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第19話 ノウエーの盾

 闇の貴公子ルシファーの右腕である魔神、ナイトメアメーカー卿アレス。

かつて破壊神と呼ばれた圧倒的な戦闘力を持った堕天使。


 そのラスボス級の魔神が突如出現した。

 ノウエーだけでも遭遇するのはレアケースだというのに、更にえげつない魔神が顕現したことで、サンタたち駆け出しの夢幻戦士にとっては、震度8以上の地震と直径1Kmの隕石落下が同時多発したような大災害に見舞われた。


 最早戦意を喪失したダッシャーとキューピッド、そしてフルボッコ状態のサンタとダンサーはその大災害の真っ只中にいる。


 しかし彼らには、ノウエーとアレスが何やら言い争う格好で対峙しているように見えた。


「アレス様、何か勘違いされておられるご様子ですが・・・」


「黙れ、ノウエー! この俺が、勘違いでわざわざ非望因子の無限空間(こんなところ)まで来る訳が無かろう!」

アレスの邪気が爆ぜるように拡がる。


 そのプレッシャーがノウエーの冷静さを完全に消し去った。


「アレス様、怒りをお鎮めください・・・さすがの私もアレス様の突然の登場に戸惑ってしまいました。 いったい、何の・・・」

「黙れ、ノウエー! 貴様に今から我が鉄槌を見舞ってやろうというのだ」


「・・・アレス様、私は・・・ドリームクラッシャーではありませんよ・・・

向こうに弾き飛ばした赤いサルがターゲットなのでは」


「あんなカスは眼中にないわ! 立て、ノウエー! 立って、この俺に歯向かってくるが良い。無抵抗のクズをぶちかましたところで面白くもない、お前が俺に一撃でもくれることが出来たら見逃してやっても良いぞ」


「アレス様、先程から何を仰っているのか私には皆目検討がつきませぬ。何故、私に激怒されておられるのか・・・」


「クッ! 貴様、この後に及んでまだシラを切るか。貴様は俺を裏切り、よりにもよってあの虫唾が走る狡賢い出っ歯野郎のルイデスと裏で結託していたであろうが! 俺の目は節穴ではないぞ、小者風情が調子に乗りおって」


 ノウエーは起き上がると、片膝をつき首を垂れて言い訳を始めた。


「それは誤解です! 私はアレス様に忠誠を誓っております・・・どうかお聞きください・・・」


 言い訳の途中、一瞬の隙をついて瞬間移動。移動先は、先程、吹っ飛ばされたサンタの背後。


「アレス様、武力、腕力だけしか持たぬ、知性の欠片もない貴方のような者が、どうやって私の裏の顔を知ったのかはわかりませんが、どうやら全てをお見通しのようだ」


「フンッ、クズが開き直って小細工を弄すつもりか」


「確かに貴方を見限りましたよ。私の能力を使いこなしてくれるのは貴方ではなく、ルイデス様だとわかってしまったので・・・」

ノウエーはそう言いながら、遠距離空間移動の術式を展開しようとしていた。




「あのスカした魔神が、手も足も出ずに怯え切っているぞ・・・なんなんだあの黒い奴は・・・」

アレスとノウエーのやり取りを見ていたダッシャーが、誰に言うでもなくポツリと呟いた。


 これまで圧倒的な強さを見せつけてきたノウエーが逃げ惑う姿に、アレスという魔神の格の違いを見せつけられた。

が、同時にこの状況を打破する兆しのようにも思えた。


 しかし、あの黒い奴がこちらの味方とは思えない。頼みのサンタもダンサーも瀕死状態。最悪、この場からキューピッドを連れて離脱しなければならない。

 このままあの二体が差し違えてくれないか、そんな期待を寄せてしまう。



「お前、俺の副官やってたんだろう! 逃げてんじゃねえぞ!」


 ノウエーの逃亡を見越していたアレスは漆黒のエネルギー波をノウエーが展開しようとしている術式に打ち込んで破壊する。

 なおもノウエー目掛けて特攻しようとした瞬間、アレスの前に新たなナイトメア・メーカーが突如出現。


「足止めしなさい、ベーイー!」


 アレスの前に立ちはだかったのは、ノウエーが伴ってきた三体の幻魔衆の一体だった。

 アレスの配下であったが、傲慢なアレスのやり方に不満を抱き、サンタたちに消滅させられたブサイクなナイトメア・メーカーもノウエーに従った不幸な元幻魔衆である。


「おい、てめえは俺の手下だろう? 何故偉そうに俺の視界に入ってやがる」


 意表を突いたベーイーの出現に全く動じる気配のないアレスは威圧を増していく。

 ベーイーは、ノウエーの隠蔽と転移の混合魔術によって不意打ちのために出現したものの、アレスの圧倒的な威圧に気圧されて身動きが取れない。


「これほどのプレッシャーとは・・・やはりアレス様に背くなど無理が・・・」

「消えろ!」

アレスの拳がベーイーに炸裂! 一瞬で消滅した。


「チッ、時間稼ぎにもならなかったか・・・だが、こいつの仕込みが完了したぞ」

ノウエーはサンタの身体に闇の魔導力を注ぎ込んで魔導障壁化させていた。


 闇の魔道力を体内に注入されたサンタは、全身がドス黒い霧に包まれている。


「つまらん小細工だ。さっさと俺に挑んで来い、ノウエー」

アレスが冷ややかに告げる。


「これの全身に魔導障壁の陣を展開させました。貴方の攻撃は全てこれが引き受けてくれますから思う存分楽しんでください。私はここを離脱しますので」



 一方、ノウエーがサンタを魔導障壁化する様子を見つめていたキューピッドが口を開いた。

「何が・・・どうなっているの・・・サンタが悍ましい姿になっているわ」


 ダッシャーがキューピッドの両肩を掴んだ。

「キューピッド、この状況ってミカエル大隊長が言っていた“想定以上の状況”のはずだよな?」


「確かにそうよね。その場合は、大隊長が救出に来るはずだったわよね?」


「それなんだが・・・俺はとっくにこの指輪を使って救援要請してるんだよ。あんな魔神クラスが二体もいるっていうのに何故、大隊長は救出に来ないんだ。何かがおかしいのかよ!?」


「・・・考えられるのは・・・この空間に強力な魔導結界が張られているのかも」


「チッ! こうなったらお前だけでもこの空間から離脱できないのか? こんな使えない指輪に頼らず、他に外に出る術はないのかよ」


「何を言ってるのよ、みんなは? あなたはどうするの?」


「いいからよく聞いてくれ! お前が離脱して救援要請するんだ! それに賭けるしかないだろ」


「・・・わかったわ、あと一度だけなら跳べるかもしれないわ」


「よし! 頼んだぞ」 ダッシャーはそう言って魔神たちの方へ向き直った。


 キューピッドが離脱のための神気功術を練り上げようとしたその時、


「ノウエー、俺がお前を逃すと思うのか!?」

アレスはそう叫ぶと、夢限空間を丸ごと覆い尽くす巨大な結界を張り巡らす。

辺り一面が黒い霧で染まってゆく。

「お前が張っていた妨害結界と違って、俺のはお前如きでは破ることは出来ぬぞ!」


 キューピッドが神気功を練り上げて転移門を開こうとしたが、僅かの差でアレスの結界に邪魔されてキャンセルされてしまう。

「何? これは・・・ものすごい重厚な結界に覆われているわ」


「おい、それってどういうことだよ、もしかして・・・」

「そうよ・・・最悪だわ・・これじゃあ離脱できない」



 一方で、同じように空間離脱を企てていたノウエーも転移陣がキャンセルされてしまう。

「まさか、私の転移陣があっさりとキャンセルされてしまうとは・・・しかし、まだ奥の手はありますが・・・」ノウエーは小声で呟いた。


「どうしたノウエー、お前が逃げることは不可能だぞ。早く、俺に攻撃して来い! 来ぬのなら俺から一撃見舞ってやろうぞーー!!」


 アレスの拳から黒い波動が放たれる。稲妻を纏った波動がノウエーを直撃!

と思われたが、ノウエーの身代わりサンタに直撃。


「この赤いサルが魔導の盾となって私の身代わりになってくれるのです。この盾には強力な魔導障壁陣が展開されているのです。貴方の自慢の腕力程度では、そう簡単に破れない代物ですよ」


「戯言を! この俺の攻撃が効かぬだと・・・」


「私の魔道力を最大にして、このサンタ(サル)の肉体で造り上げた盾です。何度攻撃しても同じですよ」


「一発耐えた程度で、かなり上から目線じゃねえかー!」


 アレスは憤怒のような邪気を漲らせる。漆黒の身体が鈍く光り出した。

 同時に、地を蹴って一気にノウエーの懐に飛び込んだ。


 アレスの左右の拳の連打がノウエーの顔面を襲う。

 しかし、ことごとくサンタの盾が拳を阻んだ。更に連打のスピードが上がり、ついに右拳が顔面を捕らえた・・・かに見えたが、またも盾となったサンタにヒット!

 それでも間髪入れずに左膝をノウエーの腹部へめり込ませるが、これもサンタが受ける形になって、そのままノウエーは後方へ退がった。


「どうです? 頑丈というより、まさに鉄壁でしょう! このサルは思った以上でした。このままだと貴方の膨大な魔導力も徐々に弱まってしまいますよ」


「フンッ、俺の力が弱まれば、この結界が解ける・・・などと思うなよ! カスらしい考えだがな」


「貴方の力量は既に把握しています。だから、こうして攻撃を防いでいれば、私は無傷で離脱できるのですよ」


「俺の力を把握できただと? ・・・お前如きが俺の全ての力を知っているだと?

随分と見くびられたものだな。まあそこまで知りたいなら教えてやろうかあ」


「まあ、ここで議論をしていても仕方ありません。どちらにせよ、この盾は貴方の全力でもヒビを入れることが出来るかどうか・・・」


「ほう、では俺の全力でその盾もろとも木っ端微塵に砕いてやろうか!」


 その時、魔導盾となったサンタの身体がピクリと動いた。


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