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狙うは…。

「ひゃっははは! 何と力強いお姿か! 何と素晴らしいお力か! ああ、神よ、どうかこのワタシ忠実なる貴方様の『神官』ネィガールにその力の一部をお貸しください!!」

 ミーシャとレーナは震えた、あんな男にあの魔神の力を例え一部でも貸し与えられたら、どんな事に使われるかを想像したからだ。それだけは何としても防がなければ。

「あんた、ネィガールって言ったかしら、そんな事カインゼルが許すと思っているの?」ミーシャが咄嗟にそう言った。

 それを聞いたレーナが足を震わせて立ち上がり、精一杯の力を込めてこう言った「貴方本当に何にも知らないの? この国に何人のカインゼルがいるのかを!」

「本当、知らないって言うのは幸せよねー」ミーシャが更にレーナの話しを補強するようにそう言った。

「カインゼル…、何人いるかだと?」ネィガールがそう言ってくる、興味が湧いたようだ。

「そうカインゼルって言うのはねぇ、複数人いるのよ。貴方も不思議に思わない? カインゼルが倒した魔物の数々。少なくても、ジャイアントに、ヒドラ、そしてデーモン! 一人で倒せると思う?」レーナはわざとらしく指を三本立てて見せる。

「私達も最初は騙されたわ、でもねぇカインゼルが最初から何人もいるって聞かされて納得したわ。そうカインゼルは最初から集団で戦っていたのよ!」ミーシャはそう断言して見せた。

 嘘はついていない、だから【真実の口】系統のいわゆる“噓を見破る魔法”は意味をなさない。

「…噓はついていない、か」ネィガールがそうつぶやく。腐っても『神官』やはりその手の魔法は得意とみえる。──だが。

「ありがとう、女達これでワタシの復讐相手は、カインゼル共で決まりだ!」くっくっくっと暗い笑いを浮かべるネィガール。

「もっとも、ワタシの最初に殺す相手はガキのカインゼルだがなぁ!」ハハハ、と誰よりも娘の仇の顔をよく知っている男は言い放つ。

「「それだけはさせない」」ミーシャとレーナは声をそろえてそう言った。実のところ二人は他のカインゼル達ともすでに会話を交わしていた。自分こそ、本当のカインゼル。

 ──と言う男も二人いた。だがケイよりも強そうなカインゼルはいなかった、ならば何故そんな面倒くさい事をしなければならないのか考えた。答えは“カインゼルは複数人いる、だから怖がらなくていい”と特定の人々(おそらく王や貴族達)に思わせたい、そういう事なのだろうと二人は考えた。

 当たり前だった一人でジャイアントと、ヒドラと、デーモンを倒せる程の男なら、王を殺すなど簡単すぎる。だが本当は何人ものカインゼルと名乗る者達が徒党を組んで狩っているのなら、他の国への抑止力に使える。──そう思わせる事でケイは自分の命を守っている。

 頭の良いやり方だ、カインゼルの名を国に使わせて置けばやがてはカインゼル無しでは国が守れなくなっている。そうなればケイは暗殺も出来ない。とても良く考えて出来た話だった。


   


緊急に、40~42話を投稿したいと思います。

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