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二人の戦い

 ミーシャが最前線にいる十人へと突撃する。

 レーナの支援魔法のおかげで疲れは消えている。それどころか信じられないほどのスピードで移動している、そして周りの戦士達が異様にゆっくりと動いているように感じる。ミーシャはこれから無残に死んでいく戦士達に涙腺が緩む、だが手加減はしない。ケイとの約束を心が覚えているから。

 この戦いが終わったら三人で話し合いをする。レーナには悪いが今回の男は譲る気はない。こんな死闘は初めてだ、こんなにもポカポカと胸が温かい。だからあなた達にこれ以上好き勝手な殺しはさせない。あなた達はここで死んでもらう、一人残らず!

 ミーシャが最初の戦士を粉砕する、まだ痙攣している戦士をミーシャが蹴る。その距離およそ六メール(約六メートル)後ろにいた戦士三人が大体百キ・ラム(約百キログラム)以上ある肉の塊を叩きつけられて大けがをする。戦える戦士は残り六人、その内三人が大剣を振り下ろそうとしていた。

 だが、レーナの魔法で感覚が鋭くなったミーシャにはまるで遅かった。一人目の戦士の右膝をメイスで粉砕するとその手で左側頭部を思いっきり叩いた。これで残り二人。

 二人目と三人目の戦士の大剣がミーシャに迫る、だがミーシャは足で地面を蹴るとその死地からあっさりと抜け出す。地面を震えさせる程の衝撃が二回つづくが当たらなかったら意味が無い。ミーシャは地面に刺さった大剣を抜こうとしている戦士二人を潰す。

 三秒もかからず残りの戦士の数は三人になった、普通なら逃げ出す事を考える所だったが生憎にも、そんな思考が出来るほど正気では無かった。だから彼らに出来るのは大剣を振り上げる事と、ミーシャに粉砕されるのを待つだけだった。

 ミーシャの戦いを見てレーナは思う(ミーシャだけは敵に回したくない)と、だが今回だけは言い争いになるだろう。出来るだけおんびんに済ませたかったがこっちも今回は引く気など無い。だって三人の未来のかかった事だから。

 すでに準備は終わっている、後はミーシャを巻き込まないように放つだけ。レーナの呪文はいわゆる“戦術級魔法”と言われる物だった。攻撃範囲は広くそれでいて威力は加減出来る使い勝手の良い魔法だった。

(ここ!)レーナはそう思い最後の呪文を唱えた、そこはミーシャからはある程度離れていて、敵戦士が比較的に見て多く、そしてあの魔神信奉者の『神官』から離れているという絶好の目標だった。別に『神官』を巻き込まない、巻き込ませないためにそこを選んだわけではない。

 腐っていても『神官』は魔術師の中で高位の職業。特に対魔法戦では相手の魔法を打ち消す“神の加護”が魔術師にとっては脅威だ。そんな奴に魔法を放つなんてバカのすることだった。

 レーナの放った呪文は“炎の竜巻”と言う魔法だった。効果はそのものズバリ燃え上がる竜巻を数秒間操る。と言うものだった、この魔法で相手の戦士三十人を焼き殺した。

 最早勝負は着いたように見える、だが何故かネィガールは笑みを崩さなかった。




何とか間に合ったー。32話、です。

のこり21話! さあどうなるのか?

そしてケイの出番も2人に食われてしまうのか?

…ま、そんなわけないけれどね。


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