ミーシャとレーナ、その1.
古い国にはその国の独特の習慣というものがあるモノで、特に古くからある隣国同士ともなると時には、なぜそのようなことをするのか、両国とも思い出すことさえも出来ない風習というものがあるモノである。
ファルゴス王国とランダス王国の、国境の中間にある門を挟んで二人の兵士がたがいを睨み合っていた。
太陽はこの時期、正午に門の真上に来る、門の両側、丁度同じ距離に大きなドラが道の真ん中に運ばれてくる。
二人の兵士はその時を待っている、ファルゴス国兵士は赤を基調とした、対してランダス国の兵士は緑を基調とした、色以外は全く同じ軍服を着ていた。
正午、両国のドラが同時に鳴らされる、それを合図に二人の兵士は、丁度一秒かけて敬礼をし、五秒間その姿勢を維持し、また丁度一秒かけて手を下すと、クルリと同じタイミングで回れ右をすると、全く同じ歩数で自国のドラの前まで帰っていく。
ドラの前まで歩くと彼の上官が大きくうなずく、彼は緊張を解くと、『ああ、俺はこの大役を全うした』という顔で兵士の詰め所へと帰っていく。
二国の間で正午と午前零時に行なわれる『衛兵交代の儀式』であった。
ファルゴス王国とランダス王国の午後の交易が再開される、といっても似たような国同士、それ程変わったものなど流通するわけでもなく、同じような物品を乗せた荷馬車の他には人の出入りがあるくらいだ、何せ、宗教から言語、文字、果ては貨幣さえ全く同じモノが使われているのだから。
「なら合併してしまえ」という意見も三百年まえからあるにはあったが、何だかんだ今に至っている、合併しないことで、誰かが儲けているのだろう、そんなこの二国のことを、周りの国々は『双子国』と呼んでいる。
そんなランダス王国から、ファルゴス王国へ二人の女組が渡っていく、一人は灰色のローブのフードを被って顔はわからないが、一人はとても目を引いた、何せ、その癖のあるブロンドの髪は腰の辺りまで伸び、露出の多い服は、肩から先は白い腕を隠すものは何も着けていない。
腰からひざまではスカートが隠していたが、そのスカートも、両端に入ったかなりの切れ込みのためにむしろ煽情的だった。
そしてその顔も、それは美しい物なのだが、今は涙と鼻水で魅力は半分以下だった。
「もー、いつまで泣いている気、ミーシャ」
ローブを着こんだ女がミーシャと呼んだ女性は、鼻をすすると「だってレーナ、あいつ二股をかけていたのよー」
と、ローブを着こんだ女性をレーナと呼んで、ワーっと泣き出す。
4話目にして、メインヒロイン達の登場です! …まあ読んでの様な何ともサマにならない2人だけれど、これからの二人の行動を読んで楽しんでください。
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