アサシン
翌日、空は雲で覆われ強い横風が吹いている。
「今日中にカルーン男爵家につかないと、嵐になりそうだ」そう言ってケイ少年は薄い毛布を丸めると、背負い袋の上に縛る。
「野宿には慣れたつもりだったけど、連日となると疲れが取れない…」レーナが珍しく愚痴る。
ふとケイ少年はミーシャの方を見るとミーシャはカルーン男爵家へと続く道の先を見ている、その手には愛用のメイスが握られている。途端にケイ少年の顔が険しくなってロングソードに手を掛ける。
「待って、近づいて来る馬は一頭だけよ」レーナがいち早く気づいて二人に注意する。
ミーシャとケイ少年は警戒心を少し下げたが、油断せずに周りの様子を見る。確かに近づいて来ているのは一頭の馬だけだった。それも。
「おーい!」カルーン男爵の使いとして来たあの中年男性だった、だがその姿はあの時とは違う。首から下を鉄製のチェインメイルホーバークで覆っていたが、数か所が、おそらく戦いで裂けており、血がにじんでいた。右手に持っている剣も半ばで折れ、武器としてはもう使えないだろう。
「おおーい!」そんな中年男性を乗せてここまで走ってきた馬も傷だらけで、脚がふらついていた。
「大変だー!」早くこちらに着きたいのか中年男性は馬の横腹を拍車で蹴るも、ついに馬は脚を止めてしまう。
「ええい、もう少しで着くんだガンバレ!」ここまで来たら自分の足で歩いた方が早いのだが、それに気付かない中年男性。ミーシャ、レーナ、ケイ少年は走って中年男性のもとへむかう。
「どうしたのですか?」レーナが中年男性に聴くと。
「あああ、た、大変なんです。カルーン男爵家がデモニスト達に襲撃され、カルーン男爵とその私兵が討ち死にしました!」中年男性は馬から降りると膝をついてそう言った。
三人は顔を合わせる。レーナが言う「どうしようか…」と。
ケイ少年は言う「一度受けた依頼は死んでもやり終える、それが冒険者だ」
「…でもカルーン男爵が死んだ今、依頼を終わらせても誰も依頼料を払ってくれないわよ?」
と、ミーシャが言うとケイ少年はにやり、と笑い。
「そういう不測の事態を考慮して、冒険者ギルドはうまれたんだ。依頼者が依頼料を払えない場合は、冒険者ギルドが依頼料を払うって事さ」
それを聞いてミーシャとレーナはなるほどと、うなずく。
「いやぁ流石です、流石にカインゼルを名乗るお方はちがう。…ですが、それでは我々が困るのですよ」
そう言うと中年男性は一番近くにいたレーナをナイフで刺そうとする。
「危ない!」とっさにケイ少年はレーナを庇い脇腹にナイフが刺さる。
ダークな話はもういい、とおっしゃる気持ちはわかりますが、もーちょっと続くんです。
ごめんね。




