神と魔神(アルテア論、)その1.
上位デーモンは四つある拳を握りしめて怒りに震えていた。二十本もある自分の触手がたった一人にすべて切り落とされてしまったからだ。
「ぐうぅぅううぉおおぉぉおおおお…」
頭の何処にあるのか解からない発声器官を震わせて、デーモンは呻き声をあげる。
「何て言っているか分からねぇよお前」
ケイは苦笑を浮かべそう言って上位デーモンを挑発する。
「ぐおおぉぉおおがぁあああぁぁああぁぁあああ!」
炭化した触手をみずからの手でむしり取ると、デーモンは叫んで触手を再生させようと体に力を籠める、すると口(?)の周りから聞くだけで吐き気を催す生理的に嫌な音を立てて、二十本の触手がデーモンの腹の上を撫でる様に地面に伸びて行く。
二十本の触手を再生させると、あきらかに体力を消耗したのか、肩(?)を上下に動かして息を整えようとしていた。
ケイは首を傾げて「お前数ヶ月前に俺が倒した奴だろ? あの時よりもあきらかに弱くなっていないか?」そう不思議そうにしゃべる。
「ああ、それはね」とアルテアが何かをしゃべろうとすると。
「…………………」ケイがあからさまに嫌そうな顔をする。
アルテアは苦笑を浮かべて「今はお前を茶化すつもりは無いよ」そう言って喋り出す。
「ケイ坊やお前は神秘について知らな過ぎる。だから今から短い授業を行います。お前デーモンについてどれだけ知っている?」
ケイはちょっとアルテアを見て、軽く息をついて喋りだす。
「確か、神々の真の敵で神と精霊の中間的な存在で、基本的にはあまり触れて良いモノではない存在…。かな」
「四十点くらいだな。良いか心して聞け。基本、神とデーモンは同じ存在だ。以上」アルテアはバッサリと言う。
「そ、それは余りにも危険な意見では在りませんか? 師匠様」レーナがそう意見する。
「その通りだ、レーナ。こんな事を異端審問官の前で言ったら吊るし首間違いなしだ。だがな、調べれば、調べる程。神と魔神の違いが解からなくなるんだ」
アルテアは早口で喋りだす「一般的な神が善なのか? なら一般的な水の神が起こす水害は善の行ないなのか? 太陽の神の起こす日照りで起きる飢饉は何なのだ? 異端審問官達はあれを“神々の試練”で片付けようとするが、それで死んで行った者たちはたまったものではない!」ふざけるな! とアルテアはつぶやく。
ケイと、ミーシャとレーナは言葉が出ない。それを見ていたネィガールが笑いながら。
「なんだ、あんたも結局ワタシの同類か?」と言うと、アルテアは瞳に怒りをこめて。
「ふざけるな! お前ごときと一緒にするな!」と怒鳴った。
44話です。まーた始めちゃいました。
最後までお付き合いください。




