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魔王の姉、はじめました。 ──〈魔王がポンコツだから私がやる。〉Re:Novel Edition  作者: さくらんぼん
第04章:【サクラ】ポンコツ魔王軍(2名・Lv1)結成!
16/27

#桜010:マッスル量子力学概論(必修2単位)

 突然、私は両腕の筋肉をムキッとアピール!


「ち、違うのよ!! これは筋肉なの!!!」


 腕をぐるぐる回しながら力こぶを作って!


(何言えば止まる!? 何!?)


「筋肉が光っただけなのよ!!」


 深呼吸ひとつ、胸を張る。周囲の反応をチラ見。


「鍛えすぎて筋肉が光るようになっちゃって!!」


(どんなセリフなら魔王の殺意止まるの!?!?!?)


 さらに必死にポーズを決めて!


「ほら! ピカピカでしょ!?」


 小首をかしげ、涙目で必死に笑顔を作る。


「勇者の魔法じゃなくて筋肉の輝きよ!!」


 涙目で、でも必死に胸を張って!


「量子筋肉学の第一人者、マッチョ・シュレディンガー教授の理論よ!!」


 手で空気をつかむ仕草、急に学者っぽいフリをし、指を一本立てる!


「だから光として現象化するのよ!!

 筋肉の分子レベルでは "量子もつれ" が起きてるの!!」


 半泣きキリッ。


 エストは浮遊しながら冷静に問いかける。


 覚醒人格の眉の一つが上がる。


『……量子? 筋肉……光るの……?』


「そう! 筋肉は究極的に鍛えると、

 素粒子レベルで量子もつれが発生して光の粒子を生むのよ!!」


 言い切ってドヤ顔。だが手は震えている。震えよ止まれ!


『……は?』


 覚醒人格の声が小さくなる。


「量子筋肉よ!

 マッスルの素粒子が『確率的に』光の粒子と同じ挙動を示す現象なの!!」


 私は半泣きで筋肉をアピールし続ける。


『……えっと……マッスルの素粒子?』


「筋肉が発達すると粒子レベルで重力が変わり、

 ミクロの世界でエネルギー保存則が破れて筋肉から直接光が出るの!」


 言いながら手で光の軌跡を描く。熱量は本物だ。


『筋肉から光が出たら人体発火してるよね……?』


 覚醒人格の眉間にシワ。


「いいえ違います! 人体発火じゃなくてマッスル発光です!」


 胸を張って言い切るが、膝が震えだした。


『意味同じじゃない……?』


「違うの!

 この筋肉量子論はマッチョ・シュレディンガー教授が提唱した最新理論よ!!」


『さっきから誰だよその筋肉教授!?』


「マッスール大学の名誉教授よ!」


 声が上ずった。


『名誉……?』


 軽く首をかしげた。まずい! 疑っている!


「私は分かってる! 分かってるけど分からないのよ!」


 私は半泣きでキリッと筋肉をアピールする。


『それ分かってないよね!?』


「分かるもん!

 筋肉は確率なの! 確率的に量子的に光るのよ!!」


『いや絶対に筋肉と量子力学は関係ないと思うよ……?』


「あるのよ!

 量子力学的に筋肉はエネルギーと物質を超えるの!」


 拳を天に突き上げた。


『絶対超えないよ!? 筋肉は物理法則超えないよ!?』


 私は更に筋肉を強調してエストを説得する。


「筋肉の分子レベルで量子もつれが起きているんだってば!!」


『さっきから量子もつれって何!?』


「筋肉は波動性と粒子性を両方持ってるの!」


「普段は粒子として存在してるけど、極限まで鍛えると波動になるの!」


「その波動が光として現れるのよ!」


『波動って何の波動……?』


「それにね、量子力学では『観測者効果』っていうのがあるの!」


「つまり、私が筋肉を見つめることで筋肉の状態が変わるのよ!」


『それも筋肉関係ないよね……?』


「あるのよ!

 マッスルの素粒子が互いに強く絡み合って、

 確率的に光と同じ現象を引き起こしてるのよ!!」


『いや絡んじゃダメでしょ粒子は!』


「筋肉の可能性を侮らないで!!!」


 嗚咽。


 その瞬間、エストの魔力が不自然なほど急激に収束した。


 ……ピタッ。


 全ての音が止まった。


 時間が一拍遅れて戻るような沈黙が流れる。


『……敵意評価──中断』


『対象主張:筋肉量子論。学術的根拠──検索不能』


『識別結果──対象分類:≠ 勇者 → 完全に脳まで筋肉バカ』


「完全にって何よ! 完全にって!!」


(……いやまぁ……良かったけど……)


 プシュウウウウウウウウウ!!!!!


 蒸気漏れ音とエラー音。


 魔紋がバグって解除され、エストがストンと落下してくる。


「ふにゃっ!?」


 私は慌てて受け止める。


「わたし……今なにして…?」


 魔紋が消え去ったあともエストの周囲の空間が微かに震え、魔力が漏れ出していた。


(……やっぱり魔王か。魔力だけはガチだよな……)


 ここからは、第二ラウンド。エスト本人の誤魔化しだ。


(……逆ギレしろ。勢いで乗り切れ)


 ムダ様の声が脳内に響く。


(バレそうになったら、怒れ。話を逸らせ。舌で黙らせるか、拳で叩き潰せ)


 あの伝説の、理不尽の申し子。


 圧と強さでねじ伏せてきた男が、今ここに私を導いている。


 私は静かにエストを見下ろした。


「ねぇ、エスト様」


「えっ、なに……?」


「さっきの言葉──もう一回言ってみて?」


「え……えっと……ライトアローって……勇者しか──」


「それだよ!!!」


 ドン!!


 私は地面を踏み鳴らした。地響きが走る。


 エストがビクゥッ!!と肩を震わせた。


「私、あんたのために蛇を退治したよね?

 レアモンだったんだよ? 10年に1匹しか出ないんだよ?」


「え! う、うん……!」


「こっちは命懸けで守ったわけ!

 お姉ちゃんだよ? お姉ちゃん!」


 一呼吸置いて、胸に手を当てる。


「命懸け。わかる?

 命! 懸けてる。今ここに」


「筋肉張って守ったのに"勇者しか使えないよね?"

 とか言っちゃう!? 査問!? 詰問!?」


「ち、違くて! 違くて! すごいなって思って!」


 慌てるエスト。よし、効いてる効いてる。


「そうでしょ!? すごかったでしょ!?

 じゃあさ、素直に言えばよくない!?

 "お姉ちゃんの筋肉カッコいい!" って!!」


「お姉ちゃんの筋肉カッコいいです!!

 ほ! ほんとに! ほんとにすごいです!!!

 ……あれ?筋肉?」


「よ、よろしい………………………?」


「……でもお姉ちゃん……量子もつれって何……?」


「えっ? あ、えーっと…」


 ちょっと待って。量子もつれって何だっけ?


「と、とにかく! 筋肉って光るのよ!!」


「でも光ってないよ……?」


 ムキムキ〜!


「………今はもつれてないみたいだし!

 しつこいとエスト様のクビをもつれさせるよ?」


「ひぃい!?」


(……助かった……ありがとうムダ様。マジで神。一生憑いていきます)


『逆ギレは聖なる怒り。バレそうになったら、圧で封殺せよ』


(でも、ただの蛇じゃなかったんだな……

 危なかったのかも? まぁ守れて良かった?)


 私は一瞬、自分の筋肉を見つめながら、ふと思った。


(レベル上がったけど、まあ、それはオマケってことで)


(……てか、量子もつれって本当に何だろう?)


 ◇


 ステータスウィンドウをもう一度開いてみる。


──ぺぺぺぺったん♪

【ステータスが更新されました】

================

【サクラのステータス】

レベル:130(※ほとんど妹を倒して稼ぎました)

称号:ぺったん鬼女【呪い】(※布地が余るタイプ。全ステータス -20%)

成長補正:【極】

スキル:

・怪力(Lv130)

・暴食(Lv10)

・ライトアロー(Lv1)※勇者専用。※バレたら死ぬ。※でも量子筋肉のせい。

================


「……」


 やっぱり勇者だった。

 そしてどうやら私のレベル上げは順調そうだ。


 このレベルが外でどれくらい通じるのか?

 もしかしたら人間の軍隊くらいなら一網打尽にできるかもしれない。


 とにかく! こうして、前代未聞の魔王と勇者のパーティーが誕生したのである。


「勇者の天敵の魔王の姉が勇者」ってなんだそれ……バグか?


 世界観の方がバグってるのか、私の人生がバグなのか。


 ……いや、筋肉がバグだな。


(……てか、これ……

 ずっと量子筋肉のせいにしてたらバレない……よね?)



(つづく)



 ◇◇◇



──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『バレそうになったら、怒れ。話を逸らせ。舌で黙らせるか、拳で叩き潰せ。』


解説:

考えるな。まず叩け。事情は後から作れ。

沈黙は金。しかし、沈黙を守るためのパンチは白金。

ガラスの顎は宝。一度見つけたら大切に使え。

量子筋肉の嘘は最強。誰も反論できない。

でも使う本人もよくわかってない。作者も文系だし。

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