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魔王の姉、はじめました。 ──〈魔王がポンコツだから私がやる。〉Re:Novel Edition  作者: さくらんぼん
第05章 : 【カエデ】ど天然ポンコツ勇者カエデ流浪編
20/27

#楓004:石と会話してるヤベーやつを観察してたら、勇者だった。(道行くゴブリンA談)

 こんにちは! カエデです!


 突然ですが! 今! 大大大大大ピンチです!

 略してカエデ Five ピンチ!


 え? いつもピンチじゃないかって?

 そうなんです! 助けてください!


 冷や汗が背中を伝います。

 周りを見回すと、薄暗い森の中、木々の間から不気味な目が光っているのが見えます。


 普段から運が悪いのは分かっていますが、今回は特別です。

 えっと! 実は今ですね?


 ……いち、に、さん、し、ご……!!

 

 なんと!


 5匹のゴブリンに囲まれてるんですッ!!

 ゴブリンたちは獰猛な目つきで私を見つめ、その口からは鋭い牙がのぞいています。


 手には粗末な武器を持ち、私に向けられています。

 ……どうしよう……KDP(カエデ大ピンチ)です!


「こんなモンスターやっちまえよ! カエデ!」

 友達のウィルソンがやたら強気ですが、こんなの勝てるわけがない!


「無理だよ! ウィルソン! ここは逃げようよ?」


 ……?……あッ! そうか! 皆さんは知らないですよね。


 紹介しますね。この子はウィルソン。


 ──その辺に落ちてた良い形の石です。


 1人はとても寂しくて……どうしても…友達が欲しかったんだ……

 ね? ウィルソン。


 ……あは。

 

 ……あれ……おかしいな……口から水が……


 お腹減ったなぁ…おまんじゅう……食べたいなぁ……

 私は手のひらの良い形の石を見つめました。


 ウィルソンは私が泣いてる時……優しくしてくれた。

 ウィルソンは野宿する時も一緒に寝てくれた。

 ウィルソンと見た星空はとてもキレイだった。

 ウィルソンはいつもいつも! 一緒に居てくれた!


 ……そんな、大切な大切な友達のウィルソン。


 大好きだよ?


 「……ねえウィルソン?これからもずっと──

  一緒に居てね?」


 *


「ゴブッ!? ゴブゴブ!」


 何か喋ってる。まったく意味不明。

 でも、あの顔……完全に私に好意を持ってる……。

(※天の声:『あいつ石と会話してた……怖い……』)


「ゴーゴブゴブゥ……」


 声震えてるし。あれ絶対、私を好きだよ……。

(※天の声:『関わるな。あれはやばい。今も絶対勘違いしてる……』)


「ゴブ…ゴブゴ……」


 私の胸を指差して何か言ってる……。

(※天の声:『逃げるぞ……命は一つだ……!』)


 ……そんなに私が魅力的!?



「くらえッ! そんな愛と友情のウィルソン☆アタック!!」

 私はウィルソンをゴブリンに投げつけてダッシュで逃げました。


 ──どうやらゴブリン達から逃げる事が出来たようです。


(※天の声:あいつら、戦意喪失してたからな。)


 *


 国外追放され、「着の身木の実ナナ」

 あ、違った。「着の身着のまま」放り出された私。

 ついつい韻を踏んでしまいました。てへぺろ


 服は汚れ、髪は乱れ、空腹で疲れ切っています。

 それでも今の私は生き抜くしかないのです。


 親友のサクラならきっとこう言います。


 ──『元気がない時は、大声で"ぬん!!"って叫んでみ? みんなこっち見るから』──


 懐かしい友人の名前を思い出し、大きな胸が締め付けられるような感覚に襲われます。


 目を閉じ、深呼吸をして気持ちを落ち着かせます。

 私は決意しました。


「ぬん!!」


「ゴブ!?」

 (※天の声訳:『何だ今の音!?』)


 さっきとは違うゴブリンが3匹走ってきた。私は2倍速で逃げた。

 足つったけど根性で誤魔化した!

 ウィルソンは落とした! どっかいった! まぁいいや。


 *


 ──1時間後。私はまだ全力疾走してた。


「ふ、振り切ったかな……はぁはぁ……」

 後ろを振り返る。どうやら逃げ切れたみたい!

 

 ふぅ。まずは……人の居るところに行かないとね!


「街とか村とか無いのかなぁ……」


 私は街道をひたすら歩く。

 足取りは重く、疲労が全身に染み渡っています。

 肩も凝ったなぁ。


 それでも、一歩一歩前に進みます。

 道端の草花や木々も食べられるかもしれないし!

 よーく見ないとねッ!!


「お! 良い形の石みっけ♪」


 私は良い形の石を拾い、微笑みました。


「こんにちは! ウィルソン2世」


 その後、大きめのリスのモンスターに襲われました。

 私は大きなダンゴムシがたくさん出てくる映画で得た知識──


「大丈夫。怯えていただけなんだよね」


 をやってみようと、指を近づけたら噛みちぎられそうな勢いだったので、

 親友のウィルソン2世を投げつけて逃げました。

 

 逃げてる時に他のウィルソン達をボトボト落としました。

 まぁいい。その辺に落ちてる。ただの石だし。


 カエデのスキル:【ウィルソンを投げつける】のレベルが上がりました。


「わわッ! なんか聞こえた! ビックリしたッ!」


 *


「ねぇウィルソン。私、大丈夫かな? これからどうなるんだろう……」


 そう呟きながら、私は良い形の石をぎゅっと握りしめた。

 

 ウィルソンは何も答えない。

 でも、その沈黙だけが……今の私にはやさしかった。



(つづく)



 ◇◇◇


====================

★勇者・カエデの現在のステータス

  ・名前:カエデ

  ・種族:人間

  ・レベル:1

  ・スキル:ウィルソンを投げつける (レベル2)

※ウィルソンと喋れる効果は無い。

   なんか石と会話始めたし…マジで引いてる(天の声)

  ・称号:勇者

       → 成長補正[極]

       → エクストラスキル解放

  ・エクストラスキル:

      光魔法解放(勇者専用)

====================


 ◇◇◇



──【今週のサクラ語録】──


「元気がない時は、大声で"ぬん!!"って叫んでみ? みんなこっち見るから」


解説:

意味はない。けど注目される。

注目されたら、「今、生きてる」ってちょっとだけ思える。

だから"ぬん"は、生存確認用の叫び。

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