神と魔神(アルテア論、)その2.
アルテアはデーモンを指さしてネィガールに言う。
「観ろ! あの醜悪な姿を! 嗅げ! あの汚物のような臭いを! 全てがお前のいびつでおぞましい固定観念のせいなのだぞ!!」
「…え…」ネィガールはアルテアが何を言っているのか分からない。
アルテアはまくし立てて言う「神秘はそれを観た者の心の姿で具現化する! 炎の精霊が炎で身を焼かれているのは、そうでなければおかしい。という思い込みのせいだ! 炎の精霊だけではない、水、土、風の精霊たちがそれを象徴するモノで体が出来ているのは、それを見ている知性ある者の単なる思い込みだ!」
「……黙れ……」ネィガールが低い声でつぶやく。
「精霊だけでは無い!」アルテアはネィガールの事など気にもとめずに続ける。
「神も、悪魔も、そして魔神も。“そういう姿をしていなければおかしい”と思う心でその姿を決められる! 神も、悪魔も、魔神も、そんな姿など望まずに、だ!!」
「…黙れ」ネィガールの声に力が入る。
だがアルテアはネィガールをあえて無視して話しを続ける。
「ではあのデーモンはなぜあそこまで醜悪なのか? 決まっている。ネィガールあれこそがお前の心の真の姿だからだ!!」
「黙れー!!」ついにネィガールが叫び声をあげる。
「黙れ、黙れ、黙れー!! お前にワタシの何が解かるというのかー!!」ネィガールはアルテアに跳びかかりそうな勢いで叫ぶが、アルテアはそんなネィガールをいちべつして言い放つ。
「お前の心の事など知らないし、知りたくも無いわ!!」アルテアはネィガールに、まるで道に転がっている馬糞でも見たかのような目線をおくる。そしてケイにこう言う。
「ケイ! そいつが前に戦った時より弱いと言ったな、それは当たり前だ。その魔神を召喚するために使われた“不浄の魔法陣”は使用条件が厳しい。前提として多数の信者の血と肉と魂が必要だからそれだけの信者を死なせた後も、召喚した存在をなお信じる信者が必要となる。つまり大規模な信仰組織しか出来ないんだ」
アルテアはケイに向かって頷く「だからその魔神は弱い。当たり前だが“神”の力のみなもとは信者の信仰心だ、信者の少ない“神”はどれほど潜在能力、つまりその“設定された力”が強くとんでもないものであっても。──例えば“この世を完全に破壊する程の力を持っている”と言う“設定”があっても、それを心から信じ、信奉してくれる信奉者がいなければ、その神は存在しないのと同じだ。それなのに」
アルテアはネィガールを指差し「その貴重な信奉者をほぼ全て殺すとは何たる愚かさか! 今は“不浄の魔法陣”の力で何とか姿を保っているが、その力を使い尽くせばその魔神は二度と地上には現れない。一人で魔神を現世に留めさせる程の力をこの男は持っていないのだから当たり前だ!」アルテアはそう言って、ケイ達への授業を終わらせた。
えー、この物語はフィクションであり……、って当ったり前じゃあ!!




