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命がけの戦い

 レーンは自慢げに言ったあと、小さく咳払いをした。

「でも、問題点もあるの。私達を探しているあの化け物を掻い潜って落とし穴を作らないといけない」

「……そっか。だね。発見されたら一大事。絶対にバレないようにしないと」


 と、エリュが自分を戒めていると、隣で大骨人ジャイアント・スケルトンの足音にビビりながらセレスがエリュの服の袖を小さく引っ張った。


「何をバレないようにするの?」

「……話聞いてた?」

「え……ごめん。聞いてなかったかも」

「…………」


 この状況でも話を聞かないセレスにエリュは絶句した。

「……はぁ。いい? 今から穴を掘って、あの巨大スケルトンを穴に落とす。そして、作った穴に聖力を流すんだ。セレスも使えるよね?」


「う、うん。それで?」

「聖力を浴びた大骨人ジャイアント・スケルトンは自壊する。分かった?」

「分かった。ありがと」

「今度からはちゃんと話を聞いてね」


 そうエリュが言った途端、近くで木が幹ごとへし折れる音が聞こえた。

 音がした方を見れば、三本の木を踏み潰して直進してくる大骨人ジャイアント・スケルトンの姿があった。


「マズイ。一旦移動しよう」


 エリュは腰を屈めると、素早く少し離れた木の陰に身を隠した。続けてセレスとレーンがエリュの側の木に身を隠した。

 数秒後。

 メキメキという木の折れる音と土砂の崩れる音が響き、先程までエリュたちの隠れていた木が引き抜かれた。


「「「…………」」」


 あまりにもの光景にエリュは絶句し口元を抑える。しかし、それはエリュだけではなく、側にいるセレスやレーンも同様だった。


「と、とにかく、やるしか無い。俺が先に穴を開けてくる」


 木を引き抜いたあと、エリュたちを探して周囲を徘徊し始めた大骨人ジャイアント・スケルトンを見て小声で言うと、今隠れている木の幹から十メートルほど離れた地面に駆け寄った。


「え~と。地面に穴を開ける魔法ってなんだっけ……そうだっ!! 大地よ。天地を揺るがす力を解き放て。崩壊せよ《大地破壊フォッサ・テルリス》」


 記憶から引きずり出した詠唱を唱えた途端、空気中の魔素が反応し大地が震えた。同時に、地面に深さ五センチ程度の切れ目が生まれた。


「ちっさ……」

 少し遠くからセレスの呟きが聞こえてきた。


 それを聞かなかったことにして、エリュは再度同じ詠唱をした。

 二度目の魔法は、先程よりも深く穴を掘った。

 続けて三度目──破砕音と共に幅三メートル、高さ三メートルの円柱状の穴が生まれた。


「よしっ」

 エリュは小さくガッツポーズしたが、これでは大骨人ジャイアント・スケルトンの腰の高さにもならない。あと十数回は同じことを繰り返す必要がある。


「大地よ。天地を揺るがす力を解き放て。崩壊せよ《大地破壊フォッサ・テルリス》」


 近くを通る地響きを警戒しながらエリュは何度も魔法を唱えた。そして、十分ほど魔法を唱え続けようやく大骨人ジャイアント・スケルトンが丸々一体入る大きさの穴が完成した。


「……ふぅ」

 エリュは短くため息を吐いて、今度は穴を覗き込む。


「早く起爆罠を仕掛けないと。あ~詠唱は何だっけ……」

 頭を何度か叩いて記憶の引き出しを開けようと足掻く。

 すると──

「エリュっ。こっち来てる! 早く!」


 セレスの切迫した声が飛んできた。

 声に導かれ、セレスの方を見た。彼女は木の陰に身を潜め、崖側を指さしている。その先には、エリュの方へ向かって直進する大骨人ジャイアント・スケルトンの姿。


 進路からみて、このまま直進するとエリュが作った落とし穴に嵌まってしまう。


「やばい……まだ罠がっ。ってあ、思い出したっ! 光よ、聖域に踏み入らんとする敵を打ち砕け《光輝爆陣ルーメン・エクスシリス》」


 エリュは早口に魔法を詠唱する。

 すると、穴の奥底に金色に輝く線が生まれた。線は綺麗な円を描くように走り、魔法陣が描かれる。続けてエリュはセレスを手招きした。


「セレスっ。予め聖力を満たしておこう」

「う、うん」


 罠の準備をずっと見ていたセレスは小さく頷くとこちらに駆け寄り、落とし穴の底を覗いた。


「ここに、聖力を満たせばいいんだよね?」

「うん。やり方は分かる? 俺はお姉ちゃんに教わってるけど……」

「私も分かる! まかせて」


 セレスは腕まくりしながら言うと、両手を落とし穴の底へ向けて呪文を唱え始めた。すぐに彼女の体は光に包まれ、青緑の光が落とし穴の底へ向かって落ちていった。


 穴の底にはどんどんと光の粒子が溜まっていく。

 それに比例して、響く足音が大きくなっていった。エリュもセレスと共に直前まで落とし穴の底へ聖力を流し込む。


 それが数十秒続き、足音が無視できない大きさになった時、エリュはセレスの腕を引いた。


「もう限界だ。そろそろ隠れよう」

「うん。いこ!」


 立ち上がったセレスは、エリュを見てニッコリと微笑む。そして、二人でレーンが隠れている木の近くへと駆けて身を隠した。

 数秒後──

「来るっ」


 硬い声色でエリュが言った瞬間、自身と見紛うような地響きが響いた。

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