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ネィガールの置き土産

 ケイとミーシャとレーナは、改めてその大きな身体を持つ上位デーモンを見上げる。

「うぅううぅうぅぅううおおぉぉおおぉぉおお」デーモンが威嚇するように唸り声をあげてケイとミーシャとレーナ、そしてアルテアを見下ろす。

 そのおぞましい姿もその卵の腐ったような異臭も変わらなかったが、なぜか俯いているように見えるのは、果たして幻想なのだろうか。

 ふっとケイとミーシャとレーナの三人は幻視をする、角の生えた小さな泣く子どもの姿を。

 だが次の瞬間「ぐうごうあぁぁあぁあああぁぁあああ!!」上位デーモンが大きく叫んだ!

「チッあの野郎!」アルテアが舌打ちをして言った。

 アルテアの視線は鋭くネィガールを睨んでいる。三人はネィガールを見て絶句した。

 ネィガールは自分の腹部にダガーナイフを刺し、あぶら汗を流しながら笑っている。そしてこう言った。

「貴方様の最後の信奉者にして貴方様の『神官』ネィガールがみずからの命を捧げて願いたてまつります。この世界に住まう者全てに、死をお与えくださいませ」

 そう言ったネィガールは「くっくっく」と小さく笑う。

 だがそう願われた上位デーモンの変化は大きなものだった。

「ぐぉぉぉおおおオオオアアア!!!」空を覆っていた暗雲は、限りなく黒雲へと変わる。泥の混じっていた雨は、上位デーモンへと吸い込まれて行くかのように逆三角すいの形で降り始める。泥は魔神の身体に張り付き見る見るうちにデーモンを黒い泥の山へ変化させる。

「アルテア、なにか手は無いのか?」そう聞くケイにアルテアはゆっくりと首を横に振ると。

「今は手を出せない、これは呪いの塊だ。今この呪いに介入すると、途轍もない呪い返しを食らうぞ」

「くそ!」ケイが珍しく汚い言葉を使うが、この分野でアルテアには逆らわない。当たり前である。魔術の分野でアルテアに逆らう位なら、一人で一国の軍隊を敵に回した方がはるかにましだ。

「!」ケイは最初立ち眩みかと思った、だが全員がゆれを感じている。この地方で地震は珍しい、しかも今、目の前には巨大な呪いの山が在る。ならば関係ない訳がない。

「あれを見て!」レーナが最初に気が付いた。泥の山の上から大木の幹のような物が二十本、

天に向かって伸びていく。いや、それだけではない。泥の山全体がかたちを変えていく。

「…まさか…これ程大きいとは…」そうミーシャが言ったそれがそのかたちになったのは、地震が治まったのとほぼ同じだった。

 この辺りで一番高い木の三倍は大きい上位デーモン…、いや最早それは上位デーモンで済まされる大きさではない。

 この世に生み出された知性を持つ者としては、この時代最大の大きさを持つソレにあえて名を付けるのなら。“天災級魔法”と呼ぶべき存在が今ここに誕生した。




さあ、ついに始まります! 本当のクライマックスが!

長かったー。でも、これがこのお話で一番書きたかった話だから!

あともう少し、ガンバルゾー!!!

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