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10.彼氏


 目が覚めると、暗い天井が広がっていた。枕の上あたりに手を伸ばしスマホを見ると、深夜0時を過ぎていた。スマホを戻し、目を閉じる。ーー突然、脇腹をくすぐられた。


「わぁ!なにするの!?」


 怒りながら体を起こすと、同棲中の彼氏が再びくすぐってきた。


「はははははっ!」


 彼は笑っている。ふざけているようだ。


「もう!眠いんだから、やめてよね。」


 彼は寝る前によくスマホをいじっているから、きっとまだ起きていたのだろう。そしてスマホの明かりを付けた私に気づき、じゃれついてきたに違いない。そう思った瞬間、今度は脇の下をくすぐってきた。


「あはははははっ!くすぐったいって!」

「はははははっ!」


 笑っていて、こちらの話をまるで聞いていない。彼の手を止めようと思うが捕まえられない。何度もくすぐってくるのでやり返すと、ひょいっと避けて、笑いながらまた手を伸ばしてきた。


「ははっ!!ちょっと!やめてってば!」

「はははははっ!」


 彼は子供っぽいところがあるけど、困っている人がいると黙って助けに行くような人だ。ぶっきらぼうな面もあるけど、その心根は優しい人だと思う。それに彼のゆっくりと話す仕草が私は好きだ。でも、こういう子供っぽい所はちょっと苦手だと思う。


「はははははっ!」

「あははは!もうっ、いい加減にしてよ!」


 抵抗しても彼の方が力が強く、すぐに負けてまたくすぐられてしまう。笑い過ぎて涙が出てきた。それにしても、すごくしつこい。暗闇で顔が見えないせいか、異様に笑っている彼に恐怖のようなものを覚え始め、言い知れぬ不安がよぎった。


「あははっ!もうやめて!これ以上やったら、死んじゃうってば!」

「はははははっ!」


 私は彼を信頼している。でも、いつもは優しい彼だが、今は全く知らない他人のように感じる。暗闇で笑い続ける彼に、得体の知れない恐怖を感じるのは、なぜだろう。





 ガチャ。





「ひとりで何やってるの?」


 ドアの方を振り向くと、彼が立っていた。


「・・・あれ?一緒に寝てたよね?なんでそこにいるの?」

「え?俺、今までずっとリビングでテレビを見てたけど。」


 彼は驚いた顔をしている。


 じゃあ、さっきまで一緒にくすぐり合っていたのは、一体・・・





 うしろから、まだ気配がする。





 確実に、居る。





 今、うしろに居るのは、誰なの?







 パチッ。







 部屋の明かりがついた。


「良かった。誰かと一緒にいるのかと思ったよ。」


 彼が照明のスイッチを入れた。明かりの下、彼の笑う顔を見ると、私のうしろには誰も居ないとすぐに分かった。安堵の笑みがこぼれる。



 ーー瞬間、首筋に、生温かい息があたった。


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