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第14話 不細工カラスアゲハには名前がないのか

――――夢幻空間コーツキーサイド


 人を裏切る悦楽を楽しむクズ人間である非望因子コーツキーの夢幻空間。

 サンタ達四人は、そんな裏切りに染まった空間にいた。


 この空間で非望を育てていたのは、見た目は人サイズのカラスアゲハだが、ドブネズミが十発ほど平手打ちでも喰らったかのような不細工な面構えのナイトメアメーカーである。


 その不細工なカラスアゲハが、突如サンタ達四人の前に姿を現した。


 不細工カラスアゲハの接近を察知したキューピッドが声を上げるが、ダンサーは余裕の表情で3人よりも前に出て迎撃体制をとっていた。


「てめえ! ブッサイクなツラしてるくせに、あたしの視界に入ってくるなんつーのは百万年と二十三日早えんだよ!!」


「おいおい、ダンサー、そんな挑発しちゃったらマズイだろ、あいつの怒りが倍の倍で更にドン!! ってことになったらどーすんだよ。大体、二十三日って半端な日数は何なんだよ」


 ダッシャーが小声だが焦るような口調でダンサーにツッコミを入れる。

 その会話をしっかりと聞き取った不細工なナイトメアメーカーがダッシャーに目線を合わせて口を開いた。


「この私に向かって随分と高いところから言ってくれるねえ……」


「ちょっとちょっと、俺を見ないでくださいよ。生意気言っちゃってるのは、こっちの剣を構えている奴ですよお、俺ではないんですよお・・・」


 目の前で抜刀しているダンサーを指差して、力いっぱいに力説するダッシャー。

 そのやり取りなど眼中にないと言わんばかりのダンサーは、ニヤリと笑って再び口を開く。


「・・・高いところからって、当ったり前だろうがよ! お前は不細工なんだから、容姿端麗なあたしの百段以上は下にいるんだからよ!」


 再び挑発するダンサーに少し苛立ち始める不細工カラスアゲハ。


「弱者のくせに生意気な・・・私を挑発するとは見上げたものだねえ」


「はああ?? てめえ何を言ってんだよ、余裕こきやがって!」


「ホント生意気な小娘だねえ・・・大体、お前たちは何をしにこの夢想空間へやってきたんだい? まさかとは思うが、“裏切り”と“狡猾”の最高傑作である至高のダークマターを破壊しにやってきた・・・なーんてことはないだろうねえ?」


「ああん? そうだと言ったら、なんだっつうんだよ!?」


「私が丹精込めて育て上げてきた美しい“裏切りのダークマター”に手を出すなんて、無謀なことを言うんだったら・・・」

 不細工カラスアゲハの台詞を遮ってダンサーが声を高らかにする。


「そいつを木っ端微塵にしてやろうっつってんだよお! このブサイク野郎があ!!」


「――――いいでしょう、そんなに消滅したいのなら、お前を一番に消し去ってやるわ!」


 怒り心頭の不細工カラスアゲハ。不細工なくせに負のエネルギーが黒い霧のオーラとなって全身を覆ってゆく。

 そして、不細工ではあるがアゲハ蝶の化身のようなナイトメアメーカーは、羽ばたきすることで、毒素の強い鱗粉を周囲に撒き散らした。


「私の鱗粉は猛毒。こいつを吸い込めば命はないだろうね。お前たちには苦しんでから消滅してもらおうかねぇ」


「おいおい、こんなのまともに喰らったらやべえんじゃねえのー! キューピッド、なんとかしてくれよ」

ダッシャーが助けを求める。


「今、やってるのよ、うるさいわね! あなた少しは時間稼ぎくらいしなさいよ!」


 キューピッドは、防御結界を張るための神気功を練るが、先ほどの空間転移に気を使ったことで神の気を練る力が弱まっている。


 不細工アゲハの鱗粉が辺り一面に降り注ぐ。


「クッソォー! これじゃあ迂闊に斬り込めねえじゃねえかよ!」

 ダンサーは迎撃体制を取るも、鱗粉が舞う中への突進を躊躇している。


「こうなりゃあ、俺もやってやるしかねえな」


 ダッシャーが切羽詰まったような表情で背中に背負った双剣を抜くと左右両方の剣をクロスさせた。するとダッシャーの全身が竜巻状の風に覆われてゆく。

「こいつで、どうだあーー!! ―――トルネードアターーック!!」


 ダッシャーは双剣を眼前の不細工アゲハに向かって振り下ろす。

 それと同時に全身を覆っていた風の渦が旋回しながら不細工アゲハを急襲する・・


 が、不細工アゲハは余裕を持ってそれを受け流してしまう。


「フン! そんな非力な技で私を攻撃したところでどうにもならんぞ!」


「お前への攻撃が目的じゃあないんだよ……」


「――――!!」


 ダッシャーが放ったトルネードが大気中の鱗粉を吹き飛ばしてゆく。


「へへへーっ! 俺の風の神気功で鱗粉を吹き飛ばすのが目的だったんだよ! ザマーーみろよ」


 しかし、不細工アゲハは表情ひとつ変えない。

「ほぉ〜、お前たち、随分とガキ臭いが、一応はドリーム・クラッシャー・・・という訳かね」


「だったら、どうだって言うんだよ!!」

 抜刀していたダンサーが透かさず地を蹴って、不細工アゲハの頭上に飛び込んで行く。


「斬り裂けろぉぉぉ!!」


ダンサーの閃光のような一振りーーーー


 だが、不細工アゲハは不細工なくせに斬撃をユラリと躱してしまう。


「ん! なろーー!! 」


 ダンサーの二振りめが横一閃に唸る。


 またも、ヒラリと流れるように攻撃を躱すと余裕の表情を浮かべる不細工アゲハ。

 その表情が何故か訳もなくムカつくのだが、そのムカつくような表情で口を開く。


「私はねえ、大気の揺らぎやお前たちの気の流れを瞬時に読み取ることで回避能力を桁違いに爆上げできるんだよぉ・・・どうだね、これぞ正に華麗なる蝶の舞いってやつかしらね・・・つまり、お前らのようなガキの小賢しい攻撃なんかには擦りもしないってことよぉ」


「――んだとおーー!! 一度や二度、攻撃を躱したからって調子こきゃがってえ」


 尚も挑もうとするダンサー・・・その時、


「ちょっと待てーーーい!! 貴様の相手はこの俺様だあーー!!」


 ダンサーの前面に躍り出たサンタが叫ぶ。


「ちょ・・・サンタてめえ、じゃ・・・」

「おーーい!! お前、ナイトメアメーカーのくせに超カッコイイ羽をつけてんじゃあねえかよ!」

 行く手を阻まれたダンサーが文句をたれようとするが、更にサンタが口を大きく開け放って不細工アゲハに言葉を投げかけた。


「あらら、そっちの赤い小僧は、ガキのくせに分かっているじゃあないのよ・・・感心だねえ・・・まあ、だからって、お前もそのまま生かしてはおかないわよぉ」


「黒い羽だけはカラスアゲハのようでカッコイイって思ったけど、顔はマジでホント

三千世界でも一番にブッサイクなんじゃあねえのかなーー!! オッサン、良かったなあ、何でも一番になることは良いことなんだぜー」


 サンタは挑発しているかのような言葉責めを仕掛けているが、実は天然なだけである。


「バカやろー! サンタてめえ、あたしの前に立ってんじゃあねえよ」


 サンタの天然挑発が一段落したところで、ようやくダンサーの文句がサンタを捉えた。

 が、文句をたれてる状況ではなかった。


「頭にくるクソガキどもだ!! いいだろう! 跡形も無く消し去ってやるわ!」


 不細工アゲハの怒りが頂点に達し、アゲハの全身を地獄の業火のような青白い炎が覆い尽くしてゆく。

 炎が覆い尽くして、やがてその青白い炎は大気に蒸発するように消えてく・・・と、


 その炎の中から先程までのカラスアゲハとは姿形が違う個体が現れた。


「 ――――― 」


 それを目の当たりにしたサンタたちは唖然としてしまう。


 現れたその姿形は、先ほどまでのカラスアゲハではなかった。

 変身・・・否、変態したのだろうか? その変態したナイトメアメーカーが口を開いた。


「ガキどもー! 驚いたかね!? ―――先程までの私は防御力に特化したアゲハ蝶モデルの第一形態。そして、今の私の姿は、完全攻撃力に極振りした第二形態スズメバチモデルなのだよ!」


 サンタたちの目の前に現れたのは、先程までのアゲハ蝶の姿ではなく、戦闘的なスズメバチの姿で極めて獰猛さが滲み出ているようである。


「なんか、さっきと違って怖さが半端なくねえか??」

「そうねえ、でも、あんたはさっきの姿でも怖がっていたでしょう」


 この状況でも相変わらずのダッシャーとキューピッドの会話にサンタが割り込む。

「だけどよお! あいつ、顔は不細工なまんまだぜーー!! なんかマヌケじゃね!?」


「ホントだあーー!! 何だよ、あいつカッコつけて変身なんかしちゃってるけどお、顔は変身出来ねえのかよ! むしろ、顔の方を変身させろっつうんだよなあ! しかも

『驚いたか!』とかあの不細工なドヤ顔で言われてもなあ、答えに困っちまうよなあ」

 

 ダンサーが更に追い打ちをかけて、おちょくっている。


 ナイトメアメーカーは黙って聞いてはいるものの、完全にブチ切れた様子で尻尾の毒針を逆立てた。


「こんのクソガキがあぁぁ! お前ら、もう許さんぞおぉぉぉぉ!! 」


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