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フィーネの秘密

「じゃあその国が、盗賊は全員殺せと、そういう法律を作っていたら──どうする?」

 そこまで問われて、ようやくレーンの言いたいことを理解した。

 記憶持ちであるエリュには、なかなか受け入れがたい話だ。


「……この国ではそれが普通なの? つまり、盗賊は全員殺せって」

「そうだね。そこに疑問を持つ人もいるけど、多くの人は賛同してる。なんでか分かる?」

「さっき言ったのが全部じゃないの? 食料も土地もないって」


 レーンはエリュの答えに微笑む。

「そう。だけど、これには犯罪の抑止って理由もあるの。治安を維持するためにもみんな納得してる。この国の人は捕まえた盗賊を殺すし、それが普通」

 レーンの言葉にエリュは強い違和感を覚えた。


 前世では、犯罪者であろうとよほどのことがない限り保護されていた。命は誰であろうと平等だと、そう教わった。

 だが、この世界では違う。

 そのギャップはエリュに衝撃を与えた。

 同時に、この文明レベルだったらあり得るかも、と思っている自分がいた。


「それで、お姉ちゃんは何か関係あるの?」

「そうだね。今から三年前。この村に盗賊が襲撃に来た。その時は自警団が一致団結して、被害なく盗賊を捉えることができたの」

「なら良かったじゃん」


「だね。でも……フィーネは極刑を待っていた盗賊を独断専行で逃がした」

「え……?」

「でも、それって法律違反じゃないの?」

「そうだよ。フィーネが逃がした盗賊がまた人を殺すかもしれない。盗賊が更生するなんて基本的にはあり得ないんだから。彼女の行いは人殺しも同然」


 レーンの言い方には何か含みがあった。

 どうやら問題はそれだけではないようだ。

「他には何かあったの?」

「うん。フィーネが逃がした盗賊は、村のすぐ近くで死んだ。魔物に襲われてね」

「……それで?」


「結果──魔物の大繁殖が起きたの」

「っ‼ じゃ、じゃあ……」

「そう。三年前にも魔物の大規模な襲撃があった。死傷者多数。被害甚大。でもフィーネは自分の行いがそれを起こしたと知らない。だけど、元々はそんな子じゃなかった。思春期に入る前までは、フィーネの思想は村人と大きく乖離してなかった。でも、何かが彼女を変えてしまった」


「なにかって、なに?」

「分からない」


 レーンの問いにエリュは混乱した。

 エリュの知るフィーネは、何も変わらない。普通の優しい姉だ。

 けれど、レーンの話を聞いて、フィーネに対して、どことなく恐怖を感じてしまった。

 それが嫌で湧き上がった考えを否定するように首を振る。


「なんでレーンはそんなことを知ってるの? まるで側で見ていたみたいな」

「それは言えない。それを聞くなら魔法を教えるって話は無し。私は君の前から姿を消す」

「うぐっ……だったらなんで話したの?」


「ま、知って欲しかったからかな。エリュにはちゃんと考えて欲しい。お姉ちゃんみたいにならないで。正しい時、正しい判断をして欲しい。導き出した答えがエリュの願いなら私は、エリュを責めないよ」

 レーンは軽い感じで言うと、ふぅと息を吐いて柔らかい表情でエリュを見た。


「話が逸れちゃったね。それじゃあ魔法の練習を始めよう。ここなら広くて他人に見られないから。今日から毎日五時間、エリュが中級魔法を使えるようになるまで教えてあげる」

「いいの?」


「うん。約束、だからね。まぁ、中級魔法習得まで早くて五年。長い付き合いになると思うけどよろしく」

「えええっ!! な、長くない?」


「言っておくけど、五年って才能がある人の話だから。才能がないならその倍はかかるよ」

 それを聞いてエリュは戦慄した。


次話から第三話に入ります。


物語は加速度的に進行し、崩壊へと向かいます。たぶん

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