6 荒下神社にて
バイクを駐車場に入れスズキ・ハスラーの隣に置く。
中を覗くと俺と志乃が一緒に高尾山に行った時に買った、ムササビのぬいぐるみが助手席にぶら下がっていた。
うちのハスラーだ。
玄関に行きベルを押すと「奥へどうぞ!」と女性の声がする。
「お邪魔します」
靴を揃えてメットをぶら下げて奥の人の気配のある部屋に向かう。
4人の人がいた。親父の他は3人だ。
1名は20代の女性でさっきの声の人だろう。
親父親父は俺と目が合うと横に座れと促した。
「息子の四寒流九代目の明、20歳になります」
「社会人?学生?」
「国秀院大学2年です」
『若い!』
「皆さんも自己紹介をお願いします。では私から。静岡から来た御剣神流・望月九曜44歳です。ここでは最年長だよ」
「岐阜から来た佐和流・河辺秋彦35歳のおじさんです」
「私はここの神社の娘、御霊神流・荒下静流25歳、ちょっとお姉さんね!静流さんって呼んでね!」
剣術の流派の人みたいだが、ウチの流派含めて全く聞いた事が無い・・・
玄関の呼び鈴が鳴る。
「どうぞー!」
「遅れて申し訳ありません」
壮年のスーツ姿の男性二人が入って来た。
「揚げまんじゅうです」
「皆さんお茶菓子持参して来てくれるって言うから、もう楽しみだったのよねぇ」
神田の揚げまんじゅう・代官山小川軒のレイズンウィッチ・堂上蜂屋柿の誉・静岡の一級品の河根産のお茶。
静流さんは小躍りしている。
(確かに、なかなか食べれないよな、特にお茶と干柿)
スーツ二人組はちらりと俺を見て目の前に座った。
「防衛省対赤目課本部長・工藤剣真です」
「副本部長の金子典膳です」
「合間明です」
工藤とやらは親父の方を向く。
「義明さん明さんは何処まで知ってますか?」
「全く教えて無いよ」
「そうですか、では信じられないかも知れませんがお話しします」
この日が俺の人生のターニングポイントになった。
決して戻れない道だった。