シリアス・バスター
ケイはロングソードを構える。その素材は青銅製だったが魔法のかかっていない普通のロングソードだった。それをケイは両手で構える、ケイの身長ではロングソードは長すぎたのだ。
だがロングソードを構えた瞬間その場の空気が変わる。キンと張りつめた世界、そう呼んでもいい緊張感。普通の人間でも解かる死の感覚。決して普通の少年が出して良い物ではない。
それを出せるのは何年も人、もしくはそれ以上に危険な何かを殺して、殺して、殺しまくった者だけだった。
「───ってナナに言ってやったら顔を真っ赤にして涙をポロポロ流し出して。いやぁ若いっていいよねー」そうアルテアが言うと、二人はどよめく。
「ええ? そんなに焚気つけたのですか? お師匠様―!」と、レーナが慌てる。
「ナナちゃんとケイ様は幼なじみのうえに、今も同じ職場で働いているんですよ? 私達ピンチじゃないですかー!」ミーシャは大声でアルテアに詰め寄るも、アルテアは。
「あなた達は恋愛のプロ、まあその割には失恋しか経験が無いようだけど…、言い寄って来られたりや、言い寄った回数だけなら断トツに多い。対してナナはケイ坊や一筋、他の男には職場関係でも一切浮いた話も無い。そのケイ坊やともプライベートでは恋の話しなんて一切ないのに、ふと気が付けばケイ坊やを目で追っている自分に頬を赤らめる。そんなナナのすがたを見たらはっぱの一つも掛けてやりたくなるじゃないか」と、澄まして言う。
「だから私達心配しているのです。私達はどちらが正妻に選ばれても良い、その代わりどちらかは愛人にして。と言う話しで行こうって決めているのですよ?」レーナが青い顔をして言う。
ミーシャは頷きながら話を続ける「でもナナちゃんとはそういう事を話し合ってもいないんですよ? ナナちゃんがそういう子だと愛人関係の話しなんて受け入れてくれるかも怪しい」
「…あなた達の愛は重いなぁ…」アルテアは少し引いた気持ちで聞いている。
「クックック大変そうだな、カインゼル」
「…うるさい…」ケイは頭を一回振るうとロングソードを中段に構え、デーモンとネィガールに集中する。中段の構えは剣を武器に選んだ者が最初に教え込まれる初歩の構えである。その為にある程度剣を使えるようになった者が自分独自の構えを考える時に、最初に捨てようとする構えの筆頭に上がる。
だが中段の構えの柔軟さ、攻撃にも防御にもすぐに変えられる応用力の高さから、捨てられない構えでもある。事実ケイも何度も中段の構えを超える構えを模索した、だが結局最後の答えは“中段の構えは越えられない”だった。だから今のケイは“中段の構えを極めてやる”と思うようにさえなっていた。
「───って思っているわけだ、今のあの坊やは」アルテアはそう言うと。
「「まぁー……」」とミーシャとレーナは感心するような、呆れるような声をあげる。
「クックック大変なんだな、カインゼル」ネィガールは心からそう言う。
「アルテア、後で話しがあるからそこを動くな!」ケイは殺気をこめてそう言った。
42話投稿します。




