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魔王の姉、はじめました。 ──〈魔王がポンコツだから私がやる。〉Re:Novel Edition  作者: さくらんぼん
第04章:【サクラ】ポンコツ魔王軍(2名・Lv1)結成!
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#桜009: 靴紐を結べ 文明人は待つ

 焼き肉でお腹が満たされたので、私はエストに質問してみた。


「ちなみにエスト様? 勇者が現れたら、どうします?」


「ちょっと待ってね……アゴの調子が……」


 ポキポキ、開閉運動。


(なにこの面白可愛い生き物……)


「お待たせ! 勇者だよね!?

 勇者には全魔力を使うけどアルティメットスキルで地獄にバカンス送りだよぉ」


 ──にぱっ。


 アゴ、外れる。


「あごごごごご……」


(なにこの面白可愛い生き物……)


 同時に私の背筋に戦慄が走った。


「……なるほど。大変参考になりました」


(ヒィィ……)


(アルティメットスキル? ……そんなのあるの?)


「ステータスを見せてもらってもいい?」


「いいよ! ステータスオープンッ」


──ぴろぴろぴろ〜ん☆ ポンコッツ♪


 ステータス画面展開音が鳴り響く。


 静寂とともに遠くからモンスターの「アホー」という声が聞こえた気がした。


「この効果音、変だよね? 私、ポンコツじゃないし」


 エストは確信を持って言った。


「ううん、ポンコツだし。」


 私も確信を持って答えた。


「……え、今"ポンコツ"って言った?」


「……」


「……」


 遠くからモンスターの笑い声が聞こえた気がする。



 私はマジマジとエストのステータス画面を見た。


==========

【エスト・ラピス・ネフィル】

魔王/レベル2

HP:68

 ※怒られると3減る

MP:∞(制御不能)

 ※空間が勝手にねじれる。本人は気づいてない

筋力:5

 ※ペットボトル開けられない

知力:8(バカ)

 ※会話のテンポはいいが、話の内容は全部まちがってる

精神:1(豆腐)

 ※お姉ちゃんに怒られると泣く。でも反省・学習しない

スキル:

・天与の魔力(持ってるだけで迷惑)

  ※魔力だけ最強

・奈落穿つ咎の瞳(勇者にだけ超特攻)

  ※全魔力を消費し、勇者を魔界に封じ込める事が出来る

  ※正式名はダサくないもん!と言い張っている

・その他、性格:純真・単純・バカ

  ※本人は「天才」だと思ってる

==========


「ふふん☆ すごいでしょ!」


(……ポンコツじゃん……でも、勇者バレ即死トリガー付き……)


 その時だった。


 エストの足元に、するりと蛇が現れた。


「危な──ライトアローッ!!」


 シャパッ!


 光の矢で蛇を一刀両断。


『レアモンスター《殺意のコブラたん》を討伐』


──ぺったん ぺったん ずんどこどーん♪


【サクラのレベルが130に上がりました】


「はああ!? 今の蛇、レアだったの!?」


『天の声:今のは殺意のコブラたんだ。眠くなるという猛毒持ち。10年に一度しか出ない』


「レアなのに毒の効果弱ッッ!!!」


「……?」

 その瞬間、エストの顔色が変わった。


 エスとが私のことを見つめる。


「あれ……お姉ちゃん!? 今の、ライトアロー!?」


「えっ? うん。……え?」


「えええっ!? それって勇者しか使えない魔法じゃなかったっけ!?」


 私の胃がキュッと鳴った。


「……は???」


「光魔法って、勇者専用だよ!? だから私びっくりしちゃって!」


 キュルルルルル!!と、私の胃が暴れ出す。


「えっ……マジで……?」


 そして──


 キィィィィィン……!


 金属音と共に、頭が真っ白になる音がした。


(あ、これ詰んだやつだわ。胃だけは正直)


(光魔法=勇者専用……?)


(知らんかったわーーーーーーッ!?)


(落ち着け! 今知ったならセーフ!)


(知らんからセーフ! はい無罪ィィッ!!)


 ──その時。


 ズギィィィィィィィン!!!!!


 ♪BGM:深淵の序曲(咎の瞳・起動テーマ)

 重厚なオーケストラ×パイプオルガン×滅亡系コーラス。


 突然、エストが宙にふわりと浮かぶ。

 地面に魔紋が浮かび、空気がバキバキに歪む。


 ズゴゴゴゴゴ……!!!


『【奈落穿つ咎の瞳】──起動』


「エスト様の声じゃない? 別人格!? なんだこれ!?」


『……ん。』

 エスト(別人格)が少し首を傾げた。


「……?」


『いえ。やっぱり【プリティー☆エリミネーション】──起動』


「名前かわいくした!? コンプレックスなの!?」


『……………』


(あ……図星だったんだ……ごめん……)


 そして──魔力が収束をはじめた。

 シュイン! シュイン! シュイィィィィン!!


『対象:勇者反応。敵意評価──開始』

 エストが無表情で喋る。怖すぎる。


「ちょっ、待て、待て待て待て!? 初耳なんだけど!? 光魔法って勇者専用なの!?!?」


『対象:勇者反応、確認完了』


(いや、知らなかったし!? 誰も教えてくんなかったし!?!?)


『撃滅プロトコル──最終段階へ移行』


「ていうか私、勇者なの!? 違うよね!? 鬼だし!!! 違うと思うよ!?!?!??」


(あ……これ言い訳全部通じないやつだ)


『──ビーム、チャージ完了』


 地割れが走り、空間が軋む。


(ビーム!? だめだ、マジで撃たれる……!)


 一瞬、時が止まった気がした。


 心臓が嫌なほど早く打っている。


(……これ、本当に殺されるやつじゃない?)


 目の前のエストがいつものエストじゃなく、何かとんでもないものに見えた。


 "今、死ぬかも"というリアルな予感が脳裏をかすめる。


(落ち着け……落ち着け……!)


(今言えることを、全部ぅー!!!)


 その時、ムダ様の言葉が頭をよぎった。


『ピンチ? しゃがめ。靴紐を結べ。待つのが礼儀だ。だから時間が稼げる』


(……靴紐!?)


(……いや待って、今靴履いてないけど!?)


(……でも、やるしかない!!)


 私はしゃがみ込んだ。


「あ、ちょっと待って! 靴紐ほどけてる!」


 靴履いてないけど。


『撃滅プロトコル──一時停止』


(え!?)


 エストは空中で静止。律儀に待っている。


『……靴紐結び直すのは礼儀。待機する』


「マジで待つの!? ムダ様、神かよ!?」


 私は存在しない靴紐を結ぶフリを始めた。


「あー、固く結びすぎちゃったなぁ……ほどくの時間かかるなぁ……」


 棒読み。


『……………』


 エストは無言で浮遊している。


「あ、こっちもほどけてる! 両方結ばないと!」


『……………』


「うーん、難しいなぁ、蝶々結びって……」


 沈黙。


『……対象、靴を履いていない』


「えッ!?」


『観測完了。裸足である』


「観測するな!!」


『撃滅プロトコル──再起動』


「待って待って!! 今のナシ!!」


 突然、私は両腕の筋肉をムキッとアピール!


「ち、違うのよ!!!」


 あたふたあたふた。


「これは筋肉なの!!!」


 沈黙。


『は?』



(つづく)



 ◇◇◇


──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『ピンチ? しゃがめ。靴紐を結べ。待つのが礼儀だ。だから時間が稼げる。』


解説:

ピンチの正体は焦りだ。

焦るから心臓が勝手にドラムを刻む。

だからしゃがめ。リズムを止めろ。

「靴紐がほどけてる」と言えば、どんな悪党でも立ち止まる。

礼儀だから。


相手は攻撃できない。なぜなら文明人だから。

しゃがんだ者を殴る? 教育がない。

人間の尊厳はしゃがみに宿る。

「靴紐を結んでる」それは人類最後の合法的タイムストップだ。


ちなみに俺は待たない。相手が無防備でしゃがんでる?

チャンスだろ。そんなの。全力で行く。良い天気だな。

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