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カルーン男爵領内戦争

 気を失ったケイを大木の陰に横たえるミーシャ。

「待っていてね、すぐに帰って来るから」そう言ってケイの右ほおにキスをするミーシャ。

「ほらレーナも」と、ミーシャはレーナを手招きする。

「う、うん…」レーナは顔を真っ赤にして、ケイの左ほおにキスをすると、こう言った。

「帰ってから色々お話しましょう、そう、本当に色々と」

 二人は名残り惜しそうにしばらくケイの顔を見た後、手をつないでこの場を離れた。その顔には悲壮感など無い。

 だってこの戦いの後には三人で未来の話しをするのだから、暗い顔など出来はしない。やっと見つけた二人の理想の男性、その未来を賭けた話し合いをバッドエンドで終わらせてなんて誰がさせるものですか!

 空を走る雲が厚くなってくる、しばらくすると雨が降り始める。そんな中に異臭がただよいはじめる、何かが焼ける臭いだ。

 ミーシャとレーナは顔を合わせうなずき合うと足を早める。

 木々の間を抜けて緩やかな丘に道は続いている、臭いの源は丘の向こう、流れる雲が朱色に染まっていた。

 丘をのぼりきったところで二人は息を飲む。鉱山が盛んだと聞いてはいたが、その鉱山の中が村になっているとは思わなかった。巨大な崖に大きな門、その崖のいたるところに明かり取り用の窓があり、無数の金属製の煙突が崖を這うように天へと延びている。

 そして今もカルーン男爵領民とデモニスト達の戦いは続いている。当たり前だった、こんなに守り易く攻撃しづらい村はそうそう無い。

それでも領民とデモニスト達の戦力差は一対三を超えている、いくらデモニスト達が寄せ集めでも、アルコールと依存性の高い物で指揮戦闘など出来なくても、いつかはデモニスト側が勝つ。集団戦とは言ってしまえばただの算数でしかない。どちらかに余程の軍師か、司令官が付かないかぎり、あるいは戦略的に高い何か(たった一人で十人以上を殺せる馬鹿げた戦士や魔術師、何か特別な武器、あるいは強力なモンスターなど)で盤面をおもいっきりひっくり返す事でもしない限り、攻撃側は守る側の三倍の兵力が必要。言い換えると守る側の三倍以上の戦士を集めたデモニスト側が勝つように世の中は出来ているのである。

そこへやって来た一人の美女、カルーン男爵領での蹂躙などより魅力的な女性。一見するとチャイナドレスにも見えるワンピースから覗き見える手足、ミーシャが単身でやって来たのだ。

女だ。大男達の興味がミーシャに向く。女だ。戦闘欲が性欲に変わる。女だ。この女を抱きたいという欲求が、戦線を混乱させる。

三人のデモニスト達がミーシャに向かうが、ミーシャの持っているメイスで粉砕される。

たった一人で十人以上を殺せる『魔闘士』ミーシャ・レインの戦いが始まった。







さて、主人公であるケイをほとんどくっている2人の戦いが始まります、が、次の話しはナナのものです。

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