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第三の刺客、襲来

 レーンの方を見れば、聞こえてきた声色と同じようにエリュを非難するような視線をレーンは向けていた。


「なに?」

「まさかあの化け物を倒すつもりなの?」

「いや、そういう訳じゃないけど、最悪の場合はそうする必要があると思ってる」

「セレスちゃんを連れて逃げたほうがいいよ。さっきの攻撃みたよね? 死ぬよ」

「でも、このままだとセレスが死ぬ」


「それでも、私はエリュに生きて欲しい。だから……逃げて」

「……いつから親みたいなことを言うようになったの? ほんとは俺なんかに興味もないくせに」

「ち、ちがっ」


 動揺した様子でレーンは首を横に振る。

 その直後。

 大きな影がエリュ達の頭上を通り過ぎた。反射的にエリュとレーンは首を上に向ける。


「嘘、だろ? もう一体来るのか?」

 頭上を通り過ぎた影を見て、エリュはぽつりと呟いた。

 突如現れた二体目の訪問者。

 それは、リヴァイアサンとは別の魔物だった。


 端的に言えば鳥。だが、事実を正しく述べるのであれば、両翼を広げると、百メートルを超える大きさの怪鳥。全身は青灰色をしている。羽は鋼鉄でできているかのような硬度を持っており、一枚一枚は刃物のように鋭い。


-------------------------------------------------------------------------------------------

 スカイギガンテス

 総合戦闘ランク:S

 力:B432 耐久:B282 器用:A412 敏捷:B309 魔力:A380

 特徴:高度な魔法能力を持つ空の王。強力な風と雷を操るとされる。また、その叫び声は音波として周囲を破壊する力を持つ。リヴァイアサンの天敵で、リヴァイアサンの生息する海に度々訪れる。

--------------------------------------------------------------------------------------------

 その説明を見て、エリュは恐怖を感じつつも、内心安堵し、ほっとため息を吐き出した。

 上空にリヴァイアサンを打ち上げた事で、たまたま近くを通りすがったスカイギガンテスに目をつけられたのだろう。


「はぁ。何とかなるかも」

 偶然ではあるが、運が良かった。

 そう思った直後、それは勘違いだと気がついた。

 スカイギガンテスとリヴァイアサンの攻撃が、エリュ達の遥か上空で衝突したのだ。


 水と雷。相性は最悪だ。

 とてつもない閃光と爆風が空から降り注いだ。さらに追撃として下された雷はリヴァイアサンを貫いた。


 しかし、リヴァイアサンは絶命しておらず、猛烈な攻撃を続けている。その攻撃の苛烈さに比例して雨が豪雨に、風が暴風に変わり、弾丸のような雨が降り始めた。

 雨の勢いは既に現実離れしており、雨が直撃した地面はボコボコと音を立てて凹んでいく。その勢いは、倒木を砕くほどの勢いだ。


「わ、わっ!」

 強烈な雨が直撃する前に風のバリアの中に逃げ込んだエリュは、同じく風のバリアから顔を出していたレーンの方を見た。

「大丈夫? 当たってない?」

「うん。……大丈夫」


 レーンは小さく頷いた。

 しかし、先ほどエリュが吐いた暴言を気にしているようで、エリュには視線を合わさない。

「……あの、ごめん。さっきは言い過ぎた。レーンがそういう風に俺のことを思ってくれるのは嬉しい。でも、目の前にある命を見す見す見逃したくないんだ」

「うん。分かるよ。私もエリュの気持ちが分かってるのに……ごめん」


 レーンは申し訳なさげに言う。

 その後、気持ちを素早く切り替えたレーンは顔を上げた。

「でも、そういうことならセレスちゃんを救えるのは今だけだよ。あの化け物たちが戦ってる間に──」


「そうだね。でも雨がやばいんだ。木の幹も破壊するくらいの威力がある」

「セレスちゃんは?」


 レーンの言葉を聞いてエリュは、風のバリアで頭を覆いながら外を覗く。セレスの倒れている場所のすぐ上には、地形の問題で妙に外に飛び出た岩石が生えている。

 そのお陰で雨は遮断されている様子だ。


「大丈夫。頭上の岩が雨を防いでる。問題はどうやってあそこまで行くか、だよ」

「今エリュがこの穴の上に張ってる風のバリアは、雨を防いでるよね。そのバリアを張りながら移動しよ」

「だね……行ってくる」

「私も行くよ」


 エリュはレーンの言葉に頷くと、エリュとレーンの頭上を覆うように風のバリアを張った。そして、戦い続ける化け物たちに見つからないように腰を落として素早くセレスのもとへと移動した。


「セレス。セレス大丈夫? しっかりして」

 セレスの体を何度か揺さぶるが、彼女は微動だにしない。幸い呼吸はしているので、死んではいない様子だ。

「どうしよう……」


 今後の策が思いつかない。焦るエリュの背後で巨大な何かが湖に落下する音がした。

 慌てて振り返ると、エリュの発動した風魔法が切れ、リヴァイアサンが水中に落下した音だった。


 だが、安堵の息を吐く暇すらなく、リヴァイアサンの落下の衝撃で湖の水がめくれ上がり、津波が押し寄せてきた。

「やばい!」


 エリュの瞳孔は大きく開く。そして、思考を素早く回転させた結果、崖の壁面に向けてエリュは魔法を放った。


「大地よ。天地を揺るがす力を解き放て。崩壊せよ《大地破壊フォッサ・テルリス》」


 壁面に穴が開いたのを確認したエリュは、必死でセレスを引きずり込み壁の入口を土魔法で塞ぐ。同時に、エリュが立っていた場所を巨大な波が飲み込む音がした。


ブックマーク・感想・星などなどいただけると嬉しすぎます。

できるだけ面白いものを書きたいと思っているのでよろしくお願いします

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