無自覚の無防備
「……たいよう、ごめんね…」
「別いーって、元々濡れてたし」
光の手が俺の背中から離れ、落ちたタオルを拾う。俺は脱衣所に行き、濡れて気持ち悪い服を脱ぐ。制服じゃなかったのが不幸中の幸いだと思いながら髪を拭く。洗濯機の中から乾燥が終わった下着を適当に取り出し着る。男同士だからいいだろうと思い、上下下着のまま光の元に追加のタオルを持っていく。
「光、これタオル。ある程度拭けたら教えて」
「………………あ、りがとう」
「…なんか大丈夫?」
「……いや、なんでもない」
少し間があったが、受け取ってくれたので大丈夫だろう。部屋に行き、寝巻きに着替える。光に着させる服をタンスの中から取り出す。俺と同じぐらいのサイズでいいだろう。お気に入りのTシャツとジャージを手に取り、玄関に向かう。光は律儀に玄関でタオルを畳んでいた。
「拭き終わったら着いてきて」
玄関に脱衣所が近くて良かった、とこれ程思ったことはない。水をたっぷりと含んだタオルを受け取り、洗濯機の中を確認した後、放り込む。着替えを手渡す。
「じゃあ俺外出とくから、脱いだやつは洗濯機入れといて」
「うん、ありがとう」
流石に友達とはいえ着替える所までは見られたく無いだろう。脱衣所の扉が閉まったのを確認して、リビングにドライヤーをかけにいく。髪が短いとこういう時楽だよなぁと思いながらソファに座り、適当に乾かす。
光がリビングにやってくる。どうせなら光の髪の毛も一緒に乾かしてやろう。
「服、ありがとう。サイズちょうど良かった」
「ここ座れよ」
俺の足元を指差しながら言うと、こちらまで歩いてきてちょこんと光が座る。人の髪の毛を乾かすのはめんどくさがりの姉で慣れているので、温風と冷風をうまく使い分けながら乾かしていく。光の髪の毛はサラサラで手触りがよく、つい乾かしている間に触ってしまうぐらい触り心地が良い。
ある程度乾かし終わったらドライヤーを止め、光に声をかける。
「よし、完了!」
「…ありがとう、太陽」
光が俺の顔を見上げてくる。光の上目遣いを見る機会はほとんどないので珍しい。光の首元を触る。ドライヤーの風で暖まってはいるがすぐに冷たくなってしまうだろう。温かいお茶でも飲んで暖を取らせよう。
「お湯沸かしてくるわ、その辺でくつろいでて」
「…わかった」
キッチンに向かう途中、横目で光の方を見ると緊張しているようで、ぎくしゃくしていたので、部屋にあるクッションを投げつけておいた。うわっという声は聞こえないふりをしながらやかんに水を入れる。元栓を開けて火をつける。きゅうすを用意して茶葉を入れる。正直分量は適当だ。客人に飲ませるものとしては不合格だが、まぁいいだろう。ある程度終わったらお菓子を持ってリビングに戻る。光が棚の上に置いてあった写真を見ていて、多少はリラックスできているようで安心した。
「ほらお菓子、食え」
「たいよう、この写真ってさ」
そう言いながら俺の前に持ってきた写真は、にーちゃんの就職祝いの時に取った記念写真。三人で自撮りしたからぎゅうぎゅう詰めになっている写真。あの時のねーちゃんはいつもよりもメイクが薄かったのが記憶に残っている。
「それ、俺のにーちゃんとねーちゃん。あんま似てないんだよな」
「…………そっか、あの、たいよう」
お菓子を机の上に置いてソファの上に二人で座る。光がこちらの様子を伺いながら何かを言おうとしている。いや、言おうとしていることは分かっている。光が口を開く前に、俺から話し始める。
「俺ん家、親いないんだよね」




