カインゼル、その1.
静まりかえる冒険者ギルド、そこにやや大きな声で「そうだ!」とナナは言う。
「ミーシャさんレーナさん、今回だけでいいですから、ケイ君とパーティーを組んでもらえませんか?」ケイ少年とミーシャとレーナにナナは提案する。
なるほどと、ミーシャとレーナは頷き合い「…そういう事なら、こっちにも文句はない…」と腰をさすりながら中年男性は言う。
「よかったですね、ケイ君」と明るい笑顔でナナはケイ少年を見る。
「……」一人納得していなかったが、多数の賛成をケイ少年だけでは覆すのは難しく、下手に反対すると仕事を逃しそうなので、ケイ少年は黙っていた。
レーナは中年男性に「それで、仕事の内容は?」と聞くも中年男性は「…ここでは、ちょっと話すのは…」と言葉を濁す。
「では、お話は個室で」ナナはそう言い中年男性を案内する。ミーシャとレーナはケイ少年に近づき、ミーシャは右手を、レーナは左手をにぎる。
「あ、」とケイ少年は何かを言おうとするが、ミーシャはほほえみ、レーナは優しく手をひくとケイ少年は黙ってついていく。
ナナは大きな両扉のノブを引く、中には豪華な椅子とテーブル、天井にはシャンデリアまである。豪華な甲冑に壁には魔獣の首のはく製まで飾られてある。
接客用の個室はそのギルドの力を見せるためにある。どれ程の力がそのギルドにあるか、このギルドに任せて大丈夫かを、客に知らしめるためにあるといってもいい。
テーブルを挟んでケイ少年は長椅子の真ん中に座ると、ミーシャとレーナはケイ少年の左右に座る。中年男性は対面の豪華な一人用の椅子に腰かける。ナナは当然のようにケイ少年の後ろに立つ。
中年男性からは、女性三人に少年が囲まれているように見え、中年男性は何か言いたげではあるが、今回の依頼を受けるのが誰かを暗に示しているのが見て取れるので口には出さない。
まあいい、と中年男性は思う。その余裕も依頼内容を聞けば変わると踏んでいたからだ。だから中年男性は素直に爆弾を落とすことにした。
「カルーン男爵の命でこのギルドで一番腕の立つ冒険者をよこして欲しい。カルーン男爵領で、デモニストが暴れているのです」
ミーシャとレーナの顔色が変わる。だが、ケイ少年は冷静に受け止めてこう言った。
「なるほど、では何故カインゼルを指名しなかったんだい?」
ナナは言う「カインゼルに最近の依頼はありません、むしろ暇なぐらいですから、ご指名にはすぐにでもお受けいたします」
中年男性はテーブルを叩いて立つと「ではあのカインゼルは偽物だったというのか?!」と怒鳴る。
ナナは「そのカインゼルの特徴を教えてもらえませんか」と中年男性に質問する。
12話でした。この謎解きは次回に。
ブックマーク、感想等々お待ちしております。
わりと本気で。