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3年後

サバイバル編の始まりです。命がけの戦いが始まります。

 レーンと出会ってから三年という月日が経過した。

 朝の目覚めのストレッチを終えたエリュは、鏡の前に立つ。

 今のエリュは、冒険者のような身動きのしやすい服装に身を包んだ格好をしていた。


 鏡に映った自分の姿をエリュはじっと眺める。

「はぁ……」

 鏡を見て一つため息。


「三年じゃあまり男っぽくならなかったなぁ。もう十三歳なのに……」

 村の男の子達は、声変わりをして体格も良くなっているというのに、エリュときたら未だに女の子にしか見えない容姿。女の子にしか聞こえない声。

 村でも一番の美少女である姉の思春期の姿にそっくりだ。


 自分では多少男っぽくなったと思っているが、周囲の評価はその真反対を駆け抜けている。

 フィーネを除いたら村一番じゃないか。いやいや、フィーネより美人になる。

 これが最近のエリュの評判だ。


 一向に男っぽくならない自分の姿を見て、エリュは再びため息を吐き出した。

「はぁ……朝起きたらイケメンになってないかな」

 そんなことを呟きながら鏡を見たせいだろう。

 エリュの視界に見慣れた数列が出現した。


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 エリュ・アドミス

 総合戦闘ランク:G

 力:G35 耐久:G31 器用:H27 敏捷:G37 魔力:F84

《使用魔法》

【初級炎魔法】【初級水魔法】【初級風魔法】【初級土魔法】【初級光魔法】【初級闇魔法】

【中級炎魔法】【中級水魔法】【中級風魔法】【中級土魔法】【中級光魔法】【中級闇魔法】


《才能》

【魔力成長上限なし】【魔法技術】【剣術】【気力付与】【聖力付与】【自己洗脳】【シスコン】

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 才能の最後【シスコン】は、ちょうど一三歳の誕生日の日に獲得した不名誉な称号だ。

 特になにかメリットがあるという訳ではなく、ただ単にシスコンの才能があるということを明示された形だ。


 だが、エリュは自分のことを別にシスコンとは思っていなかった。この表記もそういう気質が強いだけだろうと、内心確信している。

「あぁ、邪魔邪魔」


 自分のステータスを手で払いのけたエリュは、短く息を吐き出し、自分の頬を叩いた。

「気合を入れろ。エリュ!」

 自分の名前を呼んで鼓舞したエリュは鏡から目を離すと、部屋を出た。

 廊下に出るとすぐに強烈な視線を感じた。

「じーーーーーっ」


 気がついて欲しい。けれど、こちらからは話しかけられない、というように声の主は、執着の籠った声を出す。

 声の方には、廊下の角から黄金の髪がぴょこっと覗いている人影があった。もう十九歳にもなったのに、未だに弟離れできていないフィーネだ。


 最近になって、大人の魅力を放つようになり、村の中でも人気で絶好調と言える。

 そんな彼女は、子供のように壁から顔を出しては引っ込めるという動作を繰り返していた。 

「じーーーーーーーーっ。お姉ちゃんは寂しいよ。じーーーーーーーっ」


 そう言って再び曲がり角の奥へと姿を隠すフィーネ。その姿には、どことなく哀愁が漂っていた。

 自分から話しかけず、エリュの方にアクションを期待している辺り、まだ子供のようにも見える。

「ふぅ……」


 ため息を吐いてエリュは廊下を進む。そのままフィーネに話しかけることもせず、彼女のそばを通り過ぎた。

「がーんっ!」

 すぐ側で無視されたフィーネが悲鳴のような声をあげる。エリュが近づいてきたときは期待に目を輝かせていたので、その落差がより強い哀愁を漂わせた。

 だが、エリュは反応しない。


 なぜなら現在エリュとフィーネは喧嘩中なのだ。

 それもそのはず、エリュとフィーネは絶賛喧嘩中なのだ──と言っても発端はとてもくだらない。


 ──昨夜、突然フィーネが「寂しい」と言って同じベッドに入ろうとした。

 それをエリュは咎めるように拒絶した。

 これが、喧嘩の発端だ。


 だが言い訳がない訳ではない。エリュももう十三歳だ。流石に姉離れの年齢だろう。例え、才能に《シスコン》と記載されていようと、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 だから「俺はもう大人だよ。一緒に寝るとか恥ずかしい」「お姉ちゃんはもう大人でしょ!」などなど様々な言葉を放った。


 そうした言い方がフィーネには気に食わなかったようで、一年に一度くらいの大喧嘩と相成った。

 最終的にフィーネも怒って、「もういいっ! エリュなんて大嫌い!」などと叫んで部屋を出ていった。


 しかし、一晩を明けて現在、フィーネから感じる視線には、仲直りしたいよぉ~、という必死な訴えが込められている。

 過ぎ去ろうとしていたエリュは階段の手前で足を止めた。

(昨日は冷たくしすぎたかな?)


 罪悪感を抱き始めたエリュはフィーネの方を向く。

 それでもわざわざ謝ったり非を認めたりはしない。


「出かけてくるね。いってきます」

 それだけ言ってエリュは背を向けた。


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