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過去・(ナナ)

「大丈夫、俺はカインゼルだぜ。ジャイアント・スレイヤーでヒドラ・スレイヤーで、そしてデーモン・スレイヤーだ。簡単には死なない、約束する、必ず生きて帰って来るって」

ケイの親指が二人の頬を優しく拭う、ミーシャとレーナの二人はその手を両手でつかむとこう聞いて来る「「…本当に?」」

 ケイはニカッと笑うと「ああ、年上のいう事だ、信じろ!」

「「え…」」ミーシャとレーナが小さな驚きの声を発した。 

 ケイは軽く笑みを作り「俺はこう見えて生まれてもう三十年以上生きているんだよ。レーナの角のように分かりやすくはないけど、俺も“変異体”なんだぜ」

 ケイはそう言って立ち上がると馬が走って来た方向へ歩き始める、気が付くと右横にミーシャがピタリと付き、後ろからレーナがケイの肩に右手をおく。

 ケイが何かを言う前にミーシャはこう言って来た「ケイごめんね」【気絶】レーナは静かに呪文を唱える。

 

 冒険者ギルドの受付嬢、ナナはケイとの出会いを思い出す。当時八歳だったナナが、母親の勤めている冒険者ギルドへ、忘れ物を届けに来た時に偶然出会った年上の男の子。

 それが出会いだった、自分より年上ではあったが、まだまだ子供なのに他の大人と一緒に働く。ある意味その辺の大人よりもおとなっぽい子供、ギルドの職員でさえ次に行う事を聞きに来るぐらい仕事の出来る子。

 今思えば少しおかしいと思えるが、当時は(すごい子だなぁ)と感心するしか無かった。

「俺はケイ、君の名前は?」

「…ナナ」

 それがナナの初恋で、そして初恋の終わりだった。

 一年、二年、三年と一緒にいれば解かる。ケイの体の成長は自分と比べて明らかに遅いことに。十六歳になって冒険者ギルドの受付嬢になったナナ、気が付けばケイさんをケイ君と普通に呼んでいた自分に驚いた。

 そういう一般人とは違う体の特徴を持つ人はギルド内にも何人かいる。角を持つ人、動物の耳や尻尾を持つ人、大きな鳥の翼を持つ人だっている。

 でもケイ君のような“変異体”には会ったことがない、いや違う、ケイ君のように一般人とは違う成長速度で生きている人達は、なるべく人と関わりを持たない。ひっそりと生きてどこかへ行ってしまう。

 昔珍しくお酒を飲んでいた母が言っていた話を思い出す。

「誰もがケイ君を好きになる、そしてケイ君を含めて誰も幸せになれない」

 だから思った「ああ、だから母は父さんと結婚したのか」と。 




3人目のヒロインがこのナナさんです。解かってましたと言う人は何人いますか?

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