5 婚約者は甘えたい?
・・・・?
・・・・・俺の顔を誰かがのぞいている?
その者が目を開けると青い目が浮き上がる。
外人さんかな。
水色では無く綺麗なラピスラズリの青で、中央は金色でまるで宝石だ。
その美しさに目の中に引き込まれそうだ。
「きれいだな・・・」
気配を感じて目が覚めた。
「ふふっ、きれいとか言ったくれた」
志乃の顔がそこにあった。
「びっくりしたよ」
「良く寝てたわよ?」
志乃はベッドに潜りこんで、横から俺に抱きついた。
撫でていると先程の睡魔が襲ってきてウトウトする。
「もぉー今晩は愛してくれないのかしら?」
不満そうだ。
「ちょっとふわふわして眠い・・・」
「もぉ!しょうがないなぁ」志乃が強く抱きつく。
志乃を抱きしめそのまま俺は心地よい眠りに落ちた。
◾️◾️◾️◾️
朝、親父からメール連絡があった。
今日、天河を持って江の島の友人宅に来てくれ。と言う事だった。
ベッドから出て着替えキッチンに行く。
志乃が朝食を作っていた。
俺の顔を見ると、「おはよう、朝ごはんにする?それとも、あ・た・し?、あっ裸エプロンとかする?もぅダーリン朝からエッチよね!」
「痴女じゃんか!」
「ちょっと待ってね、すぐ脱ぐから!」
いやいや、朝から困ったぐらいノリノリだ。
というか婚約してからずっとこの調子なのだが・・・
昨日、抱かれなかったのがよっぽど不満だったらしい。
「・・・ありがとう。朝から楽しくてとっても、とおーっても嬉しいけどまた今度お願いしていいかな?」
「あら・・・残念・・・」
ほんとに残念で不満らしく目がちょっと怖い・・・次から彼女が求めた夜は応えようと、かたく心に誓って席に着いた。
「昨日の残りを使ったカレーうどんだからね」
「唐揚げは?」
「無いわよ、朝から揚げ物食べるの?」
「朝からエッチを求めるのは良いんだ?」
「愛なのよ!とっても愛しているから良いのよ!そうでしょ?」
「うん、そうだね」
「でしょ!愛は重いぐらいが良いのよ!」
(全然良く分からないんだけど・・・まぁ、それだけ思ってくれるなかありがたいかな)
めちゃ美味いカレーうどんを食べながら、今日は親父の呼び出しで江の島に行く事を告げる。
志乃は今日から実習らしい。
「お皿洗っとくから神社お願いね」
「わかった」
合間家と開間家の間にある小さなお宮がある。そこに週一度、米・塩・水を備えるのだ。ただ奥に設置してある青みかかった鏡を拭き、汚れを落とす事が一番大事な事だ。
この鏡は魔鏡になっており、光が通ると後ろに変わった模様が浮き出るのだ。
汚れると模様が出なくなり禍が起こる。とされている。
うちと志乃のうちで月代わりでやっている。
うちは偶数月担当で開門家が奇数月となっている。
洗い物をしている志乃に米・塩・水をもらう。
社に行ってウエスで魔鏡を綺麗に拭く。
古い米は鳥が摘んで行くのが無い。
塩も飛んでしまっているようだ。
水も蒸発しているのか無い。
米・塩・水を置きお祈りした。
自分の家に行き家の北側の部屋に入る。
ここは温度湿度管理した刀部屋だ。
桐製で特注の刀箪笥から天河・兼廣を出し刀袋に入れて背負う。
ふと親父の愛刀「兼元」が無い事に気が付く。
これは初代関孫六の作で斬れ味は凄まじい。
◾️◾️◾️◾️
刀を背負ってヘルメットを被る。
ガレージから400ガンマを引き出す。
シングルシートに跨って燃料コックをONに倒す。
kadoyaのキーホルダーが付いた鍵をONに捻り、
キックレバーを起こし左側にバイクを倒す。
右足をキックレバーに乗せ下に蹴り込む。
グッパパパッ!パン!バン!
エンジンがかかりアクセルを軽く煽る。
ギアをローに入れアクセルを繋ぐと力なく動き出す。スカスカの低速が辟易する。
大通りに出てアクセルをワイドオープンすると、一気に吹け上がりスクエアフォー独自の音と共に白煙を上げ疾走する。
高速を使わず国道246から国道467に出て、国道134海岸通りをのんびり行く。
途中調べながら何とか江の島水族館の近くにある荒下神社に到着した。