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正直逃げても良い気はする

公園に着いた後、石田、俺、光という謎の順番でベンチに座る。曇り空に風が涼しくて、空を見上げると大きな雲がいつもより少し速いスピードで流れている。右を見るも、詐欺師のような顔面な石田がいて、左を見ると先程、席配置の際にじゃんけんで負けて機嫌が悪くなった光がいる。四面楚歌とはこういう状況のことを言うのだろう。

「林田はさぁ、光とはどういう関係なの?」

「太陽、答えなくていいよ」

「仲良い友達」

「道野はどう思ってんの?」

「黙れ」

「ひかる…」

石田は二人をずっと観察していた。手を唇の下に当てて、じっくりと見つめる。道野が、あの道野が、林田と話している時に時折見せる穏やかな表情。酷く納得がいく。

なるほど、そういうことか。道野は多分、林田が好きで、林田は友達として道野が好き。……一般的な男子高校生の仲良しとはちょっと違う気もするが、それは後々分かるだろう。面白いものを見つけてラッキーだ。

こっそりと笑みを溢す石田に、二人は気づかない。

「それでさ!連絡先交換しない?」

「死ぬ程嫌」

「別いいけど」

「太陽、俺とだけ交換しよう」

そう言いながら光が俺の顔を覗き込むように見つめてくる。焦茶色の瞳に見つめられるとどうでも良くなりそうで顔が見れない。

「うーん、もう三人でグループ作ればいいじゃん」

「…!林田く〜ん!」

急に右から重みが乗ってきてうわっと情けない声が漏れる。すぐに右を見ると石田が肩を組んできていて、少しの苛立ちを覚える。同じクラスとはいえ、全く話したことの無い人間と肩を組むものなのか?その価値観は俺には分からない。

……ちらーりと光の方を見てみると、鬼のような顔をしている光が視界を掠めて、思わず勢いよく目を逸らす。逸らしたら逸らしたでニヤニヤしている石田と目があって。逃げ出したい気持ちに襲われる。

急いでスマホを取り出して連絡先を交換する。ピコン、という音が鳴り、スマホの画面に光のアイコンが表示される。俺が好きなスポーツドリンクがアイコンになっていて、少し親近感が湧く。

「光、アイコンのやつ…………ぁ」

声をかけようとした時、バキバキに割れている画面を見ながら嬉しそうな表情をしている光を見て、少し、見惚れてしまった。

「ん?」

見つめあう。雲の下で見る光の瞳は、淡い緑色に染まっている。光の当たり加減によって変わる瞳の色に、ずっと心を奪われている。

「…たいよう?」

「…え、いや、あ、アイコンのやつ美味しいよねって」

光はゆっくりと、目を細めながら口を開く。

「うん、すごい美味しいよね。これ好きだよ」

心臓の動きが、何故か速くなるのが分かる。なんで、こんなに、目が離せないんだろう。まるで、魔性の美女を見たかのように、光に釘付けになる。

「お二人さーん?二人だけの世界入り過ぎー」

見かねた石田の声が斜め右後ろから飛んでくる。石田が立ち上がる。帰るのだろうか。

「じゃあ、俺帰るわ!今日はありがとうな」

俺の方に顔を近づけてにっこりと笑みを作った後、またねという声が左耳の近くから聞こえた。光は最後まで、石田の背中が遠くなるまで石田の方を睨んでいた。

嵐のような石田が去った後、光は酷く疲れた顔をしていて、すぐに追い返せばよかったかなと申し訳なくなる。

「なんで石田にあんな冷たかったの?」

「………嫌な思い出があって」

それ以上は、聞かないことにした。 


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