とんでもない場所の中心で、愛を叫ぶ女達。
「……愛…だと?」本気か、この女達。とネィガールが思ったのも無理は無かった。いま二人が立っている場所と二人のその思いとの余りの場違いさに、色々な物を使って来たネィガールの脳でも空恐ろしい物を感じていた。
何故なら頬を染め、悦に入っている二人の場所の前には。数十人の死体とその場所から流れ出た血と、この嵐の横なぐりの雨のせいで赤茶色の汚い泥の池が出来ていたからだ。
だからネィガールはこう聞き返したのも仕方がなかった「貴様ら正気か?」と。
もちろん二人は激昂した「「失礼な! 私達は本気だ!!」」
ミーシャが大声で叫ぶ「こんな事遊びで出来るか!」ミーシャの服は半分以上朱に染まっていた。
レーナが地面を蹴る「この感情に嘘偽りは無いわ!」蹴った拍子に泥がレーナの着ているローブを更に汚すが、今さらだった。
二人は泥の池の前でこう宣言する「「この尊い感情の為なら私は何だってして見せる」」
ネィガールは一気に老け込んだ顔をしてもう一度聞き返す「…貴様ら正気か…」と。
ミーシャは唇を尖らせてこう言う「しつこいなぁこのおっちゃん、私はねぇあの人が足を舐めたら一晩一緒にいてやる。と言うなら舐める覚悟があるわ」
「!!」ネィガールは絶句し、レーナは鋭い視線を相棒に向けてこう言い放つ。
「わ、私だってあの方が一夜の逢瀬時に自分のお尻にキスをしろ、と言うのなら喜びの涙を流してキス出来るわ!」
ネィガールの驚きは計り知れない物だった。どちらも美女それもとても美しいが、複数の男を侍らせるタイプの(ここ重要!)女王様気質に見えた。そんな美女が。
男の足を舐める? 尻にキスをする? どんなご褒美だ!
「レーナ、出来もしない事を言うものじゃあ無いわ」
「ミーシャ、その言葉そっくりお返しするわよ」
ミーシャとレーナは互いに笑みを返す。ちょっと冷や汗をかいていたが。──忘れている人もいるだろうが、この二人、生娘である。
「……でも、正妻を決めるのはあの人なのよね……」途端にうなだれるミーシャ。
「…そうだった…」レーナも力を落とす。だが次の瞬間には両手を握りしめてこう言った。
「で、でも私、ミーシャが正妻に選ばれたっていい。あ、愛人の座さえくれれば!」
「そ、それは私の方こそお願いしたいわ!」ミーシャは慌ててそう言う。そして笑って言う。
「考えてみたらあの人と出会って、まだ一週間経ってないのよね」
レーナも笑い「私達何を焦って……、焦る理由が在るじゃない!!」
ミーシャも顔を引き締めて「そうよ! 焦らないと大変じゃない! このままじゃあ!」
「「カインゼルが死んじゃう!!」」
「………何だって?」ネィガールがニタリと笑う。
間違ってはいないな、何て処で愛を叫ぶのか!
あの、ネィガールが思わず突っ込みを入れるのだから!
相当凄まじい惨状なんだろうね。




