キレてる女とあわてる少年。
翌日、二人は冒険者ギルドへ顔を出す。昨晩の大喧嘩で宿屋に結構な被害を出してしまい、その弁償金を払わなければならなくなったのだ。…流石に壁に大穴をあけてしまったのは、やり過ぎだ。そのほかにもカインゼルの所在確認などをギルドから始めるのも勿論ある。
「だめだ!」と中年男性の大声がギルド内に響く。
「どうしてさ!」というケイ少年の声が後に続く。
「お前じゃあ若すぎる、こっちだって金を払うんだ! ちゃんと出来るやつに依頼したい!」中年男性はそう言ってケイ少年を改めて見て、フン! と鼻を鳴らす。
「俺、これでもあんたの依頼には一番あっているんだぜ?」ケイ少年はそう言い、中年男性を見上げる。
「確かにケイ君ではあなた様のご依頼には、若すぎるかもしれませんが。こちらとしても依頼内容を確認したうえでケイ君を推薦したいと思います」とナナは中年男性にケイ少年を押す。
「こんな小さいのにかね?」中年男性はナナに、率直な疑問を投げかける。
ナナはそっと視線を逸らし「まあ、小さいのは否定しませんが」
「ナナさん、喧嘩売ってる?」と、ケイ少年。
ミーシャとレーナは、玄関から中をうかがって三人のやり取りを見る。レーナはミーシャに向かって「助けないの?」と聞く、するとミーシャはウーンと唸り。
「もう少ししてからの方が、感謝してもらえるような気がして待っているんだけどなー」と結構、外道のようなことを言うミーシャ。
「ええい、うるさい!」と中年男性はケイ少年を怒鳴りつけ「その若さで一人前なことを言うな、親は何している」
「親は墓の下だよ!」
「あ」とレーナは何かが切れる音を幻聴する。が、すでにミーシャは中年男性の前におり、殴り飛ばしていた後だった。
「アーァ」レーナはため息混じりでギルドの中へ入るが、切れたミーシャは中年男性の襟首をつかみ、もう一撃を繰り出そうとする。
「待ってくれミーシャさん」ケイ少年はそう言いミーシャの拳を両手でつかむ。
「はなして、ケイ…」低い声でつぶやくミーシャ。
「俺のことで怒ってくれるのはうれしいけど、ギルド内での殺人は重罪だから!」
「…なら、半殺し…」
「そういう事じゃあなくて!」
そんなやり取りの中、静かにミーシャへと近づいたレーナはミーシャの耳元で。
「それ以上やると、ケイ君に嫌われるぞ」とささやく。
中年男性の襟首をつかんでいた左手がパッと開かれ、ドスンと中年男性は床に腰を打つ。
ケイ少年は安堵のため息をついた。
11話でした。いやー、まだ11話と言うべきか、もう11話と言うべきか悩みますねー。
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