三文芝居と熱い視線。
「ミーシャさん年下が好み何ですよね?」
ナナは静かに声をかける。「だが、あなたのお化粧はなっていない。ただ色の付いたモノを顔に塗りたくっているのと変わりない!」
「嫌、それ以上聞きたくない!」
「いいえ聞きなさい。あなたは美しい!」
「…え…」ミーシャは耳を塞ごうとしていた手を止める。
「顔は良いのです、そうでなければ見ていられない」ナナはミーシャの両肩に優しく手を乗せる。
「私が教えてあげます、本当のお化粧の仕方を」ミーシャはナナの手を取り。
「…師匠…」とつぶやいた。ケイ少年はうんうんと頷く。
一方、壁の方では「私が好きなのは年上。でもケイ君は年下……」フードを被るのも忘れて一人でつぶやくレーナが居た。
この四人の三文芝居にもならないやり取りを中年男性は、ただ茫然と見ていた。
翌日、珍しく遅刻ギリギリでギルドへと来たナナは上司から怒られるも、なぜか満足そうだった。
ケイ少年はナナに聞く「どうしたの?」
するとナナは意味深な笑みを浮かべて「すぐに分かりますよ」そう答える。
確かにそれはすぐに分かった。朝食時、ギルド内でどよめきが起こった。
ミーシャとレーナが昨日とは別人のようになって、入って来たのだ。
ミーシャの服は昨日のままだが。ケイ曰く“ケバイ”顔ではなかった、口紅やファウンデーションは薄く、それでいて明るい雰囲気に整えられていた。それだけでこれ程変わるのかと思える程若々しく見えた。いや、元々若いのだ。
だが、どよめきの原因はそっちではない。レーナがフードを取っていたことだ。それだけでもすごい事なのだが、長いストレートのツヤのある黒髪はブラシでとかされて、まとめられているだけ。化粧もナチュラルなモノなのにここまで美しいとは、誰が予想出来るだろうか。
ナナは「どちらも元が良いので、あまりいじれませんでしたが、イヤーいい仕事が出来ました」と、そう言うが。
ケイ少年は、かじりかけだったソーセージを皿に戻すと、一言いう。
「…ナナさん…、やり過ぎ……」
などとナナと話すケイ少年だったが、ミーシャとレーナの二人から贈られる視線に、昨日までは無かった何か熱いものがほんの少し含まれている事に気が付くのは、まだ少し時間が必要だった。
そして、その熱い視線で見ている人物がもう一人いる事にも…。
完全なコメディー回です! これでラブコメが入ったぞ!
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