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何も起きなかった

 翌日。

 目を覚ますと隣に誰かがいる気配がした。

 未だに重い頭を持ち上げ気配がする方に首を向けると、そこにはフィーネがいた。


「お、お姉ちゃん? ……何でベッドに入ってるの?」

「ZZZ」

 エリュの言葉に返ってくるのは、静かな寝息だけだ。

「……まぁいっか」


 エリュはフィーネを起こさないようにベッドから出ると、大きく背伸びをした。

「ん~っ。なんというか……馴染んだ?」

 昨日と違い、全身に力が満ち溢れるのを感じた。身体の感覚もしっかりとしており、自分が自分であると理解できる。


(レーンの言ってたことって本当だったんだ……)

「ちょっと鑑定してみようかな」

 鑑定の力を使用すると、瞳に自分自身の情報が映し出される。


 エリュ・アドミス

 総合戦闘ランク:H

 力:H15 耐久:H14 器用:H17 敏捷:H22 魔力:I9

《使用魔法》

【初級炎魔法】【初級水魔法】【初級風魔法】【初級土魔法】【初級光魔法】【初級闇魔法】

《才能》

【魔力・魔法技能成長上限なし】【剣術】【自己洗脳】【気力付与】【聖力付与】


「……増えてる? 魔力値増えてる! やったっ!」

 小さくガッツポーズをしたエリュは、すぐに【自己洗脳】と書かれた部分に目を付けた。


「……なんか、変な才能が増えてる。それに、お姉ちゃんと同じ才能も……なんだろう【気力】と【聖力】って」

 しばらく考えてみたが、気力と聖力については分からない。現状使い道も意味も分からないので、これについては触れないことにした。


「魔力が増えたってことは魔法も使えるのかな? ……試してみよ」

 分からないことは頭から振り払ってエリュは魔導書を手に取る。

 それから適当にページを開いて【初級魔法】について書かれたページを見つけた。

「え~と、初級魔法は魔素を直接事象改変に繋げる魔法。複雑な事象改変は引き起こせないため、別名生活魔法とも呼ばれている……か」


 どうやら初級魔法は火を灯したり、水を出したりと基礎的なことしかできないらしい。

 詠唱も簡単で、例えば初級炎魔法なら『炎よ灯れ《点火(ファイアー)》』でいいようだ。


 では初級を発展させた【中級魔法】はどのような魔法なのかといえば、空気に満ちる【魔素】と呼ばれる分子に強い影響を与え、発現した魔法現象の形を任意に変えて多種多様な技を放つ技法のようだ。


 要するに中級魔法になれば初級魔法よりもできることが増える。例えば、火種を炎にしたり、炎の形を大蛇やドラゴンのような形に変える事もできる。

 暑さを凌ぐために吹かす微風が初級魔法なら、家を吹き飛ばすほどの威力を出せるのが中級魔法。


 また、風を渦巻きのように回転させたり、高所から落下する際の衝撃緩和にも使えたりと中級魔法には想像力も要求される。

 そのため、魔法使いとしての登竜門は中級魔法から始まるようだ。

 それらの情報を読み込んでいたエリュは、上級魔法という見出しページにたどり着く。


「上級魔法ってのもあるんだ。すべての魔法使いが目指す到達地点か……」

 興味本位でエリュは、上級魔法のページも読んでみた。

 上級魔法は威力を底上げした中級魔法とは異なり、多彩なことができるようになるようだ。例えば、火や水、風や土といった物質の性質を変えることができる。


 例を上げると、消えない炎、触れると燃える風、触ると溶ける土、スライムのような粘土のある水、などなど現実にはあり得ない現象を引き起こすことが可能だ。

 また、それだけではなく、中級に分類される魔法でも定義された一定以上の威力が出るのであれば上級に分類されるらしい。


「こうしてみると、魔法って面白いなぁ。上級魔法……かっこいい。これが使えるように頑張ろう」

 自分の目指すべき目標を定めたエリュは、最初のページに戻る。そこには、最も簡単な着火魔法の詠唱が書かれていた。


「とりあえず、初級魔法の練習から」

 エリュはアイシュタルクの魔導書を閉じると、目を閉じて覚えたばかりの魔法を詠唱する。


『炎よ灯れ《点火(ファイアー)》』

 ………………。

 何も──起きなかった。


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