッ高貴なる学園に蛆虫はいりませんわ」
「全くですわ!平民など学園に不要です!」
ラーナインは会場中に聞こえるように平民の生徒達を侮辱し配下の令嬢達も同調する。
エデンは表情は変えずに、しかし目に怒りを滾らせラーナインを筆頭とした淑女科の元へと足を運ばせる。
「取り消せ!」
「平民など数でしかありませんわ、家畜と同じです」
ラーナインはそう言いながらエデンの後ろに怯えながら隠れるマリーシアを蔑んだ目で睨む。配下の令嬢達もクスクスと笑い同調する。
「酷い····ラーナイン様は私達の事をそんな風に見ていたのですね」
「平民が口を開くなぁ!」
「余のワインに唾を跳ばすなよ!」
ワイングラスに注いだ極東の緑茶を飲み干したエデンはマリーシアの手を引きステージ上に上がり高らかに声をあげる。
「余の夢は美味い寿司を皆で食べる事だ!身分も貧富の差も関係無い!余とマリーシアの結婚は夢の実現の第一歩となる!」
「生魚嫌いなんだけど····」
何を言ってるかはよく分からなかったが勢いに押され会場の生徒達は歓声をあげる。それは新しい時代が到来したかのような雰囲気であった。ラーナインは珍獣を見るような目でエデンを見据えている。
「やはり殿下はマトモではございません。王位継承権を手放しなさい、公爵家は貴方と心中する気はございませんわ」
「構わぬが余が王位を降りればうつけの第一王子と身体が弱い第二王子が王になる事になるぞ?」
「気違いが王になるよりマシですわ、最悪は公爵家が実権を握る覚悟ですわ」
「そうか····」
「今回の件は公爵家当主、ひいては陛下にも報告させて頂きますわ。それでは皆さん楽しいパーティーを楽しんでくださいまし」
その後ラーナイン一派は会場を後にし気まずい雰囲気のままパーティーは再開された。
「どーすんの?結局私また嫌味言われるじゃん」
「寿司はサビ抜きで頼む」
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夏休みのバカンスから帰った二人はこんがりと日焼けしていた。
新学期に学園に登校したマリーシアは自分以外の淑女科の生徒が誰もいない事に気付く。
まずラーナインであるが自主退学したようだ。王家の忠臣である公爵がパーティーで発言した娘の王家を転覆させようとする発言を許せなかったのか山奥の厳格な修道院に送ったようだ。恐らく二度と戻って来れないだろう。配下の令嬢達も公爵家に忖度した親達により自主退学し年配の独身貴族達に嫁がされたそうだ。
他の令嬢達の教育リソースをマリーシアに注ぎ込めるようになり卒業までにはなんやかんやで令嬢としては恥ずかしくないくらいには仕上げられる算段となった。
「うむ!一件落着であるな!」
「お前何もやってねーだろ····」
その後、エデンは国王に即位しマリーシアは王妃となった。なんやかんやで善政を施し平和な国を築いて行ったのであった。
おしまい
·第一王子と第二王子はどうなったの?→王位争いに敗れた王族の末路はわかるね?
·マリーシア性格悪くね?→善玉作品のヒロインはこれがデフォなんだが?
·エデンは日本マニア→はい。日本かぶれです。将棋好き。チェスで相手の駒を自分の駒として使ってますが周りは忖度して見ない振りしてます。好きな寿司はチーズハンバーグ寿司です。




