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第22話 これから面白くなるんだぜーー!

 一心同体ならぬ二心同体状態のサンタとアレスは、スカした魔神、ナイトメア・メーカーのノウエーを木っ端微塵に消滅させた。


「へっ! スカした嫌味な野郎だったぜ。ざま〜みやがれ!」


(小童、貴様もスカッとしたのか! 俺もケジメをつけることが出来、溜まっていた怒気が抜けて行くようだ)


 アレスらしからぬ言葉が、サンタの全身を覆っていた黒く悍ましい邪気を払った。


「オッサン、あのスカした野郎と何かあったのか?」


(オッサンと呼ぶな! 俺の名は、アレスだ! 幻魔衆を率いるナイトメアメーカー卿であるぞ!)


「なんだとーーぅ!! オッサン、お前はやっぱりそうだったのかよ! 胡散臭いと思ってたんだよ、俺は!」


(小童のくせに、俺の正体を知っても畏れを抱かんのか・・・まあ、その根性だけは認めてやるぞ)


「小童と呼ぶなって! 俺は、サンタ・クルーズだ。韋駄天のサンタと呼ばれていたんだぜ!」


(フンッ! 生温い世界で、韋駄天などと呼ばれておっても貴様など、俺の敵ではないわ)


「オッサン、アレスだったか。スカしたあのナイトメアメーカーは仲間だったんだろう? 仲間割れにしちゃあ、随分な仕打ちじゃあないのかよ。まあ、おかげでこっちは助かったようなもんだけど・・・」


(あのカスは、この俺様を裏切りやがったのだ。何人たりとも俺を裏切ることは許さんのだ。それが神であろうが、そして魔王であろうがな!)


「相当な堅物だなぁ・・・って、オッサン、なんで俺の意識っつうか、俺の中にいるんだよ!」


(アレス様と呼ばぬか! 小童よ、それは俺の台詞だ! どうやって俺をお前の内側に押し込んだのだ?)


「そんなこと言われてもわかんねえんだよな・・・あっ! そういえば・・」

(思い出したのか! それが分かれば俺はここから抜け出せるはずだ、早くそれを教えろ!)


「俺もオッサンとランデブー状態なんて気色悪いから、さっさと出て行って欲しいんだけどよぉ」


(だから、オッサンではない! 童のくせに・・・しかし、妙だな、俺としたことが何かいつもの調子が出ぬぞ)


「うるさいなあ、今、思い出すからちょっと静かにしていてくれよ」


(クッ・・・まあ、善いわ! 黙っておくから早く思い出せ)


「あの時、もう一人の俺の意識が急に復活したんだよなあ。んでもって俺はオッサンの弩級の一撃を受け止めようとして・・・確か、強力なネットを張るイメージを具現化しようと・・・」


(童、俺の渾身の一撃を止めようとしただとぉ・・・貴様如きがか? ノウエーの魔導力をフルに使ったとしても、そのようなことはあり得んのだが、どうして・・・それと、もう一人のお前というのはなんだ!?)


「ちょっとうるさいなあ、まだ全部は話してないんだぞ! あんまりうるさいともう考えるのをやめちゃうぜ!」


(待て、待て! 続きを聞かせろ)


「もう一人ってのは、俺は存在が半分消滅したんだよ、お前らナイトメアメーカーのせいでな! だけど、あの時、もう半分の俺が意識の中に入り込んできたんだ」


(・・・そうか、貴様の器の半分がないから、俺を取り込むスペースがあったのか)


「で、その時に思い出したんだよ。隣のエッチなお姉さんの加護ってやつを」


(エッチなお姉さんの加護だとぉぉ・・・なんじゃ、そりゃあ?)


「うるさいなあ! そう驚くなよ、そのお姉さんは只者じゃあないんだぜ!」


(エッチなくせにか? いや、エッチな故に俺様の邪気を相殺したとでもいうのか! いったい、そのお姉さんというのは・・・)


「女神様だよ、アンドロメダっていう名の」


(・・・何!? アンドロメダだとぉ・・・・・)


 アレスは、女神の名を聞いて沈黙した。そして、想い出す。


 アレスはその名を知っていた。


 遠い昔、アレスが“天界の暴れん坊将軍”と呼ばれていた頃の記憶が蘇る。


 ーーー美しい姿ーーー つまらぬことを思い出したと彼は想う。


(俺の記憶にまだ、その名が、その姿が残っていたとは・・・)


 弱みは全て地獄の業火で焼き捨てたつもりだった・・・。




「おーーーい! オッサン・・・アレスのオッサン・・・どうしたんだよ!」


 急に沈黙したアレスを不気味に感じたサンタが呼び掛ける。


「消滅しちゃったのかよーー! それなら、それで嬉しいんだけどさー」


(貴様ーーっ! 消滅するわけがなかろう!!)


「なんだよー、まだ存在してるのかよぉ〜」


(おい、童、アンドロメダと言ったな? その女神の加護を俺に使ったのか?)


「そう言ったじゃあないか! よく聞けって、注意力散漫だと将来、碌な大人にならない・・・あっ、もうなっているもんな。やっぱ注意力は大切だよな」


(誰がだ! このクソガキが!)


「だから、女神様の加護を使ったんだよ。俺の神気功に流し込むようにしたら、オッサンの超絶な一撃が打ち当たって、気が付いたらオッサンは俺の意識の中に入り込んでいたってのが顛末だよ」


(そうだったのか! 俺の拳はあの時、盾になったお前を擦り抜けたような錯覚に陥ったのだが・・・だからこうなかったのか・・・)


「それって、俺が避けたってことなのか?」


(違う・・・包み込まれたように感じたのだ・・・そうしたらこの様だ)


この時、アレスは全てを悟った。

アレスが包み込まれたのは、柔らかで、温かな・・女神の愛であったのだと。

そして、アレスの唯一の弱みを優しく包み込んでくれた結果であると。


「なんか、オッサン、完全に邪気が薄れているみたいだぞ、どうなってんだよ」


(フンッ! 薄れたわけでも消えたわけでもないわ)


「なんだか調子狂うよな! オッサン、ナイトメアメーカーだろ、俺たちの敵なのによお、なんか不思議なんだけど全然、そんな気がしねえんだよな」


(俺は、お前の存在を半分消滅させた憎い幻魔衆だぞ、貴様は憎くはないのか!?)


「何故なんだろうなあ、オッサンのことは憎いとか、ぶっ飛ばすとか全然思わないというか、思えないんだよ」


 サンタの言葉に嘘偽りなどは一切なかった。

 そしてダークサイドに堕ちて魔神となったアレスもまた女神の成せる奇跡に抗うことをするつもりはなかった。


(・・・おい、小童! しばらく俺は貴様の中に居座ってやるから有難いと思え!)


「はあぁぁ?? 突然、何を言ってやがる。有難くなんかないっつうの!」


(仕方ないだろうが、好き好んでそう考えているわけでないわ! 俺も貴様も、俺を解放出来るの(すべ)を持っておらんだろうが)


「マジかあ・・・うるせえのが俺の中に居座るのかよ」

(貴様はわかっておらんな、しばらくは俺様がお前の半分になってやると言っておるのだ、心強いとは思わんのか!)


「ちょっと待てって! オッサンは敵だぞ! 俺はオッサンの仲間を片っ端から消滅させるつもりだぞ!」


(構わん! 好きにするが善いわ。 お前は知らぬだろうが、俺様は闇に落ちた堕天使だ、つまりは元は天界人だからな)


「えっ、マジか! そうだったのか!」


(但し、俺がお前の中にいることは、しばらくは他言無用だぞ。お前が言わなければ誰も気が付かぬからな。おまけにバレたらお前も天界から追放されるかもしれんぞ!)


「・・・・・確かに、そうなるだろうなあ、流石の俺でもそう思うよ」


 サンタはアレスの提案を受け入れるしかなかった。


 しかし、それは最強の力を得た瞬間でもあった。


 こうして、サンタは魔界最強の魔神と一心同体、というより二心同体となった。



▽ ▼ ▽ ▼ ▽


 ダッシャーとキューピッドの二人は、倒れていたダンサーのもとへ駆け寄っていた。

 ダンサーの無事を確認したキューピッドが、応急手当てを施していた。



「良かった・・・みんな無事で良かったぜ!」

その場所へ向かうサンタが呟いた。


 そして、大声で叫ぶ。

「これから、もっと面白くなるぜーー!!」


第一部完


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