表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/47

情報の破損

「そっか。なら探そう。何日掛かるか分からないけど、君たちを絶対に家に帰してみせる」


 決意を決めたエリュの表明を聞いたセレスはキラキラとした目でエリュを見た。

 まるで憧れの人を見ているかのような目。だが、その瞳に含まれているのは、どちらかというと、羨望の眼差しのようだ。

 それに気が付いたエリュは、首を傾げた。


「どうしたの?」

「え、あ、ごめん。同じ女の子なのに、かっこいいなって思って」

 そう言って尚もキラキラとした眼差しを向けるセレス。性別に関しては完全に勘違いなので、気まずくなったエリュは、誤魔化すように咳払いをして話を進めることにした。

「ひとまず、得られる情報は全部得よう」


 エリュの瞳は青く輝いた。

 --------------------------------------------------------------------

 ドラン大森林【深部】──要求総合戦闘ランクA

 あなたの戦闘ランクは要求される数値を大幅に下回っています。

 直ちにその場から離れてください。

 --------------------------------------------------------------------


 鑑定の力を発揮した途端、視界がアラートを示すように真紅に染まった。

 生存率を高めるために授けられた鑑定の力がついに真価を発揮した。この能力は環境の危険度を知る上で極めて重要だ。

 これまでは一山ものの能力を確認することだけに使っていたが、本来の用途はこちらこそが正しかったのだ。


「さてと、次は……」


 エリュは確認した情報を記憶に留めると、ふと自分の体に目を向けた。

 すると、自分の才能値が表示された。


 エリュ・アドミス

 総合戦闘ランク:G

 力:G(35)耐久:G(31)器用:H(27)

 敏捷:G(37)魔力:F(84)→F(90)

《使用魔法》

【初級炎魔法】【初級水魔法】【初級風魔法】【初級土魔法】【初級光魔法】【初級闇魔法】

【中級炎魔法】【中級水魔法】【中級風魔法】【中級土魔法】【中級光魔法】【中級闇魔法】


「ちょっとだけ成長してる……崖から落ちてる時に無理して魔法使ったからかな。まぁ焼け石に水なんだけど」


 ドラン大森林の深部に要求される、はるか高みのAランク。その表示を再度思い出したエリュは主だずため息を吐いた。


「先に進もう。ついてきて」

 と、声をかける。

 しかし、その時、鑑定を切らぬまま彼女たちの方を向いたことで、彼女たちの情報が視界に飛び込んできた。


 セレスティーナ

 総合戦闘ランク:H

 力:H(20)耐久:H(19)器用:H(11)

 敏捷:G(30)魔力:G(31)

《使用魔法》

【回復魔法】【治癒魔法】【初級光魔法】

《才能》

【ドジ】【アホ】【聖力付与】


 名前に関しては、エリュが知っている範囲までしか表示されないようだ。他者の才能を無断で覗き見るこの力にも、一応のプライバシーが保たれているということだろうか。

 そんなことを思っていると、レーンの方の情報も流れ込んできた。


 #”$&%”#&“

 総合戦闘ランク:%%

 力:%% 耐久:%% 器用:%% 敏捷:%% 魔力:%%

《使用魔法》

【%%%%】【%%%%】【%%%%】

《才能》

【%%%%】【%%%%】【虚偽】


「え?」

 レーンの情報は壊れているとしか言いようがなかった。


 彼女の才能はほとんどが破損しており、解読ができない。わずかに読み取れる部分には、ただ「虚偽」と記載がされている。意味が全くわからない。

 それほどまでに、壊滅的にレーンの情報は壊れていた。


(虚偽の才能……? 一体どういう意味? レーンは嘘をついてる、ってこと?)


 振り返ってみても、彼女が嘘をついていたと感じたことはない。彼女は常にエリュには誠実だったはずだ。確かに、自分の身分を隠す秘密主義ではあるが、それは虚偽とは違うだろう。


 虚偽とは、真実ではないことを真実だと偽ることだ。秘密はそれに該当しない。


「レーン……いや、なんでもない」


 エリュは、レーンの正体を探らないと決めていた。

 三年前に交わした約束。それは今もエリュを縛り続けている。

 彼女と今度も共にいるためには、見てしまった情報にどれだけ心が揺れようとも、それを彼女に問いただしては逝けないのだ。


 その時、動揺して固まっていたエリュの方をセレスが軽く叩いた。


「ねぇ? 急に立ち止まってどうしたの?」

「え? いや、ちょっと考え事。行こうか……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ